いわての沿岸漁業


はじめに

岩手県における平成13年の漁業生産量は、沿岸漁業で82,789トン、沖合遠洋漁業で43,181トン、海面養殖業で64,710トン、合計190,680トンを生産しており、養殖を含めた沿岸漁業の生産量は、約77%を占めています。
県では、新水産業基本計画をたて、平成22年を目標に276,500トンの漁業生産量を目指しています。そのうち沿岸漁業は145,360トン、沖合遠洋漁業は54,400トンを目標にしています。
この目標を達成するために、さけ・ます類を人工的にふ化させて自然の河川や海に放流し、自然界の生産力を利用して資源の増大を図ることや、あわび・うに・ひらめ等の放流や漁場管理を行いながら資源の増大を図ったり、各種の人工魚礁をつくったり、また、大規模な増殖上や養殖場を各地に設け、増殖・養殖事業に関係する各種の事業を実施し、沿岸漁業を振興するため努力しています。

養殖業の年間操業サイクル模式図

解説

  • わかめ
    • 採苗:わかめの成実葉(めかぶ)からわかめの種を出させて糸に付けること。
    • 海中培養:採苗を終了した採苗器を海中につりさげ、わかめの種を育てること。
    • 本養成:種苗を養殖施設に巻きつけて養殖すること。
  • こんぶ
    • 室内培養:陸上の種苗培養施設を使用して行う方法で採苗を終了した採苗器を水槽などで培養すること。
    • 沖出し:室内で培養した採苗器を海中に移すこと。
  • ほたて稚貝
    • 浮遊幼生調査:ほたての浮遊幼生の出現状況を調査し、採苗器の設置時期をつかむために行う調査のこと。
    • 分散:採苗器から稚貝をとり、ネットに収容すること。
  • ほたてがい
    • 種苗搬入:殻長3cm以上に成長した稚貝、又は5~6cm以上に成長した半成貝を購入し、養殖場に運びこむこと。
    • 仮養成:搬入した稚貝を本養成まで仮に養成しておくこと。
    • 本養成:養殖施設に耳づり、又はネットにいれて垂下養殖し、出荷できるまで養成すること。
  • かき
    • 床あげ:購入した種苗を搬入後、成長の抑制を図り、抵抗力を強めるため、浅瀬に一時期置くこと。
    • 本養成分散:床あげを行った稚貝を養殖施設の垂下縄に約30cm間隔にはさみこんで養成すること。

わかめ

わかめの一生

わかめの一生は1年です。それを巧みに利用したのが養殖わかめです。

岩手のわかめ養殖と生産量

昭和24年、越喜来で天然種苗を使った養殖が本県では最初。昭和30年、大船渡市末崎町で人工採苗による養殖が開始された。(岩手県漁業史)
国内におけるわかめの生産量は、昭和30年中期に天然わかめ6万トンでしたが、30年代の後半に養殖技術が開発され、その後、生産が急増し、41年以降は養殖わかめが天然わかめより多くなりました。
養殖ワカメは、岩手県が生産量全国1位となっています。岩手、宮城、徳島で、全国の生産量のほとんどを占めています。
近年、中国から安価なワカメが大量に輸入され、三陸のワカメも価格が低迷し生産量も減少しています。

わかめの加工

岩手県における代表的な加工品の「湯通し塩蔵わかめ」は、90℃以上の温湯に30~60秒通し、直後に流水で冷却し、塩漬けしたものです。

こんぶ

岩手県で生産されるこんぶの種類はまこんぶ、ほそめこんぶ、みついしこんぶの3種類です。近年は種苗の培養技術の進歩により、養殖も盛んに行われるようになり、養殖生産は20,000トン位です。天然生産は変動があり600~4,000トンです。養殖施設は、わかめ養殖施設と同じようなものです。




かき

かき養殖は種がきを宮城県から購入して、養殖縄にはさみこんで、垂下して養殖します。
主な養殖場所は、大船渡湾と山田湾で、生産量は13,000トン内外で平成13年は広島・宮城・岡山につぐ第4位の生産県です。山田湾においては殻付きで販売する一粒がきの養殖が行われています。




ほたてがい

ほたてがいの産卵期は4月ごろで、産卵された稚貝は約30日から40日間、海水中を浮遊生活(プランクトン)してから物に付着します。この付着期に採苗器を海中に入れて稚貝をとり、これを約2年間養殖し、10cm以上の貝にして、販売します。



あわび

あわびの増殖

岩手県のあわびは、えぞあわびと呼ばれる種類です。
産卵期は夏から秋で、産卵された卵はその後浮遊幼生となり3~4日間浮遊生活してから海底に沈着します。
この沈着した稚あわびは1cm位までは、岩に付着している水ゴケ(けい藻)を食べて大きくなりますが、その後はこんぶやわかめなどの海藻類を食べるようになります。
漁獲される9cm以上のあわびに生長するまで5年もかかります。そのため禁漁期間や漁獲する大きさの制限、あるいはコンクリートブロックの投入などによる漁場づくりをして、あわびの増殖をはかっています。
また、あわびの種苗などを生産するため大船渡市に栽培漁業センター(現在は(社)岩手県栽培漁業協会)を建設し、昭和55年度から種苗生産を始めました。そして、放流効果も着々と出始めています。

あわびの生産

全国では、2,000トン前後のあわびが生産されています。
あわびは、本県の最も重要な磯資源ですが、生産量は、昭和59年の152トンを最低に近年は増加傾向にあります。
あわびを増やすために、県、市町村、漁業協同組合などが一体となって、種苗の放流、餌の確保、密漁防止の3つを重点的に実施しています。


うに

うにの増殖

岩手県のうにの種類は、きたむらさきうにと、えぞばふんうに(ボウズカゼ)が主です。
あわびと同じように禁漁期間や漁獲する大きさの制限、やせうにの移殖あるいはコンクリートブロックの投入などによる漁場づくりをして、うにの増殖をはかっています。
また、うにの種苗を生産するため種市町に(社)岩手県栽培漁業協会種市事業所を建設し、昭和62年度から種苗生産を始めています。

うにの生産

全国のうにの生産量は15,000トン(殻付)前後で、このうち約10%が岩手県で生産されています。
うには、あわびにつぐ本県の重要な磯資源です。
しかし、生産量をみると昭和40年の3,000トンから最低の昭和59年の580トン(殻付)まで大きな変動が認められます。
うにを増やすために、適正漁獲と生殖巣歩留りの増加、やせうにの移殖、人工種苗の放流、漁場づくりの4つを重点的に実施することにしています。


漁場づくり

岩手県における沿岸漁場整備開発事業

沿岸漁場整備開発事業は、大規模な海の畑作りを行う事業です。
この事業は、水産増養殖技術と土木技術を組み合わせて沿岸漁場の生産力を高め、水産物を計画的に増やすものです。岩手県で主に行われているものは、魚礁の設置、増殖上の造成などです。

魚礁設置事業

魚は海中の沈船などに集まる習性があるので、コンクリートブロックや鋼材などを組み合わせて魚を集める施設(人工魚礁)を造って、効率良い漁獲を行うための事業です。

増殖場造成事業(あわび・うにを対象とした事業)

コンクリートブロックなどを組み合わせて、あわび・うにのすみ場所や、餌となるこんぶなどの海藻を増やす場所を造ったり、波の強すぎる場所では波を弱める施設を造ります。これらの漁場整備と、稚貝や稚うに等の放流や移殖などの漁業管理を行って漁獲量を増大させる事業です。
こんぶの胞子が付着する10~1月にブロックを設置するため、こんぶがたくさん生える。大きなこんぶがたくさん生えると、ブロックも見えなくなってします。



密漁から海を守る

岩手県の海岸線の長さは706.8kmにおよび、沿岸は水産動植物の好適な生息場となっています。しかし、密漁等の不法行為も多いのです。
そこで、この豊富な水産資源を守るため本県では251名の海面漁業監視員と2隻の漁業取締船を配置し、密漁防止と海を守る意識の向上につとめています。また、漁業協同組合でも独自に監視員・監視船を配置し、日夜沿岸をパトロールしています。さらに県・市町村、県漁連、漁協、警察署、海上保安部等の関係機関が相互に連携をとり、総力をあげて密漁防止に取り組んでいます。

いか

するめいかは九州から北海道までの沿岸を餌をもとめて回遊し、最適水温は14~16℃です。夜間、明かりに集まる習性を利用して、集魚灯に集まったところを釣りあげます。

さけ

岩手県では、明治時代からさけふ化放流事業を行ってきました。昭和61年に岩手県さけ増殖振興計画(昭和70年度生産目標7万トン)をたて、関係者の協力のもとにふ化場の整備拡充、健康なさけ稚魚を放流する等いろいろ努力してきました(稚魚放流数4.4億尾)。その結果さけの漁獲量は年々増加し、平成2年度には5万トン、平成8年度には7万トンを超え、目標を達成することができました。
川に放流されたさけの稚魚は、海にくだりそして沿岸から沖合へ移動し、その後アリューシャン列島海域まで回遊して、3~5年後には母なる川に帰ってきます。


季節別水温変化と魚の回遊

海で生活している魚介類、海藻及びその他の生物は、水温、塩分などに影響されます。
これらの図は、日本周辺の季節別表面水温をあらわしたもので、本県沿岸水温は、冬期間5~7℃位になり、夏期には20~23℃位まで上がります。
このような水温の変化は、大洋の海水の動きにより変化します。
大洋では、水温や塩分、さらには海水に溶けている栄養分など同じような性質をもった海水が広い範囲にわたって続いています。このような海水のかたまりを水塊といいます。
本県沿岸漁場は、北から南下する低水温、低塩分で栄養に富んだ親潮水塊、南から北上する高水温、高塩分で栄養の乏しい黒潮水塊、日本海から流出する津軽暖流水塊の3つの水塊が交錯しています。
これらの水塊が春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下するにつれ、黒潮水塊にすむ、まぐろ類や黒潮と親潮の中間にすむ、さば、いか、さんま、いわし、ぶりなど、また、親潮水塊にすむ、さけ、ます、たらなど多くの魚が回遊し、本県沿岸は国内でも有名な漁場となっています。

漁家と就業者数

平成20年の漁業経営体数は、5,313経営体、そのうち個人漁業経営体数は5,204経営体で、漁業経営体数のうちの98%を占めています。
県、市町村、水産団体は、(財)岩手県漁業担い手育成基金を設立して、漁業後継者の育成に努めています。


漁船

平成22年の岩手県の漁船数は、15,930隻です。


H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22
動力船
(3t以上)
1,230 1,217 1,191 1,175 1,137 1,121 1,107 1,109 1,627
動力船
(3t未満)
2,432 2,341 2,254 2,132 2,038 1,958 1,882 13,357 14,207
船外機船 12,814 12,714 12,568 12,346 12,127 12,010 11,779    
無動力船 42 56 58 60 78 77 78 80 96

※平成21年から船外機船は動力船に含む

魚市場の水揚げと水産加工

魚市場の水揚げ高

県内には13魚市場があります。平成13年の水揚げは、15万トン、245億円で、数量は、さけ、いか及びさんまが増加し、おきあみ、ぶり類及びさば類が減少したため、前年並みになりましたが、金額は前年の83%になっています。

水産加工

岩手県の平成13年の加工品の生産量は、132千トンで前年よりも11%減少しました。このうち、さんま・いか・さけます類などの冷凍水産物は98千トンで全体の74%と大きな割合を占めています。

漁港

本県には、111の漁港があり、漁港数は長崎、北海道、愛媛、宮城、鹿児島についで全国第6位となっています。
漁港は海で働く人々にとって拠点となる大切なところで、出漁の準備やとれた魚を水揚げするほか、海の天候や魚のとれぐあいを知らせる施設、魚を保存しておく冷蔵庫、氷をつくる製氷工場、魚を加工する施設など、さまざまな施設が整っています。

市町村別・種別漁港数(平成19年3月現在、県漁港漁村課調べ)

市町村 指定漁港数 (参考)港湾 合計
1種 2種 3種 4種
洋野町 8 1 9 (八木)1 10
久慈市 9 1 10 (久慈)1 11
野田村 2 1 3 3
普代村 4 2 6 6
田野畑村 4 1 5 5
岩泉町 3 3 (小本)1 4
宮古市 16 2 18 (宮古)1 19
山田町 2 3 1 6 6
大槌町 1 1 2 2
釜石市 9 5 1 15 (釜石)1 16
大船渡市 16 5 1 22 (大船渡)1 23
陸前高田市 10 2 12 12
83 23 4 1 111 6 117

漁港の種類

漁港法という法律により次のとおり決められています。

  • 第1種:漁港地元の漁船だけが使う船だまりみたいな小さな漁港
  • 第2種:漁港周辺の地域の漁船が利用する程度の中規模の漁港
  • 第3種:漁港全国の漁船が利用するような規模の大きな漁港
  • 第4種:漁港離れ島や、へき地にあって、漁船が避難するために必要な漁港

水産業改良普及事業のあらまし

普及活動のねらい

水産業改良普及事業は、水産業についての知識の向上と経営の安定を図ることを目的として行われている事業です。
各地区の広域振興局に勤務している水産業改良普及員が沿岸漁村を巡回し、漁船漁業や増養殖業などの新しい技術や経営について直接指導したり、現在の沿岸漁業が直面しているいろいろな問題を取り上げて漁業者とともにその解決策について協議したり考えたりすることによって、新しい時代に対応した沿岸漁業の育成をめざしています。

普及活動の現状

◆普及員の設置場所

勤務場所 人員 電話
沿岸広域振興局(大船渡) 3 0192(27)9915
沿岸広域振興局(釜石) 3 0193(25)2706
沿岸広域振興局(宮古) 4 0193(64)2216
県北広域振興局(久慈) 3 0194(53)4985
水産技術センター首席水産業普及指導員 1 0193(26)7935

主な普及課題

1.経営の近代化・合理化の指導
(経営方法の改善、漁獲物価格の向上、生産コストの節減)
2.沿岸漁業等の生産性向上・技術の改良の指導
(増養殖技術の導入、新技術の開発導入、漁場の高度利用、資源の有効利用、漁労技術の向上)
3.教育及びグループ活動、他
漁村の青少年や女性を対象に、漁業についての学習や交流活動など、次のような事業を行います。

  • 漁村青壮年女性グループの育成
  • 青少年水産教室
  • 他地区青壮年女性グループとの交流
  • 漁村青壮年女性活動実績発表大会
  • 青年指導者育成