平成26年度岩手県水産技術センター年報

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1. 水産業の経営高度化・安定化のための研究開発

1-(1)-① ワカメ自動間引き装置の開発(企画指導部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p5-9

経営体数が年々減少傾向にある中で、手作業を中心としたワカメ養殖の生産システムは従来と変わらず、今後の生産維持、あるいは養殖規模を拡大していくためには、生産工程を効率化、省力化するシステムの開発が不可欠である。

養殖ワカメ生産工程のひとつである間引き作業は、厳冬期の1月から2月に行われることから、これまでもワカメ養殖業者の大きな負担となっており、当所では、平成22年度から石村工業株式会社と連携し、ワカメの自動間引き装置開発に着手し、震災以降は「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」において省力化システム開発の一環として実証試験に取り組んでいる。

本課題では、平成25年度に引き続き、ワカメ自動間引き装置の開発、実証を行い、ワカメ養殖業の生産性の向上を図るものである。

1-(1)-② 定置船搭載型ワカメ刈取り装置の開発(企画指導部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p10-12

三陸地域のワカメ養殖の生産体系は零細経営が多いうえ、収穫から加工工程に作業が短期集中する典型的な労働集約型の作業形態となっていることから、養殖業者の減少や高齢化が進行している。将来にわたって養殖生産量を確保していくため、労働条件の緩和や労働時間の短縮を図る必要がある。

そこで、春期に利用されていない大型で耐波性の高い定置船を利用し、安全かつ迅速なワカメ刈取り装置の開発を進めることを目的とした。

1-(1)-③ 陸上刈取り装置の開発(企画指導部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p13-17

三陸地域のワカメ養殖の生産体系は零細経営が多く、収穫から加工工程に短期集中する典型的な労働集約型の作業形態となっており、かつ、生産者の減少や高齢化が進行している。将来にわたって養殖生産量を確保するために省力化を図る必要がある。

そこで、陸上刈取り装置による省力化を検討した。陸上刈取り装置の使用により期待される効果は、次のとおり。

○陸上で安全に楽な姿勢で刈り取りできることから、高齢者でも作業できる。

○荒天が予想される際に、養殖桁をあらかじめ漁港内等に移すことで、シケの日でも刈取りができる。

1-(2) 漁業経営の体質強化のための研究(企画指導部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p18-20

本県の漁業経営は、漁船漁業、養殖漁業、採介藻漁業等の多様な漁業形態を複合的に営んでいることが特徴であるが、その経営実態が東日本大震災以降、把握・解析されていないため、所得向上の方向性が見出せない状況にある。

魚価低迷や燃油・資材高騰等の厳しい環境下において、東日本大震災からの復興に向けては、収益性の高い経営体質への転換が必要であり、経営実態を把握・解析し、効率的な経営について課題を検討し、漁家の収益向上を図るための提案が求められている。

平成24年度から当所で取り組んでいる食料生産地域再生のための先端技術展開事業(天然資源への影響を軽減した持続的な漁業・養殖業生産システムの実用化・実証研究ワカメ等の大規模海藻養殖の効率化システムの実証研究3-4ワカメ等の大規模海藻養殖の効率化システムの導入評価)では、ワカメ等の大規模海藻養殖の効率化システムの実証研究において、技術開発された機器等の導入による技術体系の確立や収益構造の評価を行うこととしており、この漁業経営実態調査を通じてワカメ漁家の経営実態を把握するととともに、作業の効率化による収益向上策を行う。

1-(3) 本県主要水産物のマーケティングに関する研究(ホタテガイ、カキ)(企画指導部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p21-22

本県の主要養殖生物であるホタテガイ、カキは、東日本大震災の被害により生産量が激減し、復旧・復興事業で漁船や施設など生産体制は回復しているものの、震災後、市場において失ったシェアや新たに得た流通体制などの状況や価格動向については把握・解析されていない。一部の養殖漁家では新たな流通販売への取組みがみられるが、経営体として脆弱な養殖漁家の所得向上には、生産部門だけではなく価格対策などの販売流通面からの経営方策が求められ、震災後の担い手の確保・育成や、地域再生営漁計画の実施には安定した販売ルートの確保が必要である。

そこで、ホタテガイ、カキの流通体制・状況をモニタリングし、震災後のシェアを再確認するとともに、価格決定要因を解明し、価格向上やニーズにあった出荷体制方策を提案し、養殖漁家所得の向上を目的とする。

2. 全国トップレベルの安全・安心を確保する技術の開発

2-(1) 二枚貝等の毒化予測の開発、及びシストの分布、二枚貝養殖漁場の環境評価(漁場保全部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p23-28

東日本大震災後に貝毒原因プランクトンの大量発生によりホタテガイ等の毒化現象が問題となっており、特に、大船渡湾では麻痺性貝毒によるホタテガイの高毒化のため、周年にわたる出荷自主規制を余儀なくされ、復興の妨げとなっている。

そこで、出荷自主規制解除時期の把握により、計画的な出荷再開が可能となることから、毒化した二枚貝の麻痺性貝毒減衰時期予測を行う。また、震災後、麻痺性貝毒原因プランクトンの休眠胞子(シスト)が存在する海底が攪(かく)乱されたことから、県内主要漁場の分布を明らかにする。さらに、国交省主催の湾口防波堤設置に関する検討会において、環境に配慮した新しい湾口防波堤の評価に係る基礎的知見(麻痺性貝毒原因プランクトンのシストの分布状況等)を提供する。

2-(2) カキのノロウイルス汚染による食中毒事故の発生リスク低減に関する研究(漁場保全部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p29-31

ノロウイルス(以下、「NV」)による食中毒は、食中毒原因のトップとされる。その感染原因の一つとして、NVに汚染されたマガキ等二枚貝類の生食、あるいは不十分な加熱調理後の摂食が挙げられ、マガキ(以下、「カキ」)の生産段階におけるNVに由来するリスク管理が求められている。

このため、カキ養殖漁場におけるNVの分布実態を把握するとともに、カキ養殖漁場におけるNVの汚染予測手法を開発し、NVによるカキの汚染リスク低減のための漁場管理方法を提示する。

3. 生産性・市場性の高い増養殖技術の開発

3-(1)-① 増殖・管理技術の開発・改善(漁業資源部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p32-36

岩手県の秋サケ回帰尾数は、平成11年度以降平均860万尾に低迷し、その回復が急務の課題となっている。

一方、サケの生活史において、人為的に関与できる時期は種苗生産および稚魚放流のみであることから、同時期の人為的対応策が求められているところである。

本研究では、人為的に関与できる種苗生産・放流技術について、民間ふ化場の事業規模で試験・研究が可能な大規模実験施設を整備し、稚魚飼育密度や飼育水量などの最適飼育環境の検証を行うとともに、低回帰率時代の海洋環境に対応した放流時期や放流サイズなど最適放流手法の検証を行う。さらに、稚魚放流後の初期減耗を緩和するための海水馴致放流技術の有効性の検証やふ化場の生産能力に依存しない放流数追加手法の検証を行う。これらの種苗生産・放流の改良・開発により得られた技術を民間ふ化場に移転することにより、秋サケ回帰尾数回復を図ることを目的とする。

3-(1)-② 秋サケ回帰予測技術の向上(漁業資源部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p37-43

岩手県の秋サケ回帰尾数は、平成11年度以降平均860万尾に低迷しており、回帰尾数減少の要因究明と回帰尾数回復の対策が求められている。本研究では、津軽石川、織笠川及び片岸川のそ上親魚調査を実施し、年齢組成、体サイズ及び繁殖形質等の長期的なモニタリング結果に基づいて、レジームシフトや気候変動等がサケ生息環境変化に及ぼす影響を評価する。また、漁業指導調査船岩手丸・北上丸を用い、岩手県・北海道太平洋沿岸における幼稚魚期の分布状況や成長を把握し、環境要因との総合的な評価を行う。河川そ上親魚と幼稚魚の調査結果を用いて秋サケの回帰予測を行い、安定した増殖事業の実践に資することに加え、近年の資源変動要因の解明に寄与することを目的とする。

3-(2)-① 種苗生産の安定・低コスト化技術の開発(増養殖部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p44-48

岩手県沿岸はアワビの好漁場であり、アワビの漁獲量(平成22年度)は都道府県別で最も多い283トン、全国漁獲量1,461トンのおよそ2割を占めている。岩手県では、この漁獲量の維持、増大のため、年間800万
個の種苗放流と漁獲規制などの資源管理を実施してきたが、東日本大震災の大津波によりアワビ資源は大きな被害を受けた。震災後の調査結果から、平成22年生まれ(震災時の年齢は0歳)の天然稚貝が全県的に壊滅的な被害を受けたことが明らかとなり、さらに、県内のアワビ種苗生産施設が全壊し、平成23年以降当面の間、種苗放流が実施できない状況であることから、今後アワビ資源の減少、低迷を招くことが危惧されている。

このような状況から、アワビ種苗生産・放流の再開によるアワビ資源の増強が強く求められており、その一方で放流を行う各沿海漁協では復旧・復興のための経済的な負担が膨らんでいることから、震災前の種苗生産体制への単なる復旧ではなく、最先端の技術を活用し、従来以上に効率的な体制を構築することが急務である。

本研究では、近年の研究により良質な卵が得られることが明らかとなっている再成熟卵について事業規模で実証研究を行い、併せてアワビ初期稚貝の好適餌料であることが確認されている針型珪藻を用いた採苗・飼育技術の導入により、従前より生産効率の高い種苗生産技術を開発する。今年度は、このうち再成熟卵による種苗生産技術の開発を行った。

3-(3) 海藻類養殖の効率生産化に関する研究(増養殖部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p49-52

ワカメ、コンブは本県を代表する養殖種目である。これらの養殖種は、病虫害の発生や生理活性の低下等により減産や品質低下など大きな被害を及ぼす年があるが、有効な防除手段が確立されておらず、早期刈り取り指導などを通じて品質低下を水際で防いでいる状況にある。本研究では、ワカメ性状調査などの基礎的研究を積み重ね、病虫害発生の早期発見や出現傾向を把握することでワカメの品質維持に努めるとともに、知見の積み上げによる将来的な病虫害発生機構解明を目的とするものである。

3-(4)-① ホタテガイ・ホヤ等の安定生産手法の検討(増養殖部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p53-61

ホタテガイは、本県の重要な養殖対象種の一つであるが、年により大規模な斃死が起きるほか、生物の大量付着により成長の悪化や養殖管理に係る作業量の増大が課題となっており、本調査試験は、次の目的で行ったものである。①浮遊幼生(ラーバ)出現状況と稚貝付着状況を調査し、採苗器の投入時期の決定や地場種苗の安定確保のための情報提供をする。②養殖ホタテガイの斃死の要因として施設の振動が考えられており、(独)青森県水産総合研究所では振動の軽減化技術を開発したことから、本県においてもその技術を準用し、その効果を確認する。③ヨーロッパザラボヤ等付着生物の付着状況を把握するとともに、付着生物の軽減方法対策を提案する。

3-(4)-② マガキの新しい生産技術導入の検討(増養殖部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p62-67

マガキは本県の重要な養殖対象種であるが、震災以後、宮城県に依存した種苗の供給が不安定であること、種苗の移入による病原体拡散のリスクが高まっていることが問題となっている。これらの問題を解決するため、県内での種苗生産、養殖期間の短縮や出荷形態の多様化、出荷時期の分散等につながる技術を確立する必要がある。そこで、県内での天然採苗および人工種苗を用いたシングルシード養殖の導入を目指す。

4. 水産資源の持続的利用のための技術開発

4-(1) 海況変動を考慮した漁海況予測技術の開発(漁業資源部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p68-73

本県海域は、親潮や津軽暖流の流入に黒潮系暖水の波及も加わり潮目ができることで好漁場が形成される生産性の高い海域であるが、その物理的な海洋環境は複雑かつ季節的・経年的に変化が大きく、沿岸域の漁
船漁業及び養殖業に与える影響も大きい。例えば、冬季から春季にかけて親潮系冷水が南偏して長期的に本県沿岸に接岸する異常冷水現象は、その年のワカメ養殖等に影響を及ぼすことがある。そのため、漁業指導調査船での海洋観測、定地水温観測、人工衛星画像などから得られる水温・塩分データを多面的に解析することにより漁海況予測の精度向上を目指す。

また、水産情報配信システム(いわて大漁ナビ)により県内魚市場の水揚げデータや水温情報などの情報を広報することにより、漁船漁業者や養殖業者の日々の操業を情報面から支援する。

4-(2)-① 主要底魚類の資源評価(漁業資源部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p74-91

岩手県地先の重要な漁業資源である底魚類の資源水準を評価し、その変動要因を推定することにより、多様で持続可能な漁船漁業の再構築に貢献する実践可能で効果の高い資源管理方策の提案を目的とする。

4-(2)-② 東日本大震災以降の漁船漁業の現状評価と、資源評価結果に基づく資源利用モデルの導入(漁業資源部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p92-95

岩手県の漁船漁業は、多様で変化に富む地先の漁業資源を様々な漁法で漁獲することによって営まれてきたが、東日本大震災によって甚大な被害を受けた。今後、なりわいとしての水産業が再生し、復興していくためには、海域の生産力を最大限生かした多様な漁業の復活が欠かせない。そこで、本研究は、岩手県で行われている漁業の回復過程をモニタリングすることにより、多様で持続的な沿岸漁船漁業の再構築に寄与することを目的とする。

4-(3) 回遊性漁業資源の利用技術の開発(漁業資源部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p96-104

日本が平成8年に批准した国連海洋法条約では、排他的経済水域内水産資源の科学的根拠に基づく資源状態の評価と適切な資源管理が義務づけられている。このため、複数の都道府県で利用される回遊性資源について、国および関係都道府県の研究機関と協力して資源調査・漁況予測技術開発を実施し、TAC設定の根拠となる資源評価票の作成及び漁海況予測を行うことにより資源の持続的利用を図ることを目的とする。

4-(4) 震災による磯根資源への影響を考慮したアワビ・ウニ資源の持続的利用に関する研究(増養殖部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p105-111

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び津波による磯根生物への影響及びその後の回復状況を、震災前の調査資料がある県内3か所(北部:洋野町、中部:宮古市、南部A:大船渡市)及び震災後に調査を開始した2か所(南部B:釜石市、南部C:陸前高田市)で明らかにする。また、種苗生産施設の被災によりアワビやウニ類の種苗放流が中断・縮小したため、これらの生息量がどのように推移したかモニタリングする。

5. いわてブランドの確立を支援する水産加工技術の開発

5-(1)-① 通電加熱技術等による省エネ・省力化型加工製造技術開発及び実証研究(利用加工部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p112-113

通電加熱技術は規模が大きい食品メーカーを中心に導入が進んでいるが、水産加工では業者の多くが中小零細企業であり、生産規模が限定されるため、大規模な製造システムを有するカマボコ製造以外にはあまり利用されていない現状がある。そこで、通電技術の小型化を図り、規模の小さい産業へ通電加熱技術の利活用を推進することにより、本技術のメリットである、エネルギーやコストの削減に伴い収益の改善が期待できる。そこで本研究では技術実証試験を進めるため、地元企業との連携し、イカの端材をミンチ肉から再成型食品を製造する通電加熱装置を設計、導入を図り、連続生産可能なシステムを開発することを目的とした。

5-(2)-① 短期蓄養による漁獲物の付加価値向上技術の開発(ウニ)(利用加工部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p114-115

ウニの美味しい食べ頃の出荷期間を、従来の8月上旬から需要の高まる9月上旬まで2週間延長(18%延長)できる蓄養条件を検討する。

5-(2)-② 地先水産資源を用いた加工品試作開発(利用加工部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p116-117

企業との連携を図り、技術的フォローアップを行いながら、企業の加工品開発を支援することを目的とする。そのうち技術開発テーマとして、高齢者に多い嚥下困難者を対象とした食品の開発に向けて、ソフト感を得るための加工素材開発を行う。今年度は主にレトルト処理により中骨を軟化させて丸ごと食べられる干物風の加工品開発を実施した。

5-(3)-① 簡易・迅速品質評価技術開発(利用加工部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p118-122

水産加工場等では、脂質含量を簡単で迅速に測定できる非破壊測定装置が求められている。しかし、既存の測定装置は高額であることなどから、普及するには至っていない。このため、中央水研、大和製衡㈱などが安価な測定装置の市販を目指し、魚体の電気インピーダンスから脂質含量等を推定する魚用品質状態判別装置を開発した。当センターではこの装置のプロトタイプを用い、本県で漁獲されるカツオとブリの脂質含量の推定に必要な交流電流の周波数に対応するインピーダンス値と実際の脂質含量との関係を明らかにし、本県で漁獲される主要魚種の検量線を求める。併せて、岩手県に水揚げされるブリの付加価値向上に資することを目的に、一般成分の季節的な変化を調査するとともに、ブリに寄生し消費者に不快感を与える大型線虫の寄生状況も調査する。

5-(4)-① 原料特性に関する調査研究(利用加工部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p123-129

2009年春に販売開始されたワカメ高速攪拌塩漬装置(商品名:しおまる、石村工業製)の導入数は、岩手・宮城県の三陸地域において東日本大震災前の120台から震災後には500台となり、岩手県ではワカメの自家加工を行う480名のうち約300名が本装置を導入した(普及率約60%)。そこで、急速に導入が進んだ本塩漬装置の使用状況を把握するための聞き取り調査を行い、合わせて湯通し塩蔵ワカメの品質調査を実施する。

水産技術センターでは、製品の塩分不足が認められた事例を受け、高速攪拌塩漬装置の塩漬法について推奨条件(75kgの湯通し海藻に食塩25kgを投入する方法:2013年方式)と網目の細かい推奨袋を定め、その普及に努めてきた。しかし、粗い網目の袋も使用されている現場では、食塩の結晶が多く塩水中に存在する2013年方式は塩漬後に塩落とし作業を伴うため、粗い網袋の使用者を対象とした最適な塩漬条件や飽和濃度を維持する方法について検討を行う。

水産技術センターで定めた推奨網袋には25kgの海藻を詰めることを標準として生産者に指導してきた。平成25年および27年春に実施した品質調査結果では、ワカメの葉には塩分が十分に浸透しているにも関わらず、茎では塩分が不足している事例が多く認められた。その原因を探り、塩蔵海藻品の品質の安定化を図るため、これまで検討されていなかった攪拌速度と塩分浸透の関係性について検証を行う。

6. 豊かな漁場環境の維持・保全のための技術開発

6-(1) 漁家所得の向上と経営安定を目指した養殖漁場の環境収容力に関する研究(漁場保全部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p130-135

東日本大震災によって壊滅的な被害を受けた二枚貝養殖の適切な復興を進めるため、良質の二枚貝を持続的に生産できる漁場利用の在り方を提示する。

6-(2) 適正な漁場利用を図るための養殖漁場の底質環境評価(漁場保全部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p136-140

県内主要5湾(表1参照。県漁場環境方針に定める重要監視水域(大船渡湾・釜石湾)のモニタリングは別途毎年実施)の底質環境を評価し、適正な漁場利用および増養殖業の振興に資する。

6-(3) 県漁場環境保全方針に定める重点監視水域(大船渡湾・釜石湾)のモニタリング及び広報(漁場保全部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p141-145

釜石湾及び大船渡湾は、岩手県漁場環境保全方針に基づく重点監視水域に指定され、水産生物にとって良好な漁場環境を維持するため、水質・底質、底生生物を調査し、漁場環境の長期的な変化を監視してきている。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災による津波で、両湾とも陸域から相当量の有機物等の流入、海底地形の変化・海底泥のかく乱等が生じたことで、湾内の養殖漁場環境が大きく変化した。また、両湾に設置された湾口防波堤の復旧工事に伴い、湾内の養殖漁場環境は今後も変化することが予想される。そこで、湾内の漁場環境に影響を与える水質や底質をモニタリングし、その変化を漁業関係者に情報提供することにより漁場管理を促す。

6-(4) 養殖ワカメ安定生産の基礎となるワカメ漁場栄養塩モニタリング及び関係者への広報(漁場保全部)

2014 岩手県水産技術センター年報 p146-147

ワカメの生育に影響を及ぼす栄養塩濃度の変化について、定点を経年調査し、情報を随時提供することで、ワカメ養殖の振興に資する。