岩手県水産技術センター研究報告(第8号)

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岩手県水産技術センター研究報告第8号

平成27年3月

マボヤの被嚢軟化症に対する加温処理の効果

小林俊将・大村敏昭

種苗を高温処理してマボヤ被嚢軟化症の病原体フリー化することを目的として,適切な処理水温と処理時間を検討した。発病個体の被嚢を30℃の温海水に30 分浸漬することで水平感染が成立しなくなった。また,同じ条件の処理でマボヤの種苗が死ななかったことから,温海水処理で種苗を病原体フリー化できる可能性が示唆された。また,海水を35℃以上で1分間,または38℃以上で10秒間処理すれば海水中の病原体をフリー化できることが分かった。
岩手水技セ研報, 8,1~4(2015)

標識放流・再捕データに基づくヒラメ若齢魚の岩手県北部からの移動パターン

後藤友明・佐々木律子

岩手県北部久慈地先において,2006~2009 年にダート標識を施したヒラメ未成魚527 個体を放流し,寄せられた再捕報告に基づいて移動特性を評価した。本海域で放流されたヒラメは,放流後翌日から414 日後までの再捕がみられた。再捕は,放流直後以降,期間を通して放流海域周辺と放流海域より北の海域が大部分を占め,南方での再捕は放流後2 ヶ月以内に限られ,その範囲は岩泉町地先以北であった。北方での再捕についてみると,その大部分が津軽海峡東部の下北半島付近で,少なくとも放流後40 日程度で達していることが明らかになった。過去の研究とあわせて考えると,岩手県北部のヒラメ資源は下北半島東部から津軽海峡周辺に分布する系群の一部となっており,秋季に北上して津軽海峡周辺に達するグループと同海域にとどまるグループの2 群が存在している可能性が示唆された。
岩手水技セ研報, 8,5~11(2015)

2013 年春夏季の岩手県における定置網によるスルメイカの漁獲動向および発生時期

髙梨愛梨・後藤友明・原義昭

2013 年春夏季に岩手県地先海域で漁獲されたスルメイカについて,平衡石日周輪解析により群構成の特徴を明らかにし,漁獲動向との関係を検討した。その結果,春夏季の本県定置網では1 月生まれの冬季発生系群を主体として複数の発生群が漁獲対象となっていることが確認され,早期に発生した群から順次来遊し,滞留せずに移出することを繰り返しているものと推察された。また漁獲動向との関係から,各発生群の豊度や来遊状況が定置網漁獲量の多寡や漁期に影響を及ぼす可能性が示唆された。
岩手水技セ研報, 8,13~16(2015)

岩手県沿岸におけるエゾアワビの稚貝密度と親貝密度との関係

大村敏昭・西洞孝広・武蔵達也・堀井豊充・高見秀輝

地先滞留型の再生産に必要な親貝密度を把握するため,岩手県沿岸3 箇所(北部,中部,南部)で実施したコドラート調査により,エゾアワビの稚貝密度と親貝密度の関係を調べた。中部の離岸潜堤の内側では,稚貝が大幅に減耗した冷水接岸年と震災年を除くと,稚貝密度と前年の親貝(殻長61~100 mm)密度との間に有意な正の相関が認められた。従って,このサイズの親貝が地先滞留型の再生産には重要であり,離岸潜堤の内側では発生した幼生が滞留しやすいと考えられた。県内3 箇所の稚貝密度と前年の殻長61~100 mm の親貝密度との関係をみると,親貝密度1.0 個体/m2以下では稚貝密度は低く,3.0 個体/m2を超えると高い確率で稚貝が卓越した。これらの親貝密度は,エゾアワビ資源管理のための一つの指標となると考えられる。
岩手水技セ研報, 8,17~24(2015)