岩手県水産技術センター研究報告(第10号)

年報・研究報告(PDFファイル)のダウンロードページはこちら

Pocket

岩手県水産技術センター研究報告第10号

令和5年3月

エゾアワビの殻色変異体が形成する卵の色彩変異

小林俊将

エゾアワビの殻色変異体を用いた交配実験により殻色と卵の色彩の関連性を調べた。同一の配合飼料を与えた状況で通常の緑色型の殻色の個体は緑色の卵を,青色型の殻色変異体は青色の卵を,白色型の殻色変異体は白色の卵を形成し,殻色と卵の色彩が同調する傾向が認められた。また,卵の色彩変異は母親の殻色の遺伝子型でなく表現型と一致し,発生後の殻色や次世代での殻色及び卵の色彩には影響を及ぼさなかった。これらのことから, 卵の色彩変異と母親の殻色変異は同じ遺伝子で支配されている可能性が示唆された。
岩手水技セ研報,10,1~5(2023)

岩手県山田湾におけるサケ稚魚の海中飼育方法の改良試験

長坂剛志・岡部聖・清水勇一

本試験では,サケ稚魚の海中飼育において表面から1.5m を飼育途中で大目網に目合いを切替え, 1 ヶ月以上の飼育による稚魚の成長と遊泳力に与える影響を調査した。試験群では目合いの切替え以降一部稚魚の逃避を確認し,1 ヶ月以上の飼育によって成長及び遊泳力の向上がみられた。その要因として,海水交換効率の向上による天然飼料の流入量の増加と一部稚魚の逃避による飼育密度の低下が影響した可能性が考えられた。
岩手水技セ研報,10,7~10(2023)

脱出リング付改良カゴ内のミズダコ脱出行動

森友彦

岩手県釜石沖の水深100m 帯でカゴ調査を行った結果,通常カゴと改良カゴの1 カゴあたりの漁獲尾数及び漁獲重量には,有意な差は見られなかった。改良カゴでは2kg 未満の再放流サイズは漁獲されなかったが,通常カゴのミズダコ漁獲組成と有意な差は見られなかった。水中カメラによる改良カゴ内の行動観察では,飼育環境下では体重3kg 前後で脱出の成否が分かれ,2.8kg までは脱出が確認された。脱出時間は個体により2 分~4 日と変動があった。生息環境下での観察では,改良カゴに入網したミズダコが自然に脱出する瞬間は観察できなかったが, 漁獲個体を再び改良カゴに入れて調査地点に投下した再投入実験では,3 個体中2 個体で脱出の瞬間が確認された。
岩手水技セ研報,10,11~19(2023)