1.漁船漁業の円滑な再建と持続可能な資源利用による経営安定支援
1-(1)海況変動を考慮した漁海況予測技術の開発(漁業資源部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p5-10
調査船、自動定地観測計、人工衛星などから得られる水温のデータを総合的かつ多目的に解析し、海況予測の精度向上を目指すとともに漁況予測へ応用することを目的とする。
1-(2)回遊性漁業資源の利用技術の開発 (漁業資源部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p11-18
日本が平成8年に批准した国連海洋法条約では、排他的経済水域内水産資源の科学的根拠に基づく資源状態の評価と適切な資源管理が義務づけられている。このため、複数の都道府県で利用される回遊性資源について、国及び関係都道府県の研究機関と協力して資源調査・漁況予測技術開発を実施し、TAC 設定の根拠となる資源評価票の作成及び漁海況予測を行うことにより資源の持続的利用を図ることを目的とする。
1-(3)底魚類資源の評価と管理に関する研究(漁業資源部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p19-33
岩手県地先の重要な漁業資源である底魚類の資源水準を評価し、その資源変動の要因を推定するとともに、
持続的かつ適正な漁獲水準を評価し、その水準内で漁業所得の安定化を図るための資源管理手法を見いだして
実践可能で効果の高い方策を提案することを目的とする。
2.多くのふ化場や定置網が被災した秋サケ漁業の復興を支援
2-(1)ふ化場別最適飼育収容尾数に関する研究 (漁業資源部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p34-36
サケを最適環境下で飼育して放流するため,県内沿岸全ふ化場毎の飼育能力に見合ったふ化場別最適飼育収
容尾数を試算して,その試算結果を業界団体に提示し,被災後の新たなふ化放流計画を策定に寄与する。
2-(2)誘引保育技術等によるサケ放流稚魚の生残率向上技術 (漁業資源部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p37-42
岩手県の秋サケ(Oncorhynchus keta)回帰尾数は近年減少の一途を辿っており、資源減少要因の解明と回帰率を向上させる放流技術の開発が急務である。本研究では、岩手県沿岸へ回帰した親魚の年齢組成および繁殖形質を調査し、秋サケ資源の減少要因を解明するとともに、回帰率を向上させるサケ稚魚の飼育・放流技術を開発し、その効果を検証すること目的とする。
3.アワビ・ウニ等採介藻漁業の早期再開と資源管理による安定生産
3-(1)津波によるアワビ、ウニ等磯根資源への影響に関する研究(増養殖部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p43-47
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び津波による磯根生物への影響とその後の回復状況を、震災前の調査資料がある県内3 か所(北部:洋野町、中部:宮古市、南部:大船渡市)で検討する。また、種苗生産施設の被災によりアワビやウニ類の種苗放流が休止・縮小したため、これらの生息量がどのように推移したかモニタリングする。
3-(2)津波後の磯根資源及び漁場の現状に関する研究 (増養殖部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p48-52
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び津波によって、海底の攪乱が生じ、磯根生物やその生息場所が大きなダメージを受けたと考えられる。そのため、津波による被害が特に大きかったリアス式海岸を有する県南部の漁場で、震災後のアワビ、ウニ類、大型海藻類の現状と回復状況を把握することを目的とする。また、種苗生産施設の被災によりアワビ種苗放流が休止し、アワビ資源量の減少が危惧されるため、震災後のアワビ生息量をモニタリングする。
3-(3)再成熟による良質卵の確保技術の開発(増養殖部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p53-55
岩手県沿岸はアワビの好漁場として知られ、アワビの漁獲量(平成22年度)は都道府県別では最も多い283トン、全国漁獲量1,461トンに占める割合は19.4%となっている。この漁獲量を維持するために、年間800万個に及ぶ大量の種苗放流と漁獲規制などの資源管理を実施してきたが、東日本大震災の大津波により、平成22年生まれ(震災時の年齢は0歳)の天然稚アワビが壊滅的な被害を受けていることが明らかとなった。さらに、県内のアワビ種苗生産施設が全壊したことにより、平成 23 年以降当面の間、種苗放流が実施できない状況となっている。この状態を放置すると、今後数年間にわたってアワビ資源が低迷し、水産業の衰退と市場へのアワビ供給の激減を招く危険性があることから、1 日でも早くアワビ種苗生産・放流を再開し、漁業資源および親資源としてのアワビ個体群を増強する必要がある。この際には、震災前の環境への単なる復旧ではなく最先端の技術を活用し、従来以上に効率的な種苗生産体制を構築することが必要である。
このため、事業規模での導入例のない再成熟採卵方式によるアワビの増殖技術の実証研究を行い、従前より飛躍的に生産効率の高い大量種苗生産を行うことにより、十分な種苗生産施設が整わない被災地において効率的にアワビ放流種苗を確保する技術を開発する。
4.養殖業の早期再開へ向けた養殖用種苗の確保支援と適正養殖管理
4-(1)高品質二枚貝の安定生産に関する研究<ホタテガイ> (増養殖部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p56-59
ホタテガイは、本県の重要な養殖対象種であり、品質が良く安定供給されていることにより市場で評価され比較的高価格で取引されている。今後とも高品質生産を維持していくためには以下の課題がある。
1 ホタテガイ養殖は、生残率が年によって大きく変動し、それが生産の不安定要因の一つとなっている。このことを克服するためには地場採苗の状況調査を行い、健苗育成手法の検討に資する。
2 県中部以南の一部の漁場で、ヨーロッパザラボヤが垂下中のホタテガイに大量に付着し、養殖生産の支障となっていることから、ヨーロッパザラボヤの付着状況調査を行い、被害軽減の検討に資する。
4-(2)高品質二枚貝の安定生産に関する研究<カキ> (増養殖部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p60-66
マガキは本県の重要な養殖対象種であるが、震災以後種苗の供給が不安定であること、ノロウィルス汚染による出荷規制が養殖復興の足かせとなっていること、種苗の導入による病原体拡散のリスクが高まっていることが問題となっている。これらの問題を解決するため、県内での種苗生産、養殖期間の短縮や出荷形態の多様化、出荷時期の分散等につながる技術を確立する必要がある。そこで、県内での天然採苗およびシングルシード養殖の導入を目的とし、平成 24 年度から天然採苗調査およびシングルシード種苗生産・養殖試験を行っている。
平成 24 年度の天然採苗調査では、マガキの付着ピークは 8 月下旬から 9 月上旬に見られ、岸壁の定点でマガキの付着個体数が多いことが明らかとなった。本調査では、24 年度と同様の試験を行い、再現性を確認する。また、抑制試験を行い、抑制適地を検討することを目的とする。シングルシード種苗生産・養殖試験では、採卵以降の試験を実施し、種苗生産・中間育成方法を検討する。
4-(3)海藻類養殖における病虫害発生機構に関する研究(増養殖部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p67-70
ワカメ、コンブは本県を代表する養殖種目である。これらの養殖種は、病虫害の発生や生理活性の低下等により減産や品質低下など大きな被害を及ぼす年があるものの、有効な防除手段が確立されていない状況にある。そこで、多種多様な病虫害の発生機構や診断基準を明らかして、養殖生産の安定化に資する。
4-(4)ワカメ等の大規模海藻養殖の効率化システムの実証研究
①ワカメ自動間引き装置の開発 (企画指導部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p71-75
本県のワカメ養殖業者は、零細な個人経営体が大半を占めることに加え、高齢化や後継者不足が深刻な問題となっており、経営体数は年々減少傾向にある。さらに、東日本大震災津波の影響により、この減少がますます加速することが懸念される。
経営体数が減少する中で、ワカメ養殖の生産システムは従来と変わらず、今後も生産を維持していくためには、生産工程を効率化、省力化するシステムの開発が不可欠である。
養殖ワカメ生産工程のひとつである間引き作業においては、厳冬期の1月から2月に行われることから、これまでもワカメ養殖業者の大きな負担となっている。
本課題では、ワカメ養殖の生産量を維持・増大させるための省力化システム開発の一環として、ワカメ自動間引き装置の開発、実証を行い、生産性の向上を図るものである。
4-(4)-②ワカメ刈取り装置開発試験(企画指導部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p76-81
三陸地域のワカメ養殖の生産体系は零細経営が多く、収穫から加工工程に短期集中する典型的な労働集約型の作業形態となっており、かつ、養殖業者の減少や高齢化が進行している。さらに、東日本大震災津波により行使者数は被災前の76%程度に留まっており、今後も養殖業者の減少が懸念される。将来にわたって養殖生産量を確保していくため省力化や省エネルギー化を図る必要がある。
そこで、定置船を利用した大規模ワカメ刈取り装置による省力化や省エネルギー化を検討した。
4-(4)-③ボイル加工試験 (企画指導部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p82-85
三陸地域のワカメ養殖の生産体系は零細経営が多く、収穫から加工工程に短期集中する典型的な労働集約型の作業形態となっており、かつ、養殖業者の減少、高齢化が進行している。さらに、東日本大震災津波により行使者数は被災前の76%程度に留まっており、今後も養殖業者の減少が懸念されるため、将来にわたって養殖生産量を確保していくため、生産量の増大、製品の品質向上、生産コストの削減により、それぞれの技術や資産に応じた持続的な安定収入を得る取り組みが必要である。
本試験では、ワカメボイル釜壁面を断熱材で覆うことで、加温過程及び操業時における省エネ化、生産コストの削減を検討した。
4-(4)-④コンブ乾燥施設の省エネルギー化(企画指導部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p86-91
県内では乾燥コンブ生産の際に、漁家が所有する施設で乾燥作業が行われ、専用の乾燥機が用いられているが、近年の燃油高騰により、乾燥機の燃油使用量の軽減がこれまで課題となっていた。
また、東日本大震災津波により、多くの個人施設が被災したため、重茂漁業協同組合では共同利用のコンブ乾燥施設を整備し、平成25 年度の乾燥コンブ生産時から施設の運用を開始したところであるが、これまで個人施設でコンブ乾燥を行っていた生産者は、新設されたばかりの施設で試行錯誤しながら作業を行っており、早期に効率的な施設の運用方法を確立しなければならない状況にある。
そこで今回、新設された施設でのコンブ乾燥作業の実態を把握するとともに、今後作業の効率化、省エネルギー化の方策を提示するための知見を得るものである。
5.県産水産物の品質優位性の証明等による市場流通の支援
5-(1)県産水産物の非破壊迅速品質評価技術の実証
① 生鮮水産物、冷凍水産物の鮮度、成分の把握 (利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p92-93
魚の品質を評価する場合、鮮度と脂質含量は重要な評価項目であり、魚市場等では鮮度指標であるK値と脂質含量を簡単で迅速に測定できる非破壊評価の測定装置が求められている。しかし、既存の測定装置は高額であることなどから、普及するには至っていない。このため、中央水研、大和製衡㈱などが安価に市販することを目指し、魚体の電気インピーダンスからK値と脂質含量等を推定する魚用品質状態判別装置を開発した。当センターではこの装置のプロトタイプを用い、本県で漁獲されるカツオ、ブリおよびサケのK値と脂質含量の推定精度について検討した。
5-(1)-②マイクロ波照射センシングによる塩蔵海藻製品の非破壊含水率測定技術(利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p94-98
本県沿岸で生産される養殖ワカメは、大半が「湯通し」と「塩漬け」が施された塩蔵加工製品として流通しており、その品質を保存性良く維持するためには製品の水分と塩分を適切に管理することが重要である。しかしながら、従来の品質管理手法(目視や官能による出荷製品の等級格付け)のみでは十分とは言えず、また、迅速な測定結果が得られる分析手法が不足している為に、出荷流通時など、製品の全数を対象とした成分の規格管理は実現できていない。
そこで、海藻類、特に塩蔵加工されたワカメ(製造仕掛品、箱入り最終製品)に含まれる水分等を迅速かつ簡便に判定し得る新たな分析手法として、木材用水分計で実用化が進むマイクロ波(図1)センシング技術を応用した海藻成分用プロトタイプ装置の開発を行い、高濃度な塩分が含まれる被測定試料の含水率を精度良く測定できる最適なセンシング条件を検討するとともに、養殖ワカメ等、海藻加工分野における製造・流通管理手法としての技術的基盤の構築を目的とする。
5-(2)震災後ワカメの加工特性と製品品質調査
①定点採取ワカメ藻体の漁期中pH および色調に関する調査(利用加工部 )
2013 岩手県水産技術センター年報 p99-101
養殖ワカメ生産は、震災から2年となる平成25 年産漁期(平成24 年度)を迎え、湯通し塩蔵加工品(全漁連共販製品)の出荷も各地漁協で再開されており、漁協や漁業者の経済的復旧が進むものと期待されている。
ただし、加工品においては、加工環境の本格的復旧に数年程度を要すると考えられるため、流通から二次加工の段階で発生する品質劣化(保存性に起因するクレーム)が増加するとの懸念があり、養殖生産量の回復に併せて加工製品の品質確保と改善対策を進める必要がある。
そこで、従前より継続実施している素材特性に関する調査に加え、適切な加工流通条件を明確化する調査研究、流通製品の品質状況の把握、県漁連・各地漁協の品質管理に対する技術的支援等を複合的に実施し、ワカメを中心とした本県産海藻加工品の品質安定化と産地ブランドの復興に寄与することを目的とする。
5-(2)-②湯通し塩蔵条件による藻体pH および色調変化に関する検討(利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p102-104
養殖ワカメ生産の湯通し塩蔵加工については、従前より県漁連による製造要領での明示ほか、加工研修等における調査研究成果の提示等によって周知されてきたが、震災後は、加工環境の変化に応じた加工条件の管理指導が十分に行えていない状況があり、加工条件に起因する製品出荷後の品質変化(保存性に起因するクレーム)の増加が懸念される。そこで、従前から実施しているワカメの素材特性に関する調査に加え、適切な加工条件の抽出に係る調査研究をあらためて実施し、県漁連・各地漁協による品質管理指導に資する技術的知見を得ることを目的とする。
本課題では、湯通し塩蔵加工の主要な管理ポイントである「湯通し処理の温度」と「塩漬け状態(塩水の飽和度)」について条件を変えた加工を行い、藻体pH への影響、および、保存中の色調変化への影響を検討した。
5-(2)-③ワカメ湯通し後の異なる塩漬処理方法の特性に関する検証 (利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p105-110
養殖ワカメ生産の湯通し塩蔵加工については、従前より県漁連による製造要領での明示ほか、加工研修等における調査研究成果の提示等によって周知されてきたが、震災後は、加工環境の変化に応じた加工条件の管理指導が十分に行えていない状況があり、加工条件に起因する製品出荷後の品質変化(保存性に起因するクレーム)の増加が懸念される。そこで、従前から実施しているワカメの素材特性に関する調査に加え、適切な加工条件の抽出に係る調査研究をあらためて実施し、県漁連・各地漁協による品質管理指導に資する技術的知見を得ることを目的とする。
本課題では、品質保持に影響が大きい塩漬工程の処理条件等に関する知見を整理することを目的として、従来法(塩絡め塩蔵)と高速法(塩漬装置による塩蔵)の塩漬け特性について検証を行い、また、飽和塩水型塩漬装置を使用する生産者において散見される塩甘製品の発生原因について明確にするため、装置付属のマニュアル条件下での複数回・連続使用に伴う品質(塩漬け状態)の推移についての知見を得たので報告する。
5-(2)- ④飽和塩水型塩漬装置に適する網袋と推奨使用条件の指定 (利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p111-115
養殖ワカメ生産の湯通し塩蔵加工については、従前より県漁連による製造要領での明示ほか、加工研修等における調査研究成果の提示等によって周知されてきたが、震災後は、加工環境の変化に応じた加工条件の管理指導が十分に行えていない状況があり、加工条件に起因する製品出荷後の品質変化(保存性に起因するクレーム)の増加が懸念される。そこで、従前から実施しているワカメの素材特性に関する調査に加え、適切な加工条件の抽出に係る調査研究をあらためて実施し、県漁連・各地漁協による品質管理指導に資する技術的知見を得ることを目的とする。
本課題では、前項、研究課題(2)-3 の実施で明らかにしたワカメ湯通し塩蔵加工における塩漬け処理方法の特性に関する知見、および、本研究課題において実施する補足的な検討を基に、ワカメ湯通し塩蔵加工に用いられる飽和塩水型塩漬装置の推奨使用条件を新たに提示することを目的とし、品質に優れた三陸産湯通し塩蔵ワカメ製品の安定的な流通の促進を図る。
6.産地ならではの加工技術開発による水産加工業の支援
6-(1)県産水産物を用いた高付加価値型食品製造技術開発 (利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p116-117
高齢者に多い嚥下困難者を対象とした食品の開発に向けて、ソフト感を得るための加工素材開発を行う。
6-(2)通電加熱技術の実用化研究 (利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p118-119
生食用魚介類であるイクラの保存性向上のため、温度制御能に優れた通電加熱技術により、加熱変性や品質低下を起こさず最大限殺菌効果が得られるように、加熱処理条件の検討を行う。
6-(3)短期蓄養による漁獲物の付加価値向上技術の開発(ウニ・サバ等)(利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p120-121
ウニの美味しい食べ頃の出荷期間を、需要の高まる9 月上旬まで2 週間延長(18%延長)できる蓄養条件を解明する。
7.被災以降の漁場環境を把握し、安全・安心な養殖生産を促進
7-(1)貝毒原因プランクトン出現状況モニタリング体制の整備(漁場保全部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p122-128
本県では、チリ地震津波(昭和35 年)の翌年に、大船渡湾産アカザラガイにより死者1名を含む20 人の麻痺性貝毒による中毒事故が起きている。この教訓を踏まえ中毒未然防止のため、貝毒監視体制が整備されてきたが、貝類養殖の経営安定を図るため、技術の進歩に応じた対応が求められている。
そこで、近年、貝毒原因プランクトンの増殖予測指標を用いた毒化予測の研究や貝毒簡易測定法の開発が進められていることから、原因プランクトン研究と併せて簡易測定法を活用した毒化予測技術を開発し、貝類の計画的生産に資する。
さらに、毒化予測技術の確立と普及により、貝毒による食中毒の未然防止と養殖業への影響を緩和するものである。
7-(2)主要湾の津波以降の漁場環境の把握 (漁場保全部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p129-131
釜石湾及び大船渡湾は、岩手県漁場環境保全方針に基づく重点監視水域に指定され、水産生物にとって良好な漁場環境を維持するため、水質・底質、底生生物を調査し、漁場環境の長期的な変化を監視してきている。
平成23 年3月11 日に発生した東日本大震災による津波で、両湾とも陸域から相当量の有機物等の流入、海底地形の変化・海底泥のかく乱等が生じたことで、湾内の養殖漁場環境が大きく変化した。また、両湾に設置された湾口防波堤の復旧工事に伴い、湾内の養殖漁場環境は今後も変化することが予想される。そこで、水質・底質の調査を継続して行い、養殖業の再開に取り組む漁業関係者への情報提供により養殖復興に資することを目的とする。
7-(3)養殖漁場の底質環境評価(漁場保全部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p132-135
久慈湾の底質環境を評価し、適正な漁場利用および増養殖業の振興に資する。
7-(4)カキのノロウイルス汚染リスク低減に関する研究(漁場保全部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p136-137
ノロウイルス(以下、「NV」)による食中毒は、食中毒原因のトップとされる。その感染原因の一つとして、NVに汚染されたマガキ等二枚貝類の生食、あるいは不十分な加熱調理後の摂食が挙げられ、マガキ(以下、「カキ」)の生産段階におけるNVに由来するリスク管理が求められている。
このため、カキ養殖漁場におけるNVの分布実態を把握するとともに、カキ養殖漁場におけるNVの汚染予測手法を開発し、NVによるカキの汚染リスク低減のための漁場管理方法を提示することを目的とする。
7-(5)養殖漁場の環境収容力に関する研究(漁場保全部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p138-141
東日本大震災によって壊滅的な被害を受けた二枚貝養殖の適切な復興を進めるため、良質の二枚貝を持続的に生産できる漁場利用の在り方を提示するため、大船渡湾を対象としてマガキ養殖場における環境や餌料プランクトンの生産力、マガキの成長状況等を把握し、これらの関係解析と評価により対象海域における二枚貝養殖のための環境収容力を明らかにする。
8.東日本大震災津波による本県水産業への影響評価
8-(1)震災後の沖合漁場調査(漁業資源部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p142-145
岩手県の漁船漁業は、地先の多様で豊かな漁業資源を多様な漁法で漁獲することによって営まれてきたが、東日本大震災によって甚大な被害を受けた。今後、なりわいとしての水産業が再生し、復興していくためには、本県地先海域の生産力を最大限生かした多様な漁業の復活が欠かせない。そこで、本研究は、岩手県で行われている漁業の回復過程をモニタリングすることにより、多様で持続的な沿岸漁船漁業の再構築に寄与することを目的とする。
8-(2)ワカメ漁場栄養塩調査 (漁場保全部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p146-147
ワカメの生育に影響を及ぼす栄養塩濃度の変化について、定点を経年調査し、情報を随時提供することで、ワカメ養殖の振興に資する。
9.その他(震災対応ほか)
9-(1)食品用加工機械の無償貸出 (利用加工部)
2013 岩手県水産技術センター年報 p148-149
東日本大震災により被災した本県水産加工業者を対象として、早期再開の一助とするため食品用加工機械業者の協力を受け、包装機械を中心として無償で貸出すものである。