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課題3-中課題1

漁業・漁村のスマートコミュニティ化による災害に強い水産技術体系の実用化・実証研究

  • 研究概要
  • 研究機関:ミツイワ株式会社、株式会社NTTデータ
  • 研究対象地:釜石市漁業協同組合連合会、釜石流通団地水産加工業協同組合

研究の背景・課題

東日本大震災による停電により釜石においては冷蔵庫が1週間停止。情報通信手段がダウンすると共に漁獲水産物に多大な損失が生じた。復興にあたっては、地域に賦存する未利用エネルギーを取り入れ、災害に強く、かつ電気料金が値上げされた中で、エネルギー消費を抑える事により、低コスト化、高収益化を実現し釜石市の水産業復興に寄与する実証研究とする。

また、釜石市スマートコミュニティ基本計画との連携により復興計画の加速化を図る。

研究目的

(1) 省エネ・創エネによるエネルギー消費の削減

小水力、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーを活用した漁村、漁港施設、水産加工施設への配電モデルの開発運営コスト削減、CO2排出の低減釜石市スマートコミュニティ基本計画との連携によりコンパクトなエネルギーインフラとして整備

(2) 分散型エネルギーを活用した地域再生と災害時に強い漁港作り

災害時でも水産業に必要な冷蔵・冷凍設備の電力確保を目指した最先端の自立分散型エネルギー供給システムの構築及び技術実用化・実証研究

台風、高潮、洪水(大雨、大雪)、地震、津波などの災害へ対応

研究目標

(1) 漁港、漁村の製氷・貯氷、冷凍・冷蔵施設、水産加工場の電力需要を四季や気候、水揚量、業務繁忙(入出庫)等の違いなど地域特性を考慮し、年間を通しての電力利用の需給バランスに対応した最先端のスマートコミュニティ作り

(2) 災害の内容、質のケース分けを試み、災害時のリスクモデルを作り様々な漁村、漁港での活用を意識。災害時においても漁村、漁港が日本の食料基地として運営を維持できる仕組みの構築

研究内容

漁村でのエネルギー利用の状況の可視化と低コスト化の推進、漁村に適した発電システムの分析として

  • ① 漁業関連施設のエネルギー利用の可視化と低コスト化研究
  • ② 漁村に適した再生可能エネルギー(小水力、風力、太陽光発電システム)等分散電源を用いた発電システムの分析
  • ③ 地域未利用エネルギー及び再生可能エネルギーの賦存量調査
  • ④ 1年を通じた電力需要の特性把握
  • ⑤ 電力消費データの分析と需要予測ロジックの構築

課題3-個別課題3-1(H24~26年度)

農水資源の上下流連携による小水力発電の漁村における利活用の研究開発

  • 研究概要
  • 研究機関:シーベルインターナショナル株式会社

農水資源としての水エネルギーと低落差で発電可能な小水力発電技術によって、従来のグリッドだけに依存しない非常時にも利用できる自立分散電源を、地域に確保するとともに、平常時における採算性の高い有効な利用モデルの確立を図る目的で実施した。

○研究成果概要

漁業地域においては、港湾付近には水力エネルギーが小さいが、河川上流部やその周辺のふ化場や養魚場のような漁業施設においては、小水力発電の可能性が確認された。

ふ化場と養魚場での発電実証では約0.4kwの安定した発電が行われた。

ふ化場のような地下水を汲み上げて放水する施設では、非常時には小水力発電を利用することができないが、平常時においては発電実証から安定した発電が行われることが確認され、使用する電気料金の削減に貢献することが確認された。

個別課題3-2(H24~26年度)

小型風力発電によるスマートコミュニティシステムの実証研究

  • 研究概要
  • 研究機関:ゼファー株式会社

今回発生した東日本大震災において、漁港施設は8,230億円、養殖施設では738億円の被害が発生した。(農林水産省HPより)これにより地元では『災害に強い漁業・漁村の構築』が強く望まれている。弊社はこの地元ニーズに対して小形風力発電機を主とする自然エネルギーを用い、漁村や漁港施設、水産加工施設等の適したスマートコミュニティ・システムの構築・実証を行う事を目的とする。これにより、一定時間の送電停止や災害発生時に電力を供給し、水産物、水産加工品の被害を減少させると共に、平時には系統電力の使用量の削減を目的に実施した。

○成果概要

実証実験地の水産加工施設の屋上部に風力発電による系統連携システムを構築した。夏季は発電量が小さいなど電力の安定利用には太陽光発電との併用や蓄電池による平準化が必要であった。また、荷捌所に風力発電機+太陽光パネル+蓄電池によるハイブリット独立電源システムを構築。このハイブリットシステムで発電の平準化がなされ利便性、安定性が向上し平常時の系統電力の使用量削減が可能となった。

災害等で系統電力が停電した場合、素早く復旧するたの事業継続性を重視した活用から自家発電システムの導入が必要であるが、再生可能エネルギーによる自家発電設備は、化石燃料による発電機に比べ設備費、燃料費、維持管理費等の経済面で優位であるほか、燃料入手が困難な時に対する安定性、信頼性、運転時の騒音や排気ガスによる環境面においても優位であった。