岩手県水産技術センターArchives -岩手の水産研究、水産業関連機関が連携した、実証研究成果の情報発信サイト-

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課題1-中課題1

三陸サケ回帰率向上のための放流技術の高度化実証研究

  • 研究概要

サケのふ化放流について、我が国では、1970年代以降にいわゆる「回帰率」を把握し、放流事業の効果を確認してきた。

さらに、1977~81年に行われた農林水産技術会議別枠研究「遡河性さけ・ますの大量培養技術の開発」の中の「海中飼育放流技術による稚魚の減耗抑制」研究により、岩手県をフィールドとして開発された適期・適サイズ放流の成果が実用化され、岩手県の放流サケの回帰率は1970年代以前の1%以下から1980~90年代には2.8~5.5%に大幅に向上し、漁獲量は3.5~7.4万トンとなり北海道に次ぐ生産量となった。

しかしながら、2000年代に入ると、放流規模がほぼ同等でありながら回帰率が1.6~2.3%に低下し、漁獲量も3.5万トン以下で低迷。さらに、2010年度の漁獲量は1.8万トン余に低下し、サケ漁業が地域経済を支える重要産業である岩手県にとって一層深刻な事態となった。

2008年度には(独)水産総合研究センターを中心とする研究機関が連携して「サケ資源変動に関する検討」を実施し、サケの回帰率低下の原因について、北太平洋の水温上昇等による生残率低下の可能性を指摘。

さらに、2010年度からは、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「三陸リアス式海岸における放流後のサケ幼稚魚の誘引保育放流技術の開発」により、放流されたサケ稚魚の沿岸域での生残率を高める技術開発に取り組み、5~6月の沿岸滞留期の動物プランクトンの群集組成とサケ稚魚の摂餌の解明、淡水生活から海水生活への生理的変化の解明、沿岸滞留期のサケ稚魚の採集方法の開発が進展した。

ここで得られた成果は、当面は被災したさけ・ますふ化場の種苗生産機能の不足分を補い、将来的にはサケ放流コストを低減する効率化技術として活用することが可能となる。

また、震災後の2011年度には、岩手県におけるサケの漁獲量は8,768トンにとどまっており、震災で被災した稚魚が回帰する4年後の回帰数はさらに減少する懸念が高まっていることから、震災前後の沿岸環境の比較も重要な課題となっている。

そこで、前述した研究開発の実施海域であり、震災前の調査データが得られている岩手県山田湾を実証フィールドとして、以下の研究開発に取り組む。

小課題1-1
三陸地域のサケ稚魚放流適期の把握手法の高度化

投稿日:2013年3月7日

近年のサケの回帰状況は、北海道を含めた太平洋沿岸で低迷する傾向が見られ、特に三陸沿岸の落ち込みが著しいことから、三陸サケの回帰率に影響を及ぼしている環境要因を、過去のデータを精査して抽出する。

また、これまで行われてきた湾内での動物プランクトンのサンプリングと湾内でのサケ稚魚分布の知見から、親潮系大型プランクトンはサケ稚魚の放流後の生残を左右し、降海適期に大きく関わりがあると類推されている。

そこで、これまではネット採集のため間欠的行われていた親潮系プランクトンのモニタリングを連続的に行えるシステムを構築するとともに、動物プランクトンの来遊量を指標とした稚魚の降海適期を把握する技術の高度化を目的とする。

小課題1-2
サケ放流稚魚の初期生残率向上技術の開発

投稿日:2013年3月7日

ふ化場で音響馴致した稚魚を海面給餌生簀に収容して、海水環境での音響と自動給餌による短期間の馴致を行い、網の解放後も給餌筏に飼い付ける「誘引保育放流」を成立させるための音響馴致技術、給餌筏の改良、誘引尾数の推定技術の開発等を行い、放流技術を体系的に完成させるとともに、通常の河川放流等においても放流直後の初期生残率を向上させる技術を開発する。

また山田湾内外において捕獲したサケ幼稚魚ならびに山田湾流入河川に回帰したサケ親魚の耳石解析等により、粗放的放流群、誘引保育放流群等の試験群の有効性や科学的妥当性を評価する。

小課題
サケ粗放的放流手法の開発

投稿日:2013年3月7日

サケ稚魚の放流尾数の追加を可能にするため、孵化場の生産能力に負担をかけない粗放的放流手法(降海適期に稚魚が降海するように卵の発育速度を低コストで調整することが可能な発眼卵放流や無給餌放流等)の技術を開発する。

小課題
市場に水揚げされた海面漁獲サケからの受精卵確保の実証研究(H27終了)

投稿日:2013年3月7日

小課題
比較放流による初期生残率の評価技術の開発(H28統合)

投稿日:2016年4月1日

山田湾内外において捕獲したサケ幼稚魚ならびに山田湾流入河川に回帰したサケ親魚の耳石解析等により、粗放的放流群、誘引保育放流群等の試験群の有効性や科学的妥当性を評価する。

取組状況・成果概要

課題1-中課題2

ワカメ等の大規模海藻養殖の効率化システムの実証研究

  • 研究概要

三陸地域のワカメ養殖は、岩手・宮城の両県で全国生産量の6割以上を占めており、色、つや、厚肉等の特色から高品質ブランドとなっている。

しかし、その生産体系は、零細経営が多く、収穫から加工工程に短期集中する典型的な労働集約型の作業形態となっており、かつ、養殖業者の減少、高齢化が進行している。

さらに、東日本大震災津波により養殖施設を流失し養殖業者の減少が加速されることが懸念されるため、将来にわたって持続的な養殖生産を確保していくために、規模拡大の意欲のあるワカメ養殖経営者については、大規模化により生産量の増大、製品の加工品質の向上、生産コストの削減を、また単独での養殖経営が困難な零細漁家や新規参入者については協業体・共同経営等により、それぞれの技術や資産に応じた持続的な安定収入を得る取組が必要である。

規模拡大を図るためには、生産性のネックとなる工程を機械化・省力化する生産システムの開発が急務であり、ステークホルダーを対象とした調査・分析により加工製造コンセプトを決定し、大規模経営に向けて定置船を活用したワカメ刈り取り装置や塩蔵ワカメの芯抜き装置等の開発を行い、これらを導入した効率的な大規模ワカメ養殖生産システムを構築する。

小課題2-1
大規模ワカメ養殖システムの設計及び実証評価

投稿日:2013年3月7日

ワカメ養殖における刈り取り等の海上作業や塩蔵ボイル加工作業上の課題を明らかにするとともに、ステークホルダーを対象とした調査・分析により消費者や実需者が求める製品規格を把握し、加工製造コンセプトを決定する。その上で、省力化装置や省エネルギー化技術を組み込んだ大規模ワカメ養殖システムの全体プランを作成する。

小課題2-2
大規模ワカメ養殖における省力化・省エネルギー化装置の開発

投稿日:2013年3月7日

大規模ワカメ養殖システムの開発に向け、大型船を利用したワカメ刈り取り装置や、ワカメ自動間引き装置等の開発、及びワカメ加工の省エネルギー化のための運用方法を確定し、実用化マニュアルを作成する。

小課題2-3
コンブ乾燥加工の高度化・省エネルギー化技術の開発

投稿日:2013年3月7日

乾コンブ生産に係わる省エネルギー化を目的に、コンブ乾燥施設に燃油計等の各種センサーを持ち込み、生産効率やエネルギー消費構造を明らかにするとともに、乾燥室内の空気流動、熱移動等に関する数値シミュレーションモデルを開発し、コンブ乾燥工程の省エネ化モデル・運用方法を提案する。コンブ乾燥加工を行う漁業者等が順次導入できるよう効率化マニュアルを作成する。

小課題2-4
ワカメ等の大規模海藻養殖の効率化システムの導入評価

投稿日:2013年3月7日

本プロジェクトの研究成果を経営学視点で評価するために、ワカメ等の大規模海藻養殖システムの構築に向けて技術開発した装置や省エネルギー化へ向けた取組等を導入した漁協や漁家を対象とした調査を実施する。

小課題2-5
沿岸海洋環境への沖合海洋循環の影響の解明と沿岸海洋環境予測システムの開発

投稿日:2013年3月7日

三陸海域の沿岸域は、沖合を流れる親潮と津軽暖流が影響し合い、さらには陸水が複雑に混合することによって、海洋環境の変化が極めて大きく、かつ急激であるという特徴を持つ。

沿岸海洋環境の変化は、沿岸資源やそれを漁獲する沿岸漁業、養殖業に対して、漁場形成の不安定化や養殖ワカメの品質低下といった問題を引き起こすが、その複雑さゆえにメカニズムが解明されていない。

本研究では、栄養塩のモニタリングを実施することにより、沖合の海洋循環によって、岩手県沿岸域に流れ込む海水の栄養塩を含む水質環境が変化するメカニズムの解明に迫る。

このメカニズムを考慮した沿岸海洋環境の統計的予測モデルを開発することにより、漁業者に必要な情報配信を適宜行ない、養殖業を中心とする水産業の低コスト化・高収益化に貢献する。

小課題(H24~25年度)
自動芯抜き装置の開発

投稿日:2016年4月1日

取組状況・成果概要

課題1-中課題3

アワビの緊急増殖技術開発研究

東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波によりアワビ種苗生産施設が全滅し、資源の底上げを目的として行われた種苗放流事業が当面の間実施できなくなった。さらに、天然漁場では大津波による海底攪乱により、震災当時0~1歳の稚貝が特に目立って減少した。これらのことから、これから漁獲加入する年級群が複数年にわたり減少することが予想され、将来的なアワビ資源量の低迷が懸念される。

本課題では、被災したアワビ種苗生産体制の早期復興に際して、従来よりも効率的種苗生産技術を開発し、生産コスト削減効果等を分析したうえで漁協等へ技術移転を行うことを目的とする。

また、攪乱により減少した資源を維持し回復させながら漁業を可能とする資源管理・増殖方策を明らかして資源管理の主体となる漁業団体等に情報発信する。
(※ 平成28年度からは研究課題1「天然資源への影響を軽減した持続的な漁業養殖生産システムの実用化・実証研究」へ統合。中課題として継続。)

課題1-中課題(H24~26)

砂浜域の生産性を有効活用した増殖技術の実証(H26終了)

岩手県では古くから刺し網、延縄、釣り、小型定置網、採貝等の対象となるカレイ類、ソイ類、二枚貝などの種苗放流が行われてきました。

これらの魚種の水揚げ量に対する放流魚の割合は低いもので10%、高いものではほぼ100%を占めるなど、水揚げの増産に貢献していることが明らかになっています。

漁業者からは種苗放流の再開を望む声が多く寄せられていますが、種苗の放流には大規模な飼育施設や多額の費用がかかるのが現状です。

そこで、本課題では、ヒラメ、アサリ、ホシガレイ等を研究対象として、放流用稚魚の飼育コストを縮減する方法や、放流された稚魚や稚貝、あるいは天然発生した稚貝の生き残りを高める方法を開発し、低予算で効率よく漁獲量を向上させることを目的とします。
(※H26終了課題 H24~26に実施)

課題1-中課題(H24~27)

沖合・沿岸海洋環境情報統合システムの実証研究(H28~統合)

  • 研究概要

三陸沖合域は親潮と黒潮がぶつかり合うことにより生産力が高く、世界の三大漁場の一つにかぞえられている。

近年、この海域の生産構造の研究が進展し、マイワシの資源変動メカニズム、いわゆる魚種交替の発生メカニズムのように、地球規模の気象変動が三陸沖の物理環境を変化させ、マイワシ等の資源変動を引き起こす過程が解明されつつある。

一方、同じ三陸海域の沿岸域は、沖合を流れる親潮と津軽暖流が影響し合い、さらには陸水が複雑に混合することによって、それぞれの強度と流れの方向が変化するため、海洋環境の変化が極めて大きく、かつ急激であるという特徴を持つ。

たとえば、岩手県沿岸の水温変化をみると、冬季の最低水温や、夏季の最高水温が高い年と低い年では約5℃も異なる。

秋季の水温降下や春季の水温上昇も、急激な年と緩やかな年で変化が激しい。

このような沿岸海洋環境の変化は、沿岸資源やそれを漁獲する沿岸漁業、養殖業に対して、漁場形成の不安定化や養殖ワカメの品質低下といった問題を引き起こすが、その複雑さゆえにメカニズムが解明されていない。

本研究では、津波被害を受けた岩手県沿岸域の環境観測網を効率的に再構築するとともに、沖合海洋環境の情報と統合した形で沿岸海洋環境の状態を把握し、情報発信するシステムを構築し、実証試験することを目的とする。
(※H27一部終了課題:海洋循環の影響の解明、海洋環境予測システムは中課題1、2の一部として継続)

小課題
海洋環境モニタリング網の再構築

投稿日:2013年3月7日

沿岸漁業や養殖業に大きく影響する海洋環境を把握するため、自動水温観測機器の設置により、津波によって被害を受けた岩手県沿岸域のモニタリング網を再構築する。得られたデータは、1-2の沿岸海洋環境予測システム開発の取組へ提供する。

小課題
沿岸海洋環境への沖合海洋循環の影響の解明と沿岸海洋環境予測システムの開発

投稿日:2013年3月7日

三陸海域の沿岸域は、沖合を流れる親潮と津軽暖流が影響し合い、さらには陸水が複雑に混合することによって、海洋環境の変化が極めて大きく、かつ急激であるという特徴を持つ。

沿岸海洋環境の変化は、沿岸資源やそれを漁獲する沿岸漁業、養殖業に対して、漁場形成の不安定化や養殖ワカメの品質低下といった問題を引き起こすが、その複雑さゆえにメカニズムが解明されていない。

本研究では、栄養塩のモニタリングを実施することにより、沖合の海洋循環によって、岩手県沿岸域に流れ込む海水の栄養塩を含む水質環境が変化するメカニズムの解明に迫る。

このメカニズムを考慮した沿岸海洋環境の統計的予測モデルを開発することにより、漁業者に必要な情報配信を適宜行ない、養殖業を中心とする水産業の低コスト化・高収益化に貢献する。
(※H28年度からは中課題2の小課題として継続)

小課題
定置網入網予測情報配信システムの開発

投稿日:2013年3月7日

定置網の周辺海域の微細な海洋構造を解明するために、人工衛星や航空機による水温・水色計及び入網レコーダ等で入網に関係する海況をモニタリングし、情報システム化を図る。

衛星・航空機・船舶等を総合的に利用した定置網への入網する海況条件の解明と予測手法を確立する。

この予測手法を用いて、定置網の入網予測情報を提供する情報ネットワークを整備し、海洋環境情報と連動させて、定期的な入網情報の配信を可能とするシステムを構築する。このことによって定置網漁業の収益率の向上に寄与する。