水産研究成果情報(平成21-25年)

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平成21年3月 -No.45- 宿戸アワビ養殖場におけるナマコ養殖試験結果

ねらい

ナマコの栽培漁業を進めていくには、人工種苗量産技術開発とともに、放流技術の開発や種苗放流の効果を把握することが必要です。そこで、環境は自然に近く、一般漁場と隔離できる宿戸アワビ養殖場にナマコ人工種苗を放流して、その成長や回収率等について調査しました。

成果の特徴

平成19年6月に大型群(標準体長52.0mm)と小型群(標準体長31.5mm)を別の養殖池に放流しました。放流後、体長及び体重とも順調に成長しましたが、10月には大型群と小型群の体長に差がみられなくなり、その後の成長は同じ傾向を示しました。成長の面からでは、30mmサイズでも放流種苗として有効であることが示唆されました(図1)。また、養殖1年後の回収率は大型群で67%、小型群で35%と2倍近い差があり(表1)、放流種苗の大きさと回収率に関係があることが示唆されました。今後、放流密度や時期、底質などのデータを収集し、ナマコ人工種苗放流方法の開発に取り組んでいきます。

成果の活用面

今後、漁業者がナマコ放流事業に取り組む場合、この試験結果を用いて放流効果を高められます。

平成21年3月 -No.44- マナマコ種苗の量産技術開発について

ねらい

中国で中長期的に安定した需要が見込まれるナマコを、アワビ、ウニに続く磯資源として展開するため、人工種苗の量産技術を開発し、(社)岩手県栽培漁業協会へ技術移転することを目的に、平成19年度量産試験で明らかとなった課題の解決を図る。

成果の特徴

1.昨年からの継続飼育群を屋外10t水槽で潤沢な付着珪藻類と住み場を確保する「親仕立て」をしたことにより、今年度天然採捕群よりも良好な放卵が確認され、安定した受精卵の確保が図られた。
2.採苗数週間後の稚ナマコが、雑食性のシオダマリミジンコにより食害され生残率が大きく低下することを確認、珪藻の有無により食害が軽度になる可能性も示唆された。
3.昨年度(40.4mm・235千個生産)に引き続き、目標とする30mm・10万個生産は達成する見込み。

成果の活用面

1.シオダマリミジンコの繁殖条件を考慮したフィルターの経済的・効果的な使用方法や、初期餌料の改良による稚ナマコの成長促進を図り、薬品を使用することなくシオダマリミジンコと共存した種苗生産方法を検討する。
2.(社)岩手県栽培漁業協会の新たな事業対象種として、開発したナマコ量産技術の移転を図る。
3.量産技術開発で得られた種苗を県内数カ所に集中放流し、漁協と連携して経済効果(成長・生残・回収率等)を検証する。

平成21年3月 -No.43- 岩手県定置網におけるサバ類の漁獲動向について

ねらい

近年夏季の定置網漁業において重要度が高まっているサバ類について、漁獲動向の整理と年齢解析を行い、近年の好漁要因を把握する。

成果の特徴

サバ類の水揚量は平成(以下元号略)16年以降、1万5千トンから2万トンの間で好調に推移した。また、水揚額は15年までは2億円前後(夏網のうち、3割前後)だったが、20年には13億円(同、6割)まで増加した(右上図)。
・盛漁月は経年的に早期化する傾向にあった(15~16年…9月、17~18年…8月、19~20年…7月)。また、19、20年は、盛漁期が短期集中化する傾向にあった。
・18年以降の好漁は、16年、19年生まれ(卓越年級群)に支えられたと推察できた。
・16、19年生まれ以外の資源加入量は少なく、16年生まれの生残も少ないと推定されるため、21年漁期は19年生まれの2歳魚が主な漁獲対象と見込まれた。

成果の活用面

水産庁・水産総合研究センターが発表する長期漁海況予報とあわせて、今後のサバ類の来遊予想などに活用できる。

平成21年3月 -No.42- イサダの加工原料特性と原料調整方法

ねらい

イサダは養殖魚類等の餌料として県外へ出荷されていますが、当センターでは付加価値向上の観点から食用化を図る必要があると考えました。しかし、イサダには食用資源として利用するうえでの問題点もいくつかあることから、この点を踏まえた原料の調整方法について紹介します。

成果の特徴

イサダは、加工原料として利用するためには、鮮度落ちが早い、潰れやすい、黒変しやすい、水の接触や凍結により蛋白質が変性しやすい、などの問題点があります。加工原料として安定的に利用するためには、この点を踏まえた原料調整(前処理)が必要です。この問題点を踏まえた対策は、1漁獲後は、蓋付きの容器に入れ、高さ20cm以内に積み重ねて管理する、2漁獲後8時間以内を目安に原料調整を行う、3原料調整の方法は、凍結貯蔵前に、ボイルするか、ミンチにして蛋白質の変性防止剤等を加える、というものです。ボイル凍結品は甘酢漬け、佃煮、乾燥品などに、ミンチ凍結品は魚肉ハンバーグ、練り製品、惣菜等の原材料として利用できます。特に、ミンチ凍結品は、アスタキサンチン(赤色色素成分)を多く含んでいることから、サケハンバーグの増量材として使うと、肉の焼き上がりが赤色になり見た目も良くなります。

成果の活用面

試験結果等の知見を踏まえて、食用化に向けた漁業者や水産加工業者の取り組みに対して技術指導等の支援を行っていきます。

平成20年4月 -No.41- 岩手県海域における温暖化の現状について

ねらい

漁業指導調査船「岩手丸」を用いて実施している定線海洋観測結果から、岩手県地先の長期的な水温変動傾向を明らかにする。

成果の特徴

過去42年間の定線海洋観測結果によると、表面および100m深において統計的に有意な水温の上昇傾向は認められず、沖側の定点を中心として低下傾向が確認された。また、統計的に有意ではないものの、県北部沿岸および県南部沿岸の表面と県北部沿岸の100m深で僅かな水温上昇傾向が見られた。

成果の活用面

沖側の定点における水温低下傾向が温暖化進行の途中経過であることも考えられることから、今後も定線観測を継続して実施し、本県海域における温暖化の進行状況を見守ることとする。

平成20年3月 -No.40- マナマコ種苗の量産技術開発について

ねらい

近年価格が急騰したナマコを、アワビ、ウニに続く磯資源として展開する事を目指し、天然資源の有効活用と併せ、人工種苗の量産技術を開発しつつ試験放流による放流事業の経済性を検証するものである。

成果の特徴

1.基本的にウニ種苗生産技術を応用できる事を証明
2.2ヶ年計画の初年度として、目標の30mm・10万個生産を達成見込み
3.量産にあたっての課題の明確化1安定した受精卵確保及び孵化率向上2採苗稚ナマコの初期生残率向上3著しい成長差をふまえた棄却サイズの見極め4付着物をふまえた効率的な選別システムの開発5配合餌料にかかるコストと作業量の低減

成果の活用面

1.技術開発過程で得られた種苗を県内数カ所に集中放流し、成長・生残・回収率等を検証し、大量生産・放流への移行の可否判断材料とする。
2.(社)岩手県栽培漁業協会の新たな事業対象種として、協会への技術移転を図る。

平成20年3月 -No.39- 東北太平洋海域におけるサワラ漁獲量と水温の関連性

ねらい

近年、東北太平洋海域で漁獲が急増しているサワラの漁獲動向を把握し、水温との関連性を検討することにより、当該海域へのサワラ来遊の原因を探る。

成果の特徴

東北太平洋海域におけるサワラ漁獲量の急激な増加は、秋については、津軽海峡を抜けて来遊した東シナ海系群の資源による可能性が高いと考えられた。日本近海の海況変動に伴い、サワラの回遊経路が変化していると考えられる。

成果の活用面

現在、サワラの漁獲は定置網に限られているが、今後もサワラの来遊が続くようであれば、曳釣り等の導入により有効利用方法の幅を広げることが可能になる。

平成20年3月 -No.38- 生ウニの除菌方法の検討(中間報告)

ねらい

生ウニは鮮度低下が早いので漁業者、漁協、加工業者が生ウニのむき身の加工・出荷するに当たっては、衛生管理に充分注意を払う必要があります。今回は、衛生管理状況の判断指標とされている大腸菌群数と生ウニの日持ちに影響を与える低温細菌数について、菌数を減少させる方法を検討し、参考となる知見が得られましたので紹介します。

成果の特徴

水温4℃の3%塩水200mlに酢酸を濃度0.01%、0.05%、0.1%になるように加え、更にウニ生殖巣20gを投入し、15分、30分、60分浸漬しました。浸漬中も4℃の恒温器に保管し細菌検査を行ったところ、下表のとおり、大腸菌群数は、酢酸濃度0.01%の溶液に30分間浸漬すると、ほぼ100%減少し、また、低温細菌も、酢酸濃度0.05%、0.1%の溶液に60分間浸漬すると、80%以上減少しました。以上のことから、現状のウニむき身の加工や集荷の作業行程の中にウニ生殖巣を酢酸溶液に浸す行程を導入することで、衛生管理や商品の日持ちの向上が期待できるものと考えています。なお、生殖腺に酸味感は全く感じられませんでした。

成果の活用面

生ウニに限らず、塩ウニの加工にも活用できると思われますので、今後は特に低温細菌の減少が日持ち向上に効果があるかを確認する予定です。

平成19年10月 -No.37- 船外機船で使用するワカメ刈り取り装置の開発

ねらい

船外機船を使用してのワカメ刈り取り作業は、ほとんど手作業で行っています。船外機船で使用できる刈り取り装置を開発することで、楽に刈り取りできるようにします。

成果の特徴

船外機船を使用してのワカメ刈り取り作業は、ほとんど手作業で行っています。船外機船で使用できる刈り取り装置を開発することで、楽に刈り取りできるようにします。なお、自動刈り取り刃を使わず、手で刈る支援装置としても使用できます。漁業者は桁送り機の横に立ったまま、楽な姿勢で作業でき、作業時間が短縮しました。更に海中から養殖桁を引き上げる作業が減り、労働も軽減できました。現在、釜石市内の石村工業(株)で販売しています。電動モーターを除いたシステム1セット300,000円で市販しています。

成果の活用面

ワカメ養殖漁家を対象とした勉強会などで紹介しています。船外機船を使用するワカメ養殖漁家の海上作業を軽減できました。

平成19年5月 -No.36- マツモ種苗生産について

ねらい

天然採苗が中断しているマツモ養殖について、養殖漁業者の間に根強い再開要望があるため、採苗率が安定しない天然種苗生産体制の再構築と人工種苗生産技術の確立を図る。

成果の特徴

1.洋野町地先で実施した天然種苗生産は処理、無処理とも、座の生長と直立体の形成は良好で、その差異はなく、県内に養殖試験用種苗として全て配布した。
2.人工種苗生産に使用する糸素材として、天然繊維と化学繊維を比較すると、天然繊維上の座の生長が良好であった。

成果の活用面

養殖用種苗生産の安定化が図られることによって、養殖の生産増大が期待される。

平成19年5月 -No.35- マボヤ人工種苗生産試験について

ねらい

近年、養殖用種苗不足の事態が発生しており、県内産種苗の供給が求められていることから、人工種苗生産技術の確立を図る。

成果の特徴

1.「流水・自然日長下」で15個体を飼育、観察し、水温約10℃に達した時に産卵のピークがあった。(図1)
2.産卵誘発(光・温度処理)を行ない、特定日に多くの受精卵を確実に得ることができた。(図2)
3.卵・幼生飼育時における水温及び換水方法の違いによる採苗率を調べた。(図3)

成果の活用面

安定した種苗供給体制を整備し、計画的な養殖生産を図る。

平成19年3月 -No.34- アワビ・ウニの餌料対策について

ねらい

アワビ・ウニの餌料海藻を安定して生育させるための漁場管理手法の確立を目的として、ウニ除去による海藻群落造成を試みる。

成果の特徴

1.漁場(50m×50m)からのウニ除去により、コンブやワカメ等の餌料海藻群落の造成が実証できた(図1~図4)。
2.ウニ類の生息量の推移から見たウニ除去効果の持続期間は、浅場(田老地区大規模増殖場の離岸潜堤の岸側)でおよそ10ヶ月、深場(同、沖側)で19ヶ月超であった(図5~図6)。
3.ウニ除去処理は、その漁場に生息するウニ類の生殖巣指数の向上にも有効であった(図7)。

成果の活用面

アワビ、ウニの主要餌料であり、これらの漁獲量に大きな影響をあたえる大型海藻を漁場に安定して生育させることが可能となる。これにより、アワビ、ウニの漁獲量の安定・増大が期待される。

平成17年11月 -No.33- 岩手県沖合におけるマダラの加入特性

ねらい

岩手県では、マダラは沿岸漁船漁業の重要な対象資源となっている。一方で、本海域のマダラ資源は周期的な増減を繰り返していることが指摘されている。資源管理を行うためには、資源変動を考慮に入れた管理手法を見いだす必要があるが、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで、本研究は岩手県沖合におけるマダラの加入特性を明らかにすることを目的として行った。

成果の特徴

岩手県沖合に分布するマダラについて、加入の特性を推定した結果、加入資源は1998年級群と2002年級群が高い水準にあると推定された。体サイズとの比較から、本海域のマダラ資源は加入水準に呼応した密度依存的な成長特性を示すと考えられた。また、加入資源水準は、親魚量水準だけでなく、浮遊期間の2~5月における沿岸域の水温変動にも依存して変動することが示唆された。

成果の活用面

親魚量水準と水温の情報に基づいた加入資源水準の推定を行うことにより、本海域における漁況予測への活用が期待される。今後、マダラの初期生活史における水温と生残に関する知見の集積が期待される。

平成17年11月 -No.32- アイナメ活魚化における産地構造問題

ねらい

岩手県では、アイナメは沿岸域における重要な漁業資源となっており、刺網や延縄によって年間120~150㌧漁獲されている。アイナメの小型魚は中・大型魚の概ね半値で取り引きされ、さらに鮮魚は活魚の概ね半値で取り引きされていた。また、アイナメ市場は非常に強固な需要で成立していることが明らかとなっている。これらのことから活魚化の推進は重要であり、H16年度は、生産現場における活魚化の課題について検討した。

成果の特徴

次の1~4の悪循環によって、岩手県産アイナメの(真の)活魚化の進展は阻害され、付加価値を半減化していることが分かった。
1.岩手県は活魚システムが不整備、2.このため良質の活魚アイナメが水揚げされなくなり、3.高価格が実現しないため、漁業生産者も活魚化に対する努力や技術向上を蔑ろにしてきた。4.活魚が少ないので、活魚システムが構築されない。

成果の活用面

これらのような課題を解決すべく、ある特定地区の漁業生産者・漁協及び漁連・県庁ともに実践的課題解決に向けて試験を行っている。その結果を基にして、普及員等を通じて他地区に普及を図る予定である。

平成17年1月 -No.31- 岩手県におけるアイナメの資源管理手法の開発

ねらい

近年、アイナメの漁獲量は減少傾向にあるため、効果的な資源管理の実践が望まれてきている。そこで、本研究は、岩手県におけるアイナメ資源の動向を明らかにし、漁業実態を考慮に入れた効果的な資源管理手法を開発して漁業者等に提案することをとした。

成果の特徴

水揚げデータと体長組成データを用いて岩手県におけるアイナメの資源量を推定し、最も効果的な資源管理手法を検討した。いくつかの管理手法の下で、資源尾数、漁獲量及び水揚げ金額の将来予測を行った結果、尾叉長25cmと30cm未満魚再放流では資源尾数の増加が期待できるが、漁獲量と水揚げ金額を考慮に入れた場合、尾叉長25cm未満魚再放流が最も効果が高いと推定された。

成果の活用面

本成果に基づいて、平成16年度中に資源管理指針が作成され、平成17年度から漁業者等による資源管理型漁業実践に向けた具体的な協議が行われる。

平成16年10月 -No.30- 岩手県産イワガキの食品特性について

ねらい

イワガキは新規有用資源として関心が高まっているが、本県産イワガキについては成分特性等の基礎的知見が少ないのが現状である。県産イワガキの色調、一般成分、グリコーゲンおよび呈味に関与する遊離アミノ酸などの時期別変化を分析し、さらに官能検査による評価を行うことにより、本種の生鮮出荷に関する特性を明らかにすることを目的として実施した。

成果の特徴

生殖腺の成熟に伴う官能評価、色調、一般成分および遊離アミノ酸の変化が認められ、本県では晩夏から初秋にかけてイワガキの旬と判断された。グリコーゲンと旨味評価の関係に比べ、生殖腺の発達度合いを示す生殖腺指数と旨味評価の相関性が高かった。一般にカキのおいしさはグリコーゲンの多寡によって論ぜられるが、本調査結果によると生殖腺の発達度合いが味の評価に影響している可能性が高いことが示唆された。

成果の活用面

平成16年10月 -No.29- 養殖カキのノロウイルス汚染実態について

ねらい

生食用カキのノロウイルス汚染については不明な点が多く、養殖漁場でのカキの汚染状態について検討する。

成果の特徴

ノロウイルスの汚染はカキの個体差による影響、養殖漁場内でも汚染に差があるほか、年や季節によっても差があることが推測された。またノロウイルスに汚染されやすい海域ヘカキを移動させた結果、1日後には陽性検体が検出された例もあった。

成果の活用面

すぐに活用できる成果ではないが、安全に出荷するための自主検査方法の検討や、出荷自粛再開基準の検討につながるものと思われる。

平成16年10月 -No.28- ウニの身の色を左右する要因について

ねらい

ウニの商品価値は「身の色」によって左右される。商品価値の高いウニを生産するため、身の色に影響を与える要因を明らかにする。

成果の特徴

ウニの身の色は、従来、餌料環境に影響されることが知られていたが、年齢にも影響され、高齢になると色が悪くなる傾向があることを明らかにした。

成果の活用面

商品価値の高いウニを生産するため、高齢のウニを漁場に残さない、効率的な漁獲を提案している。

平成16年10月 -No.27- 海況予測技術の開発

ねらい

1.客観的で精度の高い海況予測技術を開発し、安定した海況予測を実施するとともに、サンマ・スルメイカ等回遊魚の漁況予測に資する。
2.漁業への衛星画像の利用を推進する。

成果の特徴

1.過去の海洋観測データから統計的手法(自己回帰モデル)により客観的な水温予測を行うことができたが、海洋観測実施月の1ヶ月後を予測した場合の誤差は±2℃程度であり、改良が必要である。
2.衛星画像提供システム「新水産情報システム」により、毎日の海況図をインターネット、FAXで提供している。

成果の活用面

1.安定した客観的な海況予測に基づいた漁況予測が期待される。
2.準リアルタイムに海況図を提供することによる漁業の省力化、省エネルギー化への寄与が期待される。

平成16年10月 -No.26- 海外からのムール貝(ムラサキイガイ)養殖技術の導入

ねらい

海外で行われているソッキングネットを利用した垂下式のムール貝養殖技術を本県に導入し、日本初の本格的なムール貝養殖を行う。

成果の特徴

1養殖桁に付着した稚貝を種苗として有効利用できることが確認された。また、採苗ロープを垂下することにより効率的に種苗を確保できることが確認された。28月~9月にソッキングネットを用いて種苗(2cm)を適正な密度で養殖ロープに再付着させると、1年間の垂下養殖で出荷サイズ(6~8cm)まで成長することが確認された(写真1,2,図1)。

成果の活用面

当センターの指導により一部の漁協で養殖試験が行われている。

平成年10月 -No.25- 岩手県産アワビ価格の形成要因

ねらい

アワビの価格形成要因を明らかにし、生産方針に資する。

成果の特徴

1.国産価格と岩手県産価格で、1990年前後に大きな価格差が生じているが(図1)、これは国内シェアに占める岩手県(三陸)のシェアが縮小したためである(図2)。この要因の1点目は年末需要を三陸が担っているためである。2点目は岩手県(三陸)が乾鮑の製造(輸出)を担っているためである。つまり、岩手県(三陸)産アワビは、国内のその他の地域で代替できない特殊な需要があるため、前述のような価格差を生じさせていた。
2.図3、4から輸入アワビと国産アワビの代替関係は強くないと考えられた。輸入アワビは、ここ数年一部の国産品の代替として利用され始めているが、冷凍・冷蔵及び缶詰が多く、加熱調理の原材料が主であることから、国産の主な流通形態である活貝流通や生食消費とは差別化できている。
3.近年のアワビ需要動向として、中国(華僑、華人が住むアジア諸国)の目覚ましい経済発展に伴い、アワビ(乾鮑)需要が増加し、日本を中心に世界からアワビが流入している。一方、これまで世界需給で冠たる地位を形成してきた日本であるが、日本のアワビ需要(購買力)が低下しており、中国が日本の座を奪う勢力までに成長しつつある。

成果の活用面

民間加工場、漁業系統団体(漁協自営加工場)、行政のアワビ生産、販売対策に利用する。

平成16年10月 -No.24- ホタテガイ地場採苗の不振要因の解明とその対策

ねらい

ホタテガイ地場採苗において、2~3年に1度発生する採苗不振について、原因と対策を検討し、安定生産技術を確立する。

成果の特徴

1.稚貝の付着は5月下旬頃にピークを迎えるのが、6月下旬以降に遅れた場合に採苗不振は顕著である。これは、採苗器の投入と稚貝の付着の時期とのずれが要因であると考えられた。
2.対策としては、採苗器の適期投入が重要であり、その適期の推定には試験採苗器による付着稚貝調査の実施が最も有効であることを確認した。

成果の活用面

有効な調査体制を平成13年に確立し、地場採苗の安定化が図られた。

平成16年10月 -No.23- 県内主要内湾における有機スズ化合物による内分泌撹乱作用の実態(イボニシの雌の雄性化現象)

ねらい

本県内湾におけるイボニシの雌の雄性化現象の実態を明らかにする。

成果の特徴

地点別の雄性化率とRPLIndex(雌の平均ペニス長/雄の平均ペニス長×100)を明らかにした。

成果の活用面

有機スズ化合物濃度は今後低減していくことが予測されることから、将来同様の調査を実施することにより生物への影響がどのように変化したのか検証できる。

平成16年10月 -No.22- サクラマス資源造成技術の開発

ねらい

サクラマス資源の増大を図るため、漁獲実態の把握、回帰性の高い幼魚生産・放流技術の確立、並びに放流幼魚の移動・分布特性等を明らかにする。

成果の特徴

1.漁獲量は、平成11年以降減少傾向であったが、15年度に急増した。
2.海面ではほとんど春に漁獲されるのに対し、河川では秋にも漁獲される。
3.回帰率は向上していない。
4.放流魚の約50%がスモルトになっていたものと考えられ、その盛期は、概ね3月下旬から4月上旬となっている。
5.安家川で生産した幼魚は、推定値で、4~6割程度が降海していると考えられ、本県の地理的条件からすると概ね良好な成績である。
6.降海した幼魚の多くは短期間に襟裳岬近海まで北上している。冬季には噴火湾から津軽海峡の近海付近に集まると考えられている。

成果の活用面

現時点での本研究の成果の活用は、スモルト化率の高い幼魚生産技術に限られる。今後、経費のかからない技術が開発され回帰率が向上すれば、サクラマスの種苗生産放流事業への活用が期待さる。

平成16年10月 -No.21- 放流アワビの回収状況について

ねらい

アワビの鉤獲り漁法と潜水漁法の、2つの異なる漁法による人工種苗の回収状況を把握し、回収率の向上を図る。

成果の特徴

1.吉浜湾(鉤獲り漁法)における放流貝の累積回収率は、放流後5年以上経過している平成3~平成9年放流群は6.03~12.09%であった。
2.種市南漁協宿戸地先(潜水漁法)の前浜漁場における放流貝の累積回収率は、平成15年度現在で放流後5年以上経過している平成5~平成9年放流群は10.63~28.90%と、鉤獲り漁法よりも高い回収率を示した。

成果の活用面

回収率が低い要因を検討し、効率よく放流種苗を回収するための手法について普及する。

平成16年10月 -No.20- トリーメータによる品質評価手法の開発

ねらい

鮮度計トリーメータの有効性を検証し、現場での実用化に向けた普及を行う。

成果の特徴

県内で漁獲されるサバ、サンマ、サケについてモデル的に鮮度低下試験を行い、サバ、サンマについては想定される流通期間において計測値の有効性が示された。

成果の活用面

食の安全・安心に関して、消費者への具体的数値による情報提供が期待される。

平成16年3月 -No.19- 大槌湾における物質循環モデルの構築

ねらい

岩手県の内湾漁場の一部では、長年にわたるホタテガイやカキなどの養殖業行使によって海底に有機物の堆積が進行し、夏季には貧酸素水の発生がみられる。これらの漁場を今後も永続的に活用していくためには、従来までの水産生物の生産・成長を中心とした環境収容力に加え、海域の自浄能力にも配慮した環境収容力モデルを構築する必要がある。本研究は大槌湾を対象とし、基礎生産、水産生物による利用、海底への有機物負荷、流向流速等の実態を明らかにし、これらのデータを用いて構築した物質循環モデルから、海域の自浄能力に焦点を当てた環境収容力モデルへと発展させることを目的とした。

成果の特徴

大槌湾における物質循環について実態調査を行い、その結果をもとに大槌湾内で養殖されるワカメ、カキ、ホタテを含む「3次元物理-生物結合モデル」(物質循環モデル)を構築した。本モデルは大槌湾を400mの格子で区切り、物理モデルで大槌湾の潮汐、海面変動、水温変化などの環境の変化、生態系モデルで生物による窒素および有機物の取り込みと排出を再現することができる。

成果の活用面

本モデルを実際に活用するためには今後も改良が必要であるが、完成した際にはコンピュータ上のシミュレーションにより、貝類養殖に最も適した養殖区画の場所、湾内が富栄養化した場合の環境への影響などについて事前に評価することができる。具体的データ上図a.のようにクロロフィル-a量や栄養塩類の濃度、溶存酸素濃度等について計算し、湾内の分布等を再現することができる。また、b.のようにコンピュータ上で養殖生物の量を増やすことなども可能であるため、貝類養殖に最も適した養殖区画の場所や養殖量などを予測し、評価することができる。

平成16年3月 -No.18- 平成15年度マツモ人工種苗養殖試験

ねらい

マツモ人工種苗生産技術の開発によりマツモ養殖の普及を図り、マツモ生産量の増大を目指す。

成果の特徴

陸上水槽を用いたマツモ養殖用人工種苗生産技術を開発した。岩手県栽培漁業協会種市事業所において生産した人工種苗を用いて養殖試験を実施し、養殖ロープ1m当たり200~300gの収量が得られた。

成果の活用面

人工種苗を用いた養殖技術の普及を図り、岩手県の特産品であるマツモの生産量増大を目指す。具体的データ岩手県栽培漁業協会種市事業所において試験採苗した約5,000mの人工種苗を用いて、県内4地区で養殖試験を実施した。10月上旬に巻き込み・沖出して養成した結果、生育状況は地区によってバラツキが大きかったが、生育が最も良好な所では釜石湾では1月下旬に施設1m当たり200g、田老では3月上旬に施設1m当たり300gのマツモが収穫された。。写真マツモ生育状況(左:釜石湾1月27日,右:田老3月2日)今後は、採苗時の遊走子付け密度や、培養水槽への採苗器設置方法など種苗生産技術について詳細に検討するとともに、養殖施設の設置方法や沖出し後の管理方法等養殖技術についてもさらに検討することとしている。

平成16年3月 -No.17- ワカメ流通の構造的問題

ねらい

ワカメ商品の改善、PR戦略に資する。

成果の特徴

1.消費者は、ワカメを購入する際、三陸産地ブランドを非常に高く評価している。(表1)しかしながら産地ブランドを前面に出したパッケージはほとんどなかった。
2.産地別湯通し塩蔵ワカメを、産地名を伏せて消費者に試食してもらい、購入しても良い上限額を回答してもらった結果、国産品は輸入品の1.5倍の価格であったが(表2)、実際は3~5倍の小売価格差であることから、輸入物は非常に高く評価されていた。
3.アンケート調査から、国産ワカメの強みは中高年層が好む湯通し塩蔵であるが、このシェアは時代と共に縮小方向にあり、一方、市場シェアが大きく、消費が増加しているメカブ、乾燥ワカメなどは中国産を中心とした輸入物であった(図)。
4.これらの問題点を解決するためには、(1)ロゴ、キャッチフレーズ等を開発し、三陸産ならではのイメージを浸透させる、(2)一度に消費量の多いワカメ料理を開発する、(3)PRを目的とした三陸産メカブ・乾燥ワカメの商品化を図るなどが必要であると考えられた。

成果の活用面

民間加工場、漁業系統団体(漁協自営加工場)、行政のワカメ商品及び構造改善に利用する。

平成16年3月 -No.16- ワカメ養殖施設改善基礎調査について

ねらい

平成15年3月上旬に本県沿岸を直撃した低気圧による養殖施設被害の実態を明らかにするとともに、現在使用されている養殖施設の問題点を解明することにより、今後より耐波性のある養殖施設へ改善していくための一助とする。

成果の特徴

1.今回の施設被害は、ロープの切断またはアンカーの移動による施設の連鎖的な絡みが主要因であると推察された(図1)。
2.ワカメ養殖用ロープの残存強度(注1)は養成綱で20~91%、碇綱で46~95%、側張り綱で56~100%の劣化状況であった(図2)。養成綱については、夏期に陸上へ暴露した状態で保管を行なうため紫外線により劣化を速め、使用年数により顕著な差が認められた。
3.水中カメラを用いた施設固定部の目視調査の結果、設置しているアンカーの全てが必ずしも有効に機能していないことが明らかとなった。

成果の活用面

上記の調査結果を基に、適正な施設の設置や管理を行っていくことで、今後、同様の災害が発生した場合の被害の軽減が期待される。

平成16年3月 -No.15- 毒化した二枚貝及びマボヤの毒量減衰について貝の種類による麻ひ性貝毒の成分組成の差異が毒の減衰と関連性があるのかを知ること。

ねらい

1.毒化した二枚貝等の減衰速度は、イワガキ,マガキ,マボヤ,ムラサキイガイ,ホタテガイ及びアカガイの順で早かった。
2.毒成分組成と毒の抜けやすさ・抜けにくさとの間には明瞭な関連は見出せなかった。

成果の特徴

出荷の早期再開に向けた現行の貝毒通達の見直しにつながるものと思われる。

成果の活用面

1998,2000及び2001年の3ヵ年にAlexandrium tamarenseにより毒化した二枚貝類及びマボヤについて比較検討した。その結果,生物種別の毒蓄積では高毒化のグループにホタテガイ及びムラサキイガイが,一方低毒化のグループには,マガキ及びアカガイがそれぞれ区分され,マボヤおよびイワガキはこれらの中間グループに区分された。生物種別の減衰はイワガキ,マガキ,マボヤ,ムラサキイガイ,ホタテガイ及びアカガイの順で早かった。生物種別の毒成分組成では各生物種の主要毒成分はGTX1+4及びGTX2+3であり,これらに少量のC1+2およびSTX群が混在していた。毒成分組成毎の毒の抜けやすさ・抜けにくさとの間には明瞭な関連は見出せなかった。

平成16年3月 -No.14- 水槽色がマツカワの性比に及ぼす影響

ねらい

マツカワでは性分化期に低水温(14℃以下)で飼育すると雌雄比が1:1に近づくことが報告されているが、14℃以下で飼育しても性比が雄に偏ることがあるため、性分化に影響を及ぼす水温以外の環境要因を検討する。

成果の特徴

変態開始前と後に同様の色の水槽で飼育した群の雌の割合は、違う色の水槽で飼育した群と比較して、有意に高くなることが認められ、性分化には性分化期の水槽色の変化も影響することが示唆された。このことから、性分化には水温、日長時間、日照などの環境の急激な変化も影響する可能性が十分考えられた。

成果の活用面

生産種苗の雌雄比均等化技術を確立することにより、放流後の資源造成が期待できることと、他の産業上重要で性の不安定な魚種への応用も可能になる。また、将来、雌性発生技術開発に取り組む際の端緒となる。

平成16年3月 -No.13- 白色水槽飼育はカレイ目マツカワの無眼側黒化防止と成長促進に有効である

ねらい

カレイ目魚類において、水槽に砂を敷かないで飼育すると無眼側が黒ずむ現象(黒化)が見られる。しかし、水槽に砂を敷くことは飼育管理上問題が多い。本研究では、水槽に砂を敷くことなく、水槽色によりマツカワの無眼側黒化を防止する技術の開発を目的とした。

成果の特徴

1全長8cmと5cmの無眼側が黒化していない個体を白色、黄色、黒色水槽で8か月間あるいは5か月間飼育した結果、マツカワの無眼側の黒化面積率は黒色飼育魚と比較して、白色、黄色水槽飼育魚では有意に低かった。2白色水槽飼育魚は黒色水槽飼育魚よりも有意に大きかった。以上の結果から、白色水槽飼育はマツカワの無眼側黒化防止と肥育促進に有効であることが明らかになった。

成果の活用面

水槽の色を調節する技術は環境に優しく、マツカワの品質向上と成長を促進できる有効な技術であり、今後、他のカレイ目魚類への応用が期待できる。

平成15年9月 -No.12- 魚肉ねり製品を原料とした新しい発酵食品の開発(特許出願中)

ねらい

蒲鉾やちくわなどの魚肉ねり製品は弾力性に富んだしなやかな食感を重視する傾向が強かった。そこで、魚肉ねり製品を発酵・熟成させてソフト化した食品を開発する。

成果の特徴

1.魚肉ねり製品を米こうじ等で発酵させて、新しい風味や食感等を有する食品を開発した。
2.本県で大量に水揚げされるが、蒲鉾製品特有の弾力性に乏しいため、ねり製品への利用が少ない秋サケの本発酵食品への利用が期待される。

成果の活用面

当所が研究・開発し、民間業者と共同で平成14年1月に特許を出願した。平成15年12月に商品化の予定である(写真上)。本技術は県有財産登録されており、販売時には書類申請が必要となります。写真上が市販のかまぼこを、米こうじ、塩、酒、紅こうじ色素等で調製したもろみに漬け込み、約3ヶ月間発酵させたもの。次第に、かまぼこ特有の食感が無くなり、全く別の食品が誕生した。かまぼこ中のタンパク質が分解し、うま味成分が増加したので濃厚かつ独特の風味となり、酒の肴としても有望です。写真下が上記発酵食品をペースト化したもの。非常にうま味が強いので、調味料としても利用できる。豆腐やイカの刺身等へも適し、様々な用途が見込まれる。魚肉ねり製品は、脂肪の少ない製品も多いことから、新しい低脂肪ドレッシングとしていかがでしょうか。

平成15年3月 -No.11- 沖合漁業による廃棄物回収機能の可能性~岩手県の沖合底曳網漁場におけるゴミ分布調査からの一考察~

ねらい

岩手県沖合の上部大陸棚斜面におけるゴミの分布実態を明らかにし、沖合底曳網船による漁場清掃の可能性を検証する。

成果の特徴

岩手県沖合の水深200~500mの海底全体には227千点、153トンのゴミが堆積していると推定された。海底に堆積したゴミのうち、ナイロン製の袋類と遺失漁具等の漁労資材が優占していることが明らかとなった。

成果の活用面

調査の結果から、岩手県沖合には相当量のゴミが堆積していると推定され、漁場清掃実施による効果以外に、通常の操業により採集されたゴミの回収促進も期待される。

平成15年3月 -No.10- ワカメ養殖経営構造の解明

ねらい

漁業協同組合及び行政等のワカメ養殖業振興施策の一助に資する。

成果の特徴

1.減産や養殖漁家の減少は、平成2年以前は高齢化や一時期に労働が集中する過重労働が主要因で、平成3年以降はこれに加えて価格低下も起因している(図1,2、表1)。
2.期間集約的労働、高齢化問題、高い雇用費の解決には機械化が重要と考えられた。しかし、漁家経営は、家内手工業的で収益性が低く、労働を代替する機械の開発や投資が困難な状況である。省力化機械の導入には漁協、自治体等の支援が必要である。
3.他県の大規模海藻養殖経営体は、過剰投資気味で、収益性が低下しているのが現状である。従って、岩手県で規模拡大する際は、経営管理(分析)の吟味が重要と考えられた。

成果の活用面

効率的な振興施策推進によって、漁家労働及び経営の改善が図られる。

平成15年3月 -No.9- 水分活性による湯通し塩蔵ワカメの品質評価

ねらい

岩手の主力製品である湯通し塩蔵ワカメは、漁業者による自家加工が多く、水分や塩分は製品によりバラツキが見られる。塩分が少ないと貯蔵中に品質劣化する可能性は高くなるが、生産現場での確認は難しい。そこで、水分活性※を指標とした湯通し塩蔵ワカメの迅速品質評価法を開発する。

成果の特徴

湯通し塩蔵ワカメの水分活性を測定することにより、漁協や加工場等による出荷前の品質評価を1~3分程度で容易に行うことが可能となった。水分活性の値が0.790以上の製品は、水分か塩分に問題があると判断できる。

成果の活用面

県内漁協等に普及しており、既に装置の導入を決定した漁協もみられる。また、湯通し塩蔵ワカメの認証制度への導入も検討されている。

平成15年3月 -No.8- ワカメ優良種苗生産技術の開発

ねらい

岩手県産ワカメの品質安定・向上のため、各海域の漁場環境に適したワカメ母藻の選別方法と種苗の大量生産手法の検討を行う。

成果の特徴

従来は生育場所やメカブの形態によってのみ選別が行われているワカメの母藻について、その形態や大きさなどの特徴を測定し、その結果に基づいて選択した母藻を種苗生産に用いることで、親に近い特徴を持ち、品質の揃ったワカメが収穫できることを明らかにした。

成果の活用面

各海域の漁場環境に適したワカメを母藻として人工種苗生産し、養殖することにより、品質の良いワカメの大量生産が可能となり、さらに成長の異なる複数の種苗を併用することで収穫期間を拡大することができる。

平成15年3月 -No.7- ワカメ刈取り機の開発状況について

ねらい

ワカメ養殖生産量の維持増大を図るため、養殖操業の省力化機器を開発する。

成果の特徴

1.13年度にはワカメ養殖協業作業船(大型船)用刈取り機を開発した。
1.刈取り機は、協業作業船の前甲板の左舷ブルワークに取り付けられたアーム状の支柱からつり下げて固定するようにした。
2.ワカメの刈取りは、養殖綱を船首のガイドローラに乗せ、刈取り機上を通過させて船尾のドラムで巻き取りながら、刈取り機の駆動によって行なうようにした。
3.作動試験の結果では、養殖綱100m当たり、0.5時間で刈取りが可能と考えられた。
2.14年度は、船外機船(小型船)用の刈取り機の開発に取り組んでいる。
1.本開発は、(独)水産工学研究所が行っている養殖ワカメの刈取りからボイル塩蔵までの一貫した「ワカメ自動刈取り機及び塩蔵ボイルワカメ自動製造装置の開発」との共同開発として実施している。
2.船外機船用刈取り機は、大型船用のそれと比べ安全性や操作性の向上、さらに、刈取ったワカメの方向を揃える機能をもたせることとしている。養殖施設の形態が多様であるため、汎用性が必要となっている。

成果の活用面

水産工学研究所が開発を進めている塩蔵ボイルワカメ自動製造装置と相まって、ボイル塩蔵ワカメを生産している養殖業者の総投下労働時間の約80%を占める刈取りからボイル塩蔵工程の省力化が期待される。

平成15年3月 -No.6- 軟腐性あなあき症の発生状況と発生メカニズムの検討

ねらい

平成14年漁期に本県沿岸の養殖ワカメに大発生した軟腐性あなあき症について、発生状況および発生メカニズムを検討し、ワカメの安定生産に資する。

成果の特徴

1.軟腐性あなあき症は平成14年2月中旬から3月中旬に、田老町から大船渡市三陸町にかけて発生が確認された。
2.外洋漁場、北に陸地を持つ漁場ほど被害が大きい傾向にあった。
3.平成14年1月末に本県沿岸を直撃した大型の低気圧による藻体自体への物理的ダメージと、その後のなぎ続きによる海水交流の不足がワカメの生理活性を低下させ、軟腐性あなあき症の原因菌に感染しやすい状況となったと推察された。
4.軟腐性あなあきの罹患部から分離した細菌の中から、近年、北海道におけるコンブのあなあき症の原因菌の可能性が高いとして注目されている海洋細菌Pseudoalteromonas elyakoviiが数株分離され、この細菌が本症の発症に関与している可能性が示唆された。

成果の活用面

今後、同様の病害が発生した場合の早期発見、早期対応が可能となり、被害の軽減が期待される。

平成15年3月 -No.5- ワカメの低利用部位を利用した高品質な漬物用ぬか床の開発

ねらい

ワカメの低利用部位である元茎の食品素材化を図るため、漬物用ぬか床(以下、ぬか床という)への利用を試みた。ぬか床の熟成初期に繁殖しやすいとされる有害微生物を効率よく制御するとともに、ワカメ由来の栄養成分を強化することをねらいとした。

成果の特徴

1.米ぬかにペースト状にした元茎および食塩を添加してワカメぬか床を調製し、水分、水分活性および塩分が同一となるよう従来法(水+米糠+食塩)で調製したぬか床を対照に熟成を施した。対照に比べてワカメぬか床は熟成時の乳酸菌の増殖速度が速く、乳酸の蓄積やpHの低下が顕著であり、熟成初期の有害微生物の制御に効果的であることが推定された。
2.野菜の漬込試験では、元茎由来のカリウム等が強化された漬物が得られることを確認した。

成果の活用面

1.得られた成果について特許出願を行なった(平成15年2月13日)。
2.一般家庭向けの即席ぬか床として、県内企業数社と商品化の検討を行っている。

平成15年1月 -No.4- 冷凍生ワカメの開発と商品化

ねらい

岩手県沿岸で1~2月に採取される早採りワカメの冷凍技術の開発により、商品化を図り、岩手産ワカメの消費量および生産量の拡大に資する。

成果の特徴

1.カルシウム系の食品添加物に有効性が認められ、これまで困難とされてきた解凍後の軟化や変色等の問題点を解決した。
2.開発品は約1年の冷凍保管でも品質劣化はせず、芯付きで冷凍可能なため、加工作業が容易であり歩留まりも良い。
3.湯通し塩蔵ワカメやそれを原料とするカットワカメよりも風味と食感が良く、ミネラルも豊富であり、旬の味をいつでも味わうことが出来る。

成果の活用面

県内の漁協や加工業者等に技術指導したところ、数社で商品化され、今後さらに生産量が増加する見込みである。

平成15年1月 -No.3- エゾアワビ海面カゴ養殖マニュアルの作成

ねらい

エゾアワビ海面カゴ養殖の飼育管理マニュアルを作成し、エゾアワビ海面養殖振興の一助とする。

成果の特徴

1.選抜育種を行った種苗とそうでない種苗の遺伝的な違いにより、出荷サイズ(7~8cm)までの成長が大きく異なることを確認した(図1)。
2.単位期間当たりの増殻長が成長に伴い低下することを確認し、養殖サイクルを検討する目安として、その傾向について整理した(図2)。
3.実際に用いられている養殖カゴやその中に入れるシェルター(アワビが付着する板)の種類や形状に応じた適正な収容個数を算出した(表1)。

成果の活用面

県内の漁業者、漁協、普及員等に配布した。

平成15年1月 -No.2- イワガキ稚貝の低水温耐性について

ねらい

平成13年の春から初夏にかけて、岩手県中南部を中心に初めて確認された養殖イワガキ当歳貝の大量へい死について、原因および対策を検討し、安定生産技術を確立する。

成果の特徴

1.飼育試験を行ったところ、イワガキ稚貝は低水温に弱く、大量へい死は、冷水の接岸が主な原因で発生したものと考えられた。
2.大量へい死の防止策としては、より大きいサイズで冬季の低水温期を迎える必要があり、そのためには成長を促進する早期の沖出し注1が有効であることが分かった。

成果の活用面

岩手県でのイワガキ養殖において、安定的な生産と養殖期間を短く縮めるために有効な早期の沖出し(5~6月頃)を推進することとなった。

平成15年1月 -No.1- 岩手県における秋サケ不漁原因の究明と対策

ねらい

平成11年度以降来遊数が減少している秋サケ資源の減少要因の究明を図るとともに、人為的に改善できる手法を検討し、増殖事業の展開に資する。

成果の特徴

1.過去に放流されたサケ稚魚の体重、肥満度等の低下が来遊数減少の主要因とは認められなかった。
2.サケの年級毎の来遊数は、稚魚放流年5月の親潮出現割合が高い年に多く、また、コウナゴ漁獲が漁期後半に偏る年に少ない傾向があり、幼魚の餌料環境が生残に影響を与えていると推察された。

成果の活用面

本研究の結果、サケ幼魚の餌料環境が良好な時期(3月中旬~5月上旬)に稚魚放流を行えるように、県内各ふ化場のふ化水温から算定した卵収容計画を作成することになり、ふ化放流事業への活用が期待される。