平成30年9月 -No.46- 東日本大震災による養殖漁場の環境変化
ねらい
2011年3月に発生した東日本大震災津波は岩手県沿岸の養殖施設に壊滅的な被害を与え、貝類等の養殖漁場がある内湾では、海岸地形の浸食や陸上からの土砂等の流入が発生したことから、環境が大きく変化したと推測された。
そこで、養殖漁場の環境変化を把握するために水質と底質を調べた。
成果の特徴
岩手県沿岸の9湾(久慈湾、宮古湾、山田湾、大槌湾、釜石湾、唐丹湾、越喜来湾、大船渡湾、広田湾)で水質と底質の有機物汚濁状況を震災前後で比較した。水質について、表層海水中の有機物量を示すCODMn(100℃-酸性過マンガン酸カリウム法)は、全ての湾で減少傾向であった。底質について、海底に堆積した有機物量を示すCODOH(アルカリ性過マンガン酸カリウム法)は、久慈湾、山田湾、大槌湾、広田湾で減少傾向であった一方で、釜石湾と大船渡湾で増加傾向であった。
調査結果から、水質の有機物汚濁は見られなかったが、底質は釜石湾と大船渡湾で有機物汚濁が見られた。よって、釜石湾と大船渡湾は今後も継続して調査し傾向を把握する必要がある。
成果の活用面
関係する漁協や漁業者等に対して結果を報告し、養殖漁場の安全性を確認するためのデータや養殖を再開するための基礎データに活用された。
※被害漁場環境調査事業(水産庁)、東北マリンサイエンス拠点形成事業(文科省)、漁場環境保全調査費(岩手県)による。水質データの一部に公共用水域水質測定結果を引用。