令和2年1月15日
12月31日までの回帰尾数は、前年比21%の74万尾。
依然として3歳魚と5歳魚の割合が高く、4歳魚は例年になく低くなっています。
1.回帰資源量
12月31日現在の本県回帰尾数は74万尾(2,184トン)で前年比21%(重量比22%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は59万尾(前年比20%)、河川漁獲は11万尾(前年比25%)。種卵確保対策による海産親魚は4万尾(前年比96%)、1尾あたりの平均体重は2.96kgと前年(2.92kg)をやや上回りました。また、河川そ上率は14%と前年(12%)を上回りました。
なお、当センターが発表した12月下旬までの回帰予測尾数(全数)は305万尾であり、予測の24%となりました。
2.回帰親魚調査結果(後期:12月11日から12月31日までの分)
12月11日から12月27日にかけて、片岸、織笠、津軽石の各河川において回帰親魚調査(片岸川160尾、織笠川397尾、津軽石川383尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚25%、4歳魚13%、5歳魚60%(H30:3歳魚3%、4歳魚81%、5歳魚13%)、メスは3歳魚16%、4歳魚4%、5歳魚80%(H30:3歳魚10%、4歳魚83%、5歳魚16%)で、前年同期と比べるとオス・メスともに4歳魚の割合が低く、3、5歳魚の割合が著しく高くなりました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R1:834尾、H30:838尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年の10%と大きく下回り、3歳魚が前年の19倍、5歳が前年の5倍と大きく上回りました(図3)。
織笠川
オスは3歳魚52%、4歳魚18%、5歳魚30%(H30:3歳魚2%、4歳魚87%、5歳魚10%)、メスは3歳魚26%、4歳魚18%、5歳魚55%(H30:3歳魚1%、4歳魚87%、5歳魚12%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに4歳魚の割合が低く、3、5歳魚の割合が著しく高くなりました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R1:1,723尾、H30:4,533尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚が前年を大幅に上回り前年の11倍、4歳魚が前年を大きく下回り前年の8%、5歳魚は前年の145%と上回りました(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚5%、4歳魚20%、5歳魚73%(H30:3歳魚1%、4歳魚56%、5歳魚37%)、メスは3歳魚9%、4歳魚19%、5歳魚69%(3歳魚1%、4歳魚69%、5歳魚29%)で、前年同期と比べると、4歳魚の割合が低く、5歳の割合が高くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R1:7,905尾、H30:20,631尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚が前年の5倍と大きく上回り、4歳魚が前年の12%と大きく下回り。5歳魚は前年の85%となりました(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は68.4cm、体重は3.0kg、肥満度※は9.0、メスの尾叉長は70.1cm、体重は3.4kg、肥満度※は9.4でした。
前年同期と比較すると、オスでは、3歳魚の尾叉長、体重以外はすべて前年よりも小さく、メスでは5歳魚の尾叉長、体重及以外はすべて前年よりも小さい傾向にありました(表1)。
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
3歳魚 | 61.5 | 58.5 | 2.1 | 1.8 | 8.8 | 9.1 |
4歳魚 | 65.4 | 67.1 | 2.4 | 2.9 | 8.3 | 9.5 |
5歳魚 | 71.8 | 73.5 | 3.5 | 4.4 | 9.3 | 10.8 |
全体平均 | 68.4 | 67.9 | 3 | 3.1 | 9 | 9.7 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
3歳魚 | 62.2 | - | 2.1 | - | 8.8 | - |
4歳魚 | 63 | 66.2 | 2 | 2.9 | 8.1 | 9.7 |
5歳魚 | 71.9 | 70.3 | 3.7 | 3.5 | 9.6 | 9.8 |
全体平均 | 70.1 | 67 | 3.4 | 3 | 9.4 | 9.7 |
織笠川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は66.0cm、体重は2.7kg、肥満度は9.1、メスの尾叉長は69.3cm、体重は3.5kg、肥満度は10.0でした。
前年同期と比較すると、尾叉長と体重は、オスでは3歳魚を除いて小さく、メスでは各年齢とも前年並みから大きい傾向がありました。また、肥満度は、オスでは3歳魚を除いて低く、メスでは5歳魚を除いて低くなりました(表2)。
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
3歳魚 | 62.1 | 61 | 2.2 | 2.1 | 9 | 8.9 |
4歳魚 | 66.9 | 68.3 | 2.7 | 3.2 | 8.9 | 9.8 |
5歳魚 | 72.1 | 73.1 | 3.7 | 4.1 | 9.6 | 10.2 |
全体平均 | 66 | 67.1 | 2.7 | 3 | 9.1 | 9.6 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
3歳魚 | 62.4 | 60.6 | 2.3 | 2.2 | 9.4 | 9.7 |
4歳魚 | 68.3 | 68.5 | 3.2 | 3.2 | 9.9 | 10 |
5歳魚 | 72.8 | 71.4 | 4 | 3.7 | 10.3 | 10.1 |
全体平均 | 69.3 | 67.7 | 3.5 | 3.1 | 10 | 9.9 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は77.8cm、体重は5.1kg、肥満度は10.5、メスの尾叉長は72.6cm、体重は4.2kg、肥満度は10.5でした。
前年同期と比較すると、尾叉長と体重は、オスでは各年齢で大きく、メスでは4歳魚を除いて小さくなりました。また、肥満度はオスでは4歳魚を除いて低く、メスでは3歳魚を除いて高くなりました(表3)。
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
3歳魚 | 64.4 | 56 | 2.5 | 1.7 | 9 | 9.4 |
4歳魚 | 75.2 | 72.1 | 4.6 | 4 | 10.4 | 10.3 |
5歳魚 | 79.5 | 77.7 | 5.4 | 5.3 | 10.6 | 10.9 |
全体平均 | 77.8 | 74.3 | 5.1 | 4.5 | 10.5 | 10.5 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
3歳魚 | 63.6 | 66 | 2.5 | 2.8 | 9.6 | 9.7 |
4歳魚 | 70.1 | 69.1 | 3.7 | 3.4 | 10.6 | 10.2 |
5歳魚 | 74.5 | 75.3 | 4.5 | 4.6 | 10.7 | 10.5 |
全体平均 | 72.6 | 71.1 | 4.2 | 3.8 | 10.5 | 10.3 |
(3)孕卵数および卵重量
津軽石川(12月12日、12月24日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均3,274粒、卵1粒あたりの重量は0.25g、生殖腺指数※は18.6でした。
4歳魚及び5歳魚の各測定値を前年と比較すると、4歳魚では卵重量と生殖腺指数以外の測定値で前年を上回り、5歳魚では全ての測定値で前年を下回りました(表4)。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 津軽石川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | R1 | H30 | |
尾叉長(cm) | 64.6 | - | 70.5 | 70.2 | 75.1 | 77.4 | 73.6 | 72.6 |
体重(kg) | 2.64 | - | 3.79 | 3.68 | 4.68 | 5.08 | 4.39 | 4.15 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.50 | - | 0.73 | 0.72 | 0.85 | 0.94 | 0.80 | 0.80 |
孕卵数(粒/尾) | 2,869 | - | 3,162 | 3,024 | 3,333 | 3,418 | 3,274 | 3,155 |
卵重量(g/粒) | 0.17 | - | 0.23 | 0.24 | 0.26 | 0.27 | 0.25 | 0.25 |
生殖腺指数 | 18.8 | - | 19.3 | 19.7 | 18.4 | 18.6 | 18.6 | 19.3 |
3.その他
(1)年齢別回帰尾数について
12月末までに明らかとなった片岸川、織笠川、津軽石川のそ上魚の年齢組成をもとに、12月31日までの県全体の年齢別回帰尾数を推定しました(図8)。
令和元年の予測値と実績値を比較すると、実績値はすべての年齢で下回り、特に主力となる4歳魚では予測の107万尾減、5歳魚では120万尾減となりました。
平成24年から経年的に見ても、令和元年の4歳魚は、平成26年の4歳魚(東日本大震災津波により稚魚が被災)よりも少ない尾数となりました。
(2)その他
12月31日時点での県全体の計画卵数に対する採卵の進捗は43%と、きわめて厳しい状況にあります。今後、例年以上に種卵、仔魚及び稚魚管理を徹底し、健康な稚魚の飼育、放流に努めることが重要です。