2024年度岩手県秋サケ回帰予報

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令和6年7月31日

予測期間:令和6年9月~令和7年2月
予測海域:岩手県沿岸

秋サケ回帰予測尾数(範囲): 4.4万尾(1.5~14.9万尾)

秋サケ回帰予測重量(範囲):136トン(46~470トン)

回 帰 時 期 :12月上中旬 中心
今年度の回帰数量も、昨年並みに少ないことが予測されます。
資源回復に向けて、少しでも多くの種卵が確保されるよう、関係機関の協力体制の確認が重要です。

1.令和6年度の予測結果

回帰尾数・重量の推定

令和5年度の年齢別漁獲数量から、令和6年度の岩手県秋サケ回帰数量を推定したところ、4.4万尾、136トンとなり、震災前の平均値(平成20~22年度の平均値。以下同じ)の1%未満、昨年度と同程度の最低水準が継続する見込みです(表1)。また、年齢別の回帰予測尾数は、令和5年度実績よりも5歳魚が減り、4歳魚が増えて4歳魚中心となりますが、震災前の平均値と比べて各年齢とも依然として極めて少ない見通しです(表2)。
表1 令和6年度予測値、令和5年度実績値及び震災前の平均値

  令和6年度予測値
(95%予測範囲)
令和5年度
実績値
震災前の
平均値
回帰尾数(万尾) 4.4
(1.5~14.9)
4.4 768
回帰重量(トン) 136
(46~470)
134 25,053

表2 3~5歳魚の令和6年度予測値、令和5年度実績値及び震災前の平均値

  令和6年度
予測値
令和5年度
実績値
震災前の平均値
3歳魚(千尾) 12 15 363
4歳魚(千尾) 29 17 3,944
5歳魚(千尾) 1 12 3,136

回帰時期の推定

3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から、令和6年度の回帰時期は12月上中旬が中心になると予測されます(図1)。

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図1 令和6年度旬別沿岸回帰予測と令和5年度旬別沿岸回帰実績

各河川の年級(生まれ年)毎の年齢別回帰尾数及び、3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から算出される令和6年度の旬別河川そ上尾数は、11月上旬と12月中旬をピークとする2.5万尾(予測下限値1.0万尾)と推定されます(図2)。
令和6年度の河川そ上尾数は、令和5年度と比較して、概ねいずれの時期も上回る予測ですが、種卵確保が困難な状況になると考えられます。

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図2 令和6年度旬別河川そ上予測と令和5年度旬別河川そ上実績

2.予測方法

秋サケの回帰尾数は、2歳魚から6歳魚まで年齢別に回帰尾数を計算し、最後にすべての年齢の予測値を合計して予測尾数としています。このため、毎年、県内の各河川にそ上した親魚の鱗を用いて年齢査定を行い、その年齢組成結果から、年級(生まれ年)毎の年齢別回帰尾数を取りまとめています。各年級の回帰尾数は大きく変動しており、震災後の平成23年級以降、低い水準で推移しています(図3上段)。
今年度の予測では、過大評価を避けるため、平成23年級以降のデータを使用しました。また、近年は10分の1以下まで回帰尾数が減少する(桁数が変わる)年級が見られることから、回帰尾数を対数変換して予測を行いました(図3下段)。さらに、河川捕獲の割合が上昇していることから、海面と河川を分けて予測しました。

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図3 年級別年齢別回帰尾数の推移。
上段は尾数、下段は対数変換(自然対数)。

2歳魚の推定方法

資源が大きく減少した平成27年級から令和3年級までの7年間の対数変換した回帰尾数について、算術平均を求め、e^(平均値)により尾数に変換しました。

3歳魚~6歳魚の推定方法


3~6歳魚の回帰尾数の予測では、同一年級のn-1歳魚とn歳魚(図4は、海面の3歳魚と4歳魚の例)の1次回帰式を求め、昨年度n-1歳で回帰したLn(回帰尾数)を代入して今年度n歳魚のLn(予測尾数)を算出しています。また、得られた数値について、2歳魚と同様に尾数に変換しました。
なお、河川そ上予測においても河川毎に平成23年級以降の年級毎の年齢別回帰尾数をまとめ、同様の方法で4~6歳魚を算出しました(2、3歳魚は算術平均)。

回帰時期の推定方法

回帰時期の予測は、上述の方法で回帰尾数の総数を算出した後、3~5年間のふ化場毎の卵収容実績や河川毎の旬別回帰率、放流時の水温などを勘案し、回帰尾数の総数を旬別に振り分けています。

重量の推定方法


これまでの調査結果より、片岸川、織笠川及び津軽石川における3歳魚の平均魚体重(雌雄込み)と翌年度の全年齢の平均魚体重の関係式を求めています(図5)。
秋サケ回帰予測重量は、回帰予測尾数に、この平均魚体重を乗じて求めています。

【参考】

令和3年度まで2歳魚と3歳魚の予測に使用していた、放流時の幼稚魚分布密度調査結果を図6に示しました。今年度の回帰の中心となる令和元年級(5歳魚)から令和3年級(3歳魚)の分布密度は低水準にあります。分布密度と4歳魚の回帰尾数には、図7のように正の相関関係がありますが、近年(図中の○)、分布密度が低いことから、しばらくの間、低水準の回帰状況が続くものと考えられます。

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図6 岩手県沿岸域におけるサケ幼稚魚の分布密度の年変化

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図7 サケ幼稚魚の分布密度と4歳魚の回帰尾数との関係