2025年マダコ漁況情報(漁況情報号外)

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令和7年9月12日

1)期 間 : 令和7年9~12月

2)漁 況 : 予測値262トン 平年(161トン)を上回るが、昨年(367トン)は下回る範囲

近年、漁獲量が増加傾向にあるマダコについて、昨年度に引き続き主漁期の漁況予測を実施しましたのでお知らせします。

予測の概要

今年の春先は一時的に親潮が本県沿岸に流入し、昨年と比較して沿岸域の水温がマダコの生存可能な7℃を下回った日数が多かったことから、今年度の9~12月の漁獲量は262トンと予測され、平年(161トン)を上回り、昨年(367トン)は下回る範囲になると考えられます。

1 岩手県海域に生息するマダコの生態

 東北太平洋海域に分布するマダコは、水深数十mより浅い沿岸域に主に生息しています。本海域で漁獲されるマダコの大半は、冬~春先に千葉・茨城県海域で産卵・ふ化した幼生が黒潮続流の流れに乗り、東北海域で着底・成長する春生まれの個体(渡り群)だと考えられています(図1)。本県海域で着底・成長したマダコが主に例年9~12月にかけて漁獲されます(図2)。1月以降は水温低下に伴い、産卵のために千葉・茨城県海域まで再び南下すると考えられており、1~8月まで本県ではほとんどマダコが漁獲されなくなります。
 マダコが生存できる水温は7℃以上とされて東北海域の一部の海域でも、そのまま残留する個体(地着き群)がいると考えられています。特に昨年は、一昨年(令和5年)春季から黒潮続流が強く、本県沿岸全域で高水温状態が継続したことから、本来漁獲量が少ない1~8月にもまとまった漁獲量となりました。しかし、今年の春季は一時的に親潮第1分枝が本県沿岸に差し込んだことにより水温が低下し、2~8月の漁獲量は平年並みで推移しました(図2)。

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図1 東北海域におけるマダコ(渡り群)の
生活史のイメージ

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図2 岩手県における令和2年以降の月別漁獲量

2 岩手県におけるマダコ水揚量の推移

 本県のマダコは9割以上が、かご漁法により漁獲されています(図3)。令和6年の水揚量は952トン(前年比109%、過去5年平均比225%)で、漁法別にみると、カゴが899トン(前年比112%、平均比235%)、定置網及び磯建網が16トン(前年比69%、平均比81%)でした。

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図3 岩手県におけるマダコの年度別・漁法別水揚量の推移

3 令和7年後期の漁況予測

昨年と同様に以下の環境データを使用し、一般化線形モデルを用いて漁獲量を予測しました。なお、予測値がマイナス値になる場合は予測漁獲量を0トンと修正しています。
予測結果は図4に示したとおり、今年度の主漁期(9~12月)の漁獲量は262トンと予測されました(図4)。東日本大震災の影響のあった平成23年を除き、令和元年や令和3年以外は、予測値と実測値の増減が概ね一致しています。

【予測モデル(簡略版)】
9~12月のかご漁獲量 = 黒潮続流の4月の平均北限緯度※1
+県中部(山田湾)での1~6月の7℃未満の日数割合※2

【予測に用いた指標の説明】
※1 水深100mにおける水温15℃以上の水塊(黒潮続流)の緯度 (水産研究・教育機構から提供)
※2 本県定地水温システムで測定した1~6月の水温データを使用

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図4 漁況予測モデルにより推定した漁期中漁獲量
令和7年後期の予測値は赤丸で示す。

また、今年度は新たに主漁期(9~12月)の漁獲量が平年値※3の161トンを上回る確率について、ロジスティック回帰分析を行いました。分析には、一般化線形モデルと同様に黒潮続流の4月平均北限緯度と県中部(山田湾)での1~6月の水温を説明変数(漁獲量の変化の要因)として用いました。
予測の結果、令和7年主漁期の漁獲量は、73%の予測確率で平年値の161トンを上回る予測となりました(図5)。
※3 平成15年~令和6年の主漁期における平均漁獲量。

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図5 ロジスティック回帰分析による漁獲動向予測
令和7年主漁期の予測値は赤字で示す。

まとめ

今年の春先は昨年と異なり、本県沿岸に一時的に親潮が流入し、水温が7℃を下回った日数が多かったことから、今年の主漁期(9~12月)のマダコの漁獲量は前年(367トン)を下回る262トンと予測されました。また、平年値の161トンに対しては73%の予測確率で上回ると予測されました。
なお、今年の1~8月までの漁獲量(速報値)が110トンと前年の533トンを大きく下回っており、主漁期となる9~12月の予測結果も考慮すると、今年の年間漁獲量は前年の952トンを大きく下回ると考えられます。

担当:漁業資源部(村上)

TEL:0193-26-7915
FAX:0193-26-7920