平成28年12月1日
11月10日までの回帰尾数は、前年比70%の82万尾。
尾叉長・体重は、前年並み~小さい傾向が認められます。
年齢別回帰尾数では、3歳魚の割合が前年より少ない傾向となっています。
より一層の増殖用種卵確保に努めて下さい。
1.回帰資源量
11月10日現在の本県回帰尾数は82万尾(2,213トン)で前年比70.0%(重量比64.2%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比71.4%(75万尾)、河川漁獲は前年比52.0%(6万尾)。種卵確保対策による海産親魚は前年比114.5%(1.3万尾)。河川そ上率は7.0%と前年(9.4%)を下回りましたが、これは台風10号による一部の採捕施設の流失の影響が含まれています。また、当センターが発表した前期までの回帰予測尾数は111万尾であり、予測の73.0%に留まっていました(注:平成28年度と平成27年度の秋さけ漁獲速報を比較)。
2.回帰親魚調査結果(前期:11月10日までの分)
9月26日~11月8日に片岸、織笠、津軽石川において回帰親魚調査(片岸川428尾、織笠川212尾、津軽石川524尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚8%、4歳魚56%、5歳魚31%(H27:3歳魚21%、4歳魚55%、5歳魚22%)、メスは3歳魚4%、4歳魚61%、5歳魚31%(H26:3歳魚12%、4歳魚52%、5歳魚30%)で、前年同期と比べるとオス・メスともに3歳魚の割合が低く、オスでは5歳魚、メスでは4歳魚の割合が高い傾向にありました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:3,991尾、H27:5,544尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3~6歳魚で前年を下回り、特に、3歳魚は前年の0.26倍の回帰となっています(図3)。
織笠川
オスは3歳魚19%、4歳魚73%、5歳魚6%(H27:3歳魚49%、4歳魚21%、5歳魚27%)、メスは3歳魚11%、4歳魚73%、5歳魚14%(H27:3歳魚29%、4歳魚15%、5歳魚51%)で、前年同期と比べると、4歳魚の割合が非常に高く、3歳魚の割合が低い傾向にありました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:1,565尾、H27:1,916尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年の3.26倍となる一方で、3歳魚は前年の0.32倍、5歳魚は前年の0.211倍となっています(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚4%、4歳魚72%、5歳魚23%(H27:3歳魚52%、4歳魚11%、5歳魚33%)、メスは3歳魚9%、4歳魚77%、5歳魚12%(H27:3歳魚25%、4歳魚18%、5歳魚55%)で、前年同期と比べると、3歳魚の割合が極端に低く、4歳魚の割合が極端に高い傾向にありました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H27:2,968尾H26:4,072尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年を3.8倍も上回り、3歳魚は前年の0.12倍、5歳魚は前年の0.29倍の回帰となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は67.4cm、体重は2.9kg、肥満度は9.2、また、メスの平均尾叉長は66.6cm、体重は3.0kg、肥満度は9.9でした。前年同期と比較すると、オスの3歳魚・4歳魚・5歳魚で尾叉長、体重ともに小さく、肥満度が低い傾向が認められました。(表1)。
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 60.1 | 63.1 | 2.0 | 2.4 | 9.1 | 9.3 |
4歳魚 | 66.1 | 69.0 | 2.7 | 3.2 | 9.2 | 9.7 |
5歳魚 | 70.6 | 71.5 | 3.3 | 3.5 | 9.2 | 9.5 |
全体平均 | 67.4 | 68.4 | 2.9 | 3.1 | 9.2 | 9.6 |
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 60.2 | 61.2 | 2.0 | 2.3 | 9.1 | 9.9 |
4歳魚 | 65.1 | 66.9 | 2.8 | 3.1 | 9.9 | 10.4 |
5歳魚 | 69.7 | 68.2 | 3.4 | 3.2 | 10.0 | 10.3 |
全体平均 | 66.6 | 66.8 | 3.0 | 3.1 | 9.9 | 10.3 |
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
織笠川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は66.2cm、体重は2.7kg、肥満度は9.2、また、メスの平均尾叉長は64.0cm、体重は2.5kg、肥満度は9.5でした。なお、平成28年度前期中のオスのサンプル尾数は78尾と極端に少なかったことから、前年同期との比較は取止めました。(表2)。
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 62.2 | 62.6 | 2.4 | 2.3 | 9.6 | 9.4 |
4歳魚 | 67.2 | 67.6 | 2.8 | 3.0 | 9.1 | 9.5 |
5歳魚 | 65.4 | 71.1 | 2.4 | 3.5 | 8.4 | 9.5 |
全体平均 | 66.2 | 66.2 | 2.7 | 2.8 | 9.2 | 9.4 |
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 61.5 | – | 2.2 | – | 9.5 | – |
4歳魚 | 63.6 | 64.4 | 2.5 | 2.8 | 9.5 | 10.2 |
5歳魚 | 66.8 | 68.1 | 2.8 | 3.2 | 9.4 | 9.9 |
全体平均 | 64.0 | 65.3 | 2.5 | 2.8 | 9.5 | 10.0 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は69.9cm、体重は3.2kg、肥満度は9.1、また、メスの平均尾叉長は66.1cm、体重は2.8kg、肥満度は9.6でした。前年同期と比較すると、オス及びメスの5歳魚の体重、メスの3歳魚・4歳魚・5歳魚で肥満度が低い傾向が認められました(表3)。
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 60.2 | – | 2.0 | – | 8.6 | – |
4歳魚 | 69.1 | 70.1 | 3.1 | 3.2 | 9.1 | 9.1 |
5歳魚 | 73.3 | 74.8 | 3.7 | 4.2 | 9.3 | 9.8 |
全体平均 | 69.9 | 68.2 | 3.2 | 3.2 | 9.1 | 9.6 |
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 64.0 | 61.4 | 2.5 | 2.3 | 9.4 | 9.9 |
4歳魚 | 66.0 | 66.6 | 3.8 | 3.1 | 9.7 | 10.4 |
5歳魚 | 67.5 | 69.2 | 3.0 | 3.5 | 9.8 | 10.3 |
全体平均 | 66.1 | 66.9 | 2.8 | 3.1 | 9.6 | 10.2 |
(3)孕卵数および卵重量
片岸川(11月2日)
片岸川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,798粒、卵1粒あたりの重量は0.22g、生殖腺指数は19.6でした。
前年と比較して、孕卵数は5歳魚で若干増加したものの、3歳魚・4歳魚で減少しました。卵重量は3歳魚・4歳魚で減少、5歳魚で前年並みでした。生殖腺指数は3歳魚・4歳魚・5歳魚で低下しました(表4)。
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
尾叉長(cm) | 59.7 | 62.8 | 65.8 | 66.8 | 71.6 | 68.1 | 68.0 | 66.8 |
体重(kg) | 1.98 | 2.53 | 2.87 | 3.14 | 3.79 | 3.53 | 3.22 | 3.18 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.43 | 0.60 | 0.56 | 0.71 | 0.74 | 0.70 | 0.63 | 0.68 |
孕卵数(粒/尾) | 2,451 | 2,799 | 2,498 | 3,141 | 3,230 | 3,062 | 2,798 | 3,015 |
卵重量(g/粒) | 0.18 | 0.21 | 0.22 | 0.23 | 0.23 | 0.23 | 0.22 | 0.23 |
生殖腺指数 | 21.8 | 24.3 | 19.5 | 23.6 | 19.6 | 20.1 | 19.6 | 22.2 |
3.その他
平成28年11月10日現在の秋サケ回帰状況を見ると、回帰尾数・回帰重量ともに前年を大きく下回っています。また、河川捕獲数も同様に前年を下回っているため、大部分のふ化場では、増殖事業用種卵確保が困難な状況にあり、海産親魚からの種卵確保が行われています。今後も回帰が低調に推移すれば、なお一層の種卵確保対策を講じる必要がありますので、増殖事業者においては、情報収集に努めるとともに、より一層の種卵確保に努めて下さい。