平成28年12月28日
12月10日までの回帰尾数は、前年比87%の235万尾。
体重・肥満度は、前年並み~小さい傾向が認められます。
前年と比べ、3歳魚の回帰が低調に推移しています。
1.回帰資源量
12月10日現在の本県回帰尾数は235万尾(6,797トン)で前年比86.6%(重量比82.2%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比88.2%(215万尾)、河川漁獲は前年比66.6%(16万尾)。種卵確保対策による海産親魚は前年比109.1%(4万尾)。河川そ上率は6.7%と前年(8.7%)を下回りました。また、1尾あたりの平均体重は2.89kgと前年(3.04kg)の95.1%でした。当センターが発表した中期までの回帰予測尾数は300万尾であり、予測の78.2%に留まりました(注:水産振興課調べによる平成28年度と平成27年度の秋さけ漁獲速報を比較)。
2.回帰親魚調査結果(中期:11月11日から12月10日までの分)
11月11日~12月6日に片岸、織笠、津軽石川において回帰親魚調査(片岸川599尾、織笠川385尾、津軽石川556尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚18%、4歳魚42%、5歳魚38%(H27:3歳魚20%、4歳魚73%、5歳魚4%)、メスは3歳魚5%、4歳魚45%、5歳魚48%(H27:3歳魚13%、4歳魚78%、5歳魚5%)で、前年同期と比べるとオス・メスともに4歳魚の割合が低く、5歳魚の割合が高い傾向にありました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:12,316尾、H27:17,587尾、対前年比70%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、前年の回帰が多かった4歳魚と同年級である5歳魚の回帰が前年を大きく上回りましたが、3歳魚及び4歳魚が前年を下回り、3歳魚は前年の52%、4歳魚は40%となっています(図3)。
織笠川
オスは3歳魚6%、4歳魚65%、5歳魚29%(H27:3歳魚11%、4歳魚42%、5歳魚40%)、メスは3歳魚1%、4歳魚69%、5歳魚30%(H27:3歳魚9%、4歳魚36%、5歳魚50%)で、前年同期と比べると、3歳魚及び5歳魚の割合が低く、4歳魚の割合が高い傾向にありました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:2,665尾、H27:3,284尾、対前年比81%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年を上回り、3歳魚及び5歳魚が前年を下回りました。(図5)。
特に、3歳魚は前年の30%、5歳魚は前年の52%となっています。
津軽石川
オスは3歳魚3%、4歳魚74%、5歳魚21%(H27:3歳魚45%、4歳魚34%、5歳魚14%)、メスは3歳魚2%、4歳魚81%、5歳魚16%(H27:3歳魚25%、4歳魚26%、5歳魚35%)で、前年同期と比べると、4歳魚の割合が非常に高く、3歳魚の割合が極端に低い傾向にありました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:8,497尾、H27:6,034尾、対前年比141%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年を大幅に上回り366%、一方、3歳魚は前年の11%、5歳魚が前年とほぼ同数となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は66.4cm、体重は2.9kg、肥満度は9.5、また、メスの平均尾叉長は67.9cm、体重は3.3kg、肥満度は10.2でした。前年同期と比較すると、オス・メスの尾叉長、体重ともにほぼ前年並み、オス・メスともに肥満度が低い傾向が認められました(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
オス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 59.5 | 60.7 | 1.9 | 2.1 | 9.1 | 9.3 |
4歳魚 | 65.8 | 67.0 | 2.8 | 3.1 | 9.5 | 10.0 |
5歳魚 | 70.9 | 70.5 | 3.5 | 3.4 | 9.7 | 9.7 |
全体平均 | 66.4 | 66.0 | 2.9 | 2.9 | 9.5 | 9.8 |
メス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 60.5 | 61.0 | 2.1 | 2.4 | 9.4 | 10.4 |
4歳魚 | 65.4 | 67.0 | 2.9 | 3.2 | 10.3 | 10.7 |
5歳魚 | 70.8 | 71.0 | 3.7 | 3.9 | 10.2 | 10.7 |
全体平均 | 67.9 | 66.9 | 3.3 | 3.2 | 10.2 | 10.6 |
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
織笠川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は68.7cm、体重は3.0kg、肥満度は9.0、また、メスの平均尾叉長は68.1cm、体重は3.1kg、肥満度は9.7でした。前年同期と比較すると、オス・メスともに体重及び肥満度が低い傾向が認められました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
オス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 62.0 | 59.9 | 2.1 | 2.0 | 8.6 | 9.2 |
4歳魚 | 67.7 | 67.7 | 2.9 | 3.0 | 9.1 | 9.3 |
5歳魚 | 72.0 | 74.0 | 3.4 | 4.0 | 9.0 | 9.6 |
全体平均 | 68.7 | 69.6 | 3.0 | 3.3 | 9.0 | 9.5 |
メス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 64.0 | 61.3 | 2.2 | 2.4 | 8.4 | 10.2 |
4歳魚 | 66.9 | 67.5 | 2.9 | 3.2 | 9.6 | 10.4 |
5歳魚 | 70.9 | 71.2 | 3.5 | 3.8 | 9.7 | 10.3 |
全体平均 | 68.1 | 69.1 | 3.1 | 3.5 | 9.7 | 10.3 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は73.0cm、体重は3.8kg、肥満度は9.7、また、メスの平均尾叉長は70.8cm、体重は3.6kg、肥満度は10.0でした。前年同期と比較すると、オス・メスともに体重及び肥満度が低い傾向が認められました(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
オス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 62.2 | 66.4 | 2.2 | 2.9 | 9.0 | 9.8 |
4歳魚 | 72.8 | 73.6 | 3.8 | 4.2 | 9.7 | 10.4 |
5歳魚 | 74.9 | 76.7 | 4.2 | 4.7 | 9.8 | 10.2 |
全体平均 | 73.0 | 70.5 | 3.8 | 3.7 | 9.7 | 10.0 |
メス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 61.5 | 63.3 | 2.2 | 2.6 | 9.6 | 10.2 |
4歳魚 | 70.7 | 69.5 | 3.6 | 3.6 | 10.0 | 10.6 |
5歳魚 | 72.3 | 73.8 | 3.9 | 4.3 | 10.0 | 10.5 |
全体平均 | 70.8 | 70.5 | 3.6 | 3.8 | 10.0 | 10.5 |
(3)孕卵数および卵重量
片岸川(11月2日、11月14日)
片岸川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,849粒、卵1粒あたりの重量は0.23g、生殖腺指数は19.8でした。
前年と比較して、孕卵数は3、4歳魚で減少しました。卵重量は3歳魚で減少しましたが、4歳魚及び5歳魚で前年度と同様でした。生殖腺指数は5歳魚で若干の減少、3、4歳魚で減少幅が大きくなりました(表4)。
表4 片岸川 年齢別繁殖形質
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
尾叉長(cm) | 60.7 | 62.8 | 66.4 | 66.8 | 70.5 | 68.1 | 68 | 66.8 |
体重(kg) | 2.17 | 2.53 | 3.05 | 3.14 | 3.69 | 3.53 | 3.3 | 3.18 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.42 | 0.60 | 0.61 | 0.71 | 0.72 | 0.70 | 0.65 | 0.68 |
孕卵数(粒/尾) | 2,210 | 2,799 | 2,651 | 3,141 | 3,134 | 3,062 | 2,849 | 3,015 |
卵重量(g/粒) | 0.19 | 0.21 | 0.23 | 0.23 | 0.23 | 0.23 | 0.23 | 0.23 |
生殖腺指数 | 19.3 | 24.3 | 20.2 | 23.6 | 19.5 | 20.1 | 19.8 | 22.2 |
織笠川(11月24日、12月1日)
織笠川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,502粒、卵1粒あたりの重量は0.22g、生殖腺指数は17.6でした。
前年と比較して、孕卵数及び卵重量並びに生殖腺指数は3~5歳魚で減少しました(表5)。
表5 織笠川 年齢別繁殖形質
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
尾叉長(cm) | 63.0 | 61.6 | 67.2 | 68.0 | 71.2 | 70.1 | 68.5 | 68.1 |
体重(kg) | 2.09 | 2.39 | 3.03 | 3.21 | 3.54 | 3.60 | 3.2 | 3.28 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.35 | 0.50 | 0.55 | 0.65 | 0.60 | 0.72 | 0.57 | 0.66 |
孕卵数(粒/尾) | 1,790 | 2,355 | 2,490 | 2,728 | 2,548 | 2,892 | 2,502 | 2,726 |
卵重量(g/粒) | 0.19 | 0.22 | 0.22 | 0.24 | 0.24 | 0.25 | 0.22 | 0.24 |
生殖腺指数 | 16.5 | 21.7 | 18.0 | 20.5 | 16.8 | 20.4 | 17.6 | 20.4 |
3.その他
平成28年12月10日現在の秋サケ回帰状況を見ると、回帰尾数・回帰重量ともに、前年及び震災以降で最も漁獲が低調であった平成24年度同期累計(257万尾、6,794トン)をも下回っています。
今期は12月上旬が沿岸回帰の中心と予測していましたが、現時点では11月下旬が回帰のピークとなりその尾数も前年度を下回っています。
調査河川の年齢査定結果からは、各年級のオス・メスともに平均尾叉長はほぼ前年度並みでありながら、肥満度及び生殖腺指数が前年よりも低い値となっていることから、ヤセた魚が多いことも今期の特徴となっています。
また、河川捕獲数も少ないため、大部分のふ化場では、増殖事業用種卵確保が計画を下回る状況にあり、多くのふ化場で海産親魚からの種卵確保が行われています。増殖事業者においては、より一層の種卵確保と移殖による収容計画達成に努めて下さい。