平成29年1月20日
12月31日までの回帰尾数は、前年比95%の289万尾。
体重・肥満度は、前年並み~小さい傾向が認められます。
1.回帰資源量
12月31日現在の本県回帰尾数は289万尾(8,438トン)で前年比95%(重量比91%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比97%(262万尾)、河川漁獲は前年比71%(21万尾)。種卵確保対策による海産親魚は前年比125%(5.3万尾)。河川そ上率は7%と前年(10%)を下回りました。また、当センターが発表した平成28年12月下旬までの回帰予測尾数は379万尾(200万尾~609万尾)であり、予測の範囲内にありますが予測尾数の76%に留まりました。
2.回帰親魚調査結果(後期:12月11日から12月31日までの分)
12月12日~12月27日に片岸、織笠、津軽石川において回帰親魚調査(片岸川209尾、織笠川399尾、津軽石川398尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚17%、4歳魚45%、5歳魚37%(H27:3歳魚8%、4歳魚81%、5歳魚6%)、メスは3歳魚7%、4歳魚42%、5歳魚47%(H26:3歳魚4%、4歳魚76%、5歳魚8%)で、前年同期と比べると3歳魚及び5歳魚の割合が高く、4歳魚の割合が低い傾向にありました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:831尾、H27:1,564尾、対前年比53%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、5歳魚が前年を上回り、4歳魚が前年を下回っています(図3)。特に、5歳魚は前年の29%の回帰となっています。
織笠川
オスは3歳魚7%、4歳魚74%、5歳魚19%(H27:3歳魚31%、4歳魚45%、5歳魚24%)、メスは3歳魚4%、4歳魚71%、5歳魚23%(H27:3歳魚11%、4歳魚48%、5歳魚37%)で、前年同期と比べると、4歳魚の割合が高く、3歳魚及び5歳魚の割合が低い傾向にありました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:2,812尾、H27:3,833尾、対前年比73%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年を上回り、3歳魚が前年の22%、5歳魚が前年の49%となっています(図5)。
特に、3歳魚は前年の30%、5歳魚は前年の52%となっています。
津軽石川
オスは3歳魚8%、4歳魚52%、5歳魚37%(H27:3歳魚4%、4歳魚59%、5歳魚24%)、メスは3歳魚6%、4歳魚70%、5歳魚23%(H27:3歳魚10%、4歳魚48%、5歳魚30%)で、前年同期と比べると、オスの5歳魚及びメスの4歳魚の割合が高い傾向にありました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H28:13,541尾、H27:19,711尾、対前年比68%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚及び4歳魚、5歳魚ともに前年の下回り、3歳魚は前年の68%、4歳魚79%、5歳魚75%となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
オスの平均尾叉長は65.3cm、体重は2.8kg、肥満度は9.8、また、メスの平均尾叉長は67.8cm、体重は3.2kg、肥満度は9.9でした。全体平均を前年同期と比較すると、オスでは尾叉長、体重、肥満度ともに前年並み、メスでは体重及び肥満度が低い傾向が認められました(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
オス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 59.2 | 59.3 | 2.8 | 2.0 | 13.2 | 9.6 |
4歳魚 | 64.7 | 65.9 | 2.5 | 2.9 | 9.2 | 9.7 |
5歳魚 | 68.8 | 75.5 | 3.0 | 4.6 | 9.1 | 10.2 |
全体平均 | 65.3 | 65.7 | 2.8 | 2.9 | 9.8 | 9.7 |
メス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 58.1 | 61.8 | 1.9 | 2.5 | 9.7 | 10.3 |
4歳魚 | 65.7 | 66.2 | 2.7 | 3.0 | 9.5 | 10.4 |
5歳魚 | 70.3 | 71.7 | 3.6 | 4.3 | 10.2 | 11.4 |
全体平均 | 67.8 | 67.7 | 3.2 | 3.4 | 9.9 | 10.5 |
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
織笠川
オスの平均尾叉長は66.6cm、体重は2.8kg、肥満度は9.0、また、メスの平均尾叉長は68.2cm、体重は3.2kg、肥満度は9.8でした。全体平均を前年同期と比較すると、オス及びメスともに尾叉長、体重、肥満度が低い傾向が認められました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
オス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 59.3 | 60.1 | 1.8 | 2.0 | 8.6 | 9.1 |
4歳魚 | 66.4 | 68.2 | 2.7 | 3.1 | 9.1 | 9.4 |
5歳魚 | 70.3 | 73.6 | 3.2 | 4.1 | 9.1 | 9.9 |
全体平均 | 66.6 | 67.1 | 2.8 | 3.0 | 9.0 | 9.4 |
メス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 62.3 | 62.0 | 2.3 | 2.3 | 9.5 | 9.4 |
4歳魚 | 67.3 | 69.0 | 3.0 | 3.4 | 9.7 | 10.2 |
5歳魚 | 71.9 | 72.3 | 3.8 | 4.1 | 10.2 | 10.6 |
全体平均 | 68.2 | 69.7 | 3.2 | 3.6 | 9.8 | 10.3 |
津軽石川
オスの平均尾叉長は73.2cm、体重は4.2kg、肥満度は9.9、また、メスの平均尾叉長は68.8cm、体重は3.4kg、肥満度は10.2でした。全体平均を前年同期と比較すると、オス及びメスともに尾叉長、体重、肥満度が低い傾向が認められました(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
オス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 62.1 | 72.1 | 0.9 | 3.9 | 3.7 | 9.9 |
4歳魚 | 71.5 | 75.8 | 1.4 | 4.6 | 3.8 | 10.3 |
5歳魚 | 77.5 | 80.5 | 3.0 | 5.5 | 6.2 | 10.4 |
全体平均 | 73.2 | 77.7 | 4.2 | 5.0 | 9.9 | 10.4 |
メス | 尾叉長 (cm) |
体重 (kg) |
肥満度 | |||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
3歳魚 | 60.3 | 64.2 | 2.1 | 2.7 | 9.6 | 10.2 |
4歳魚 | 68.0 | 71.7 | 3.2 | 4.0 | 10.0 | 10.7 |
5歳魚 | 73.1 | 77.6 | 4.3 | 5.1 | 10.7 | 10.9 |
全体平均 | 68.8 | 73.7 | 3.4 | 4.4 | 10.2 | 10.8 |
(3)孕卵数および卵重量
津軽石川(12月16日、12月27日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,909粒、卵1粒あたりの重量は0.23g、生殖腺指数は19.0でした。
前年と比較して、4歳魚及び5歳魚の孕卵数、卵重量で減少し、生殖腺指数は4歳魚で微増となりました(表4)。
表4 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | H28 | H27 | |
尾叉長(cm) | 68.3 | 70.2 | 73.1 | 73.9 | 79.2 | 71.5 | 76.2 | |
体重(kg) | 3.41 | 3.63 | 4.38 | 4.40 | 5.56 | 3.92 | 4.99 | |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.68 | 0.62 | 0.84 | 0.80 | 1.02 | 0.68 | 0.91 | |
孕卵数(粒/尾) | 3,103 | 2,731 | 3,534 | 3,274 | 3,626 | 2,909 | 3,504 | |
卵重量(g/粒) | 0.22 | 0.23 | 0.25 | 0.25 | 0.28 | 0.23 | 0.26 | |
生殖腺指数 | 19.9 | 19.6 | 19.3 | 18.0 | 18.4 | 19 | 18.4 |
3.年齢別回帰尾数
当センターの調査河川である片岸川、織笠川、津軽石川のデータを県全体に引き延ばした年齢別の回帰尾数(12月31日まで)と平成28年度回帰予測値(全数)を図8及び図9並びに表5に示します。
表5 平成28 年度秋サケ回帰予測値と実績値(単位:千尾)
2歳 | 3歳 | 4歳 | 5歳 | 6歳 | 7歳 | 計 | ||
予測値 | ① | 19 | 248 | 2,249 | 1,326 | 77 | 0 | 3,919 |
回帰尾数 | ② | 3 | 189 | 1,816 | 814 | 43 | 4 | 2,869 |
対予測値 | ②÷① | 16% | 76% | 81% | 61% | 56% | – | 73% |
予測値偏差 | ②-① | △16 | △59 | △433 | △512 | △34 | 4 | △1,050 |
図8を見ると、平成28年度の秋サケ回帰尾数は、平成24年度及び平成27年度の95%となっています。また、図9より平成28年度の年齢組成(暫定値)と予測値を比較すると、3歳魚の割合がほぼ同等、4歳魚の割合が高く、5歳魚の割合が低くなっています。
また、表5を見ると、予測値に対する実際の回帰尾数の割合は全ての年齢で予測値を下回っており、4歳魚では予測の81%、5歳魚で61%となっています。特にも5歳魚の回帰が予測値を大幅に下回り、その予測値と回帰尾数の差は512千尾と総回帰尾数と予測値の差(1,050千尾)の49%を占めています。
4.その他
採卵可能な河川が少なくなりましたが、種卵が不足している増殖事業者においては、可能な限り計画を達成できるよう種卵確保と移殖入に努めて下さい。