2017年コウナゴ情報

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平成29年3月28日発行

平成29年2月に実施したコウナゴ稚仔魚分布調査の結果を取りまとめましたので、現在の海況をふまえたコウナゴ(イカナゴ当歳魚)漁況の見通しを次のとおりお知らせいたします。

期間:平成29年4月~6月

魚種:コウナゴ(イカナゴ当歳魚)

海域:岩手県沿岸

漁業:コウナゴ棒受網漁業(火光利用敷網漁業)

漁況予測:県北海域、県南海域ともに、好調であった前年を下回るが、近年平均を上回る

平成28年漁期の状況

平成28年漁期のコウナゴ棒受け網漁法によるコウナゴ水揚量は、2~6月の沿岸水温が高めに推移したことを受け、比較的高い水準であった平成27年を上回り、近年平均(平成18~27年10ヶ年平均値)を上回る水準となりました。水揚量は県北海域(久慈魚市場)が50.4トン(前年の1.2倍)、県南海域(宮古、山田、釜石、大船渡の4魚市場計)が37.7トン(前年の2.3倍)でした(図1)。また、1隻1日あたりの水揚量(以下、CPUEという)は、県北海域が211.7kg/隻/日(前年の1.2倍)、県南海域が139.7kg/隻/日(前年の1.7倍)となり、両海域ともに前年を上回りました(図2)。

見通しの背景

1.平成29年イカナゴ稚仔魚調査結果

2月27~28日に、図3に示す調査点において漁業指導調査船北上丸により稚魚ネットによるコウナゴ稚仔魚調査(水深15m、10分間水平曳き)を実施しました。

(1) 分布密度
コウナゴ稚仔魚の分布密度(8点平均)は、県北海域では7.4尾/100m3(前年2.3尾/100m3、過去15年平均4.1尾/100m3)、県南海域では
8.4尾/100m3(前年60.6尾/100m3、過去15年平均16.0尾/100m3)でした。県北海域では前年並びに近年平均を上回り、県南海域では前年並びに近年平均を下回りました。コウナゴ稚仔魚分布密度とCPUEの変動には、近年、同様の傾向が見られます。(図4)。

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図4. 調査時の仔魚分布密度とCPUEの経年変化

(2) 体長組成
平成28年と平成29年のコウナゴ稚仔魚の体長組成を図5に示しました。平成29年は、県北海域では3.5mm~11.5mmの範囲で5.0mm台と8.5mm台にモードがありました。一方、県南海域では3.5mm~12.5mmの範囲で7.0mm台にモードがありました。南北ともに、前年に比べ大型の個体の割合が高くなっており、特に県南海域でその傾向が顕著でした。
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図5. 採捕したコウナゴ稚仔魚の体長組成

2.平成29年度漁況予測

漁期中CPUEとイカナゴ仔稚魚分布密度及び水温との関係
平成29年漁期(4~6月)のコウナゴ漁況を予測するため、漁期中CPUEに影響に及ぼすと推測される指標値を説明変数として海域別に重回帰分析を行い、変数減少法により説明変数選択を行いました。その結果、県北海域では漁期前(3月)の青森県津軽海峡西側海面水温、及び漁期中(4月)のトドヶ埼10海里地点水温と、県南海域ではコウナゴ仔稚魚分布密度、及び漁期中の尾崎10海里地点水温と正の相関が認められ(図6)、いずれの海域においても漁期中水温が高い年ほどCPUEが高くなる傾向が認められました。
求められた関係式に基づいて今年度の漁期中CPUEを算出した結果、県北部では194.0kg/隻/日、県南部では76.7kg/隻/日となり、両海域ともに高水準であった前年を下回るものの、平均を上回る水準となると予測されました(図7)。

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図6. CPUEと稚仔魚分布密度、水温の関係
※白丸はH28年CPUE、矢印はH29年CPUE予測値を示す。

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図7.CPUEの推移とH29年予測値
※矢印はH29年CPUE予測値を示す。

漁期中CPUEと仔稚魚分布密度および漁期中水温との関係式
県北海域:漁期中CPUE=63.39×(3月津軽海峡西側海面水温)
+23.48×(4月トドヶ埼0海里地点水温)-517.09
自由度調整済決定係数:R2=0.601、P=0.001*(*:5%有意水準)
県南海域:漁期中CPUE=0.38×(仔稚魚分布密度)+10.56×(4月尾崎0海里地点水温)-1.204
自由度調整済決定係数:R2=0.549、P=0.002*

説明変数の説明
県北海域:
①青森県津軽海峡西側海面水温(3月):札幌管区気象台海面水温情報より
②トドヶ埼0海里地点の20m深水温(4月):岩手丸定線海洋観測結果より
県南海域:
①稚仔魚分布密度:コウナゴ稚仔魚調査における県南海域の稚仔魚分布密度より
②尾埼沖0海里地点の20m深水温(4月):岩手丸定線海洋観測結果より

3.他県の情報等

青森県:2月9日に行われた陸奥湾湾口におけるイカナゴ稚仔分布調査の結果、陸奥湾湾口では稚仔魚が全く採集されず採集数は過去最低となった。(青森県産業技術センター水産総合研究所発行:ウオダス漁海況速報No.1943)。
宮城県:3月13日に行われたコウナゴ漁期前調査の結果、牡鹿半島周辺海域では過去10年平均を上回り、仙台湾では過去10年平均を下回った。(宮城県水産技術総合センター発行:春漁情報第7報)。
現況では本県沿岸域の水温は高めで推移しており、海洋環境としてはコウナゴ来遊に好適な条件であると考えられます。しかし、県北海域において漁獲対象となると考えられる陸奥湾由来のコウナゴは、資源量水準が極めて低い状況が継続している他、県南海域での漁獲加入が見込まれる宮城県由来のコウナゴは、牡鹿半島周辺では平均を上回りましたが、仙台湾では平均を下回る水準となっています。これらのことから、今年度は隣県由来のコウナゴ資源の漁獲加入が少ない可能性があり、海況条件が好適であったとしても漁獲が伸び悩むことも考えられます。
また、平成29年は3月下旬から県南を中心にコウナゴの水揚が開始されており、例年よりも水揚開始が早くなっています。

4.まとめ

平成29年のコウナゴ稚仔魚の分布密度は、県北海域では前年並びに平均を上回り、県南海域では前年並びに平均を下回った。コウナゴ稚仔魚の体長は、県北海域では3.5mm~11.5mmの範囲で5.0mm台と8.5mm台にモード。県南海域では3.5mm~12.5mmの範囲で7.0mm台にモード。南北ともに、前年に比べ大型の個体の割合が高く、特に県南海域で顕著。CPUEは、県北、県南両海域において好調であった前年を下回るが、近年平均を上回ると予測。また、平成29年は水揚の開始が早くなっている。
現況の海況条件はコウナゴ来遊に好適であると考えられるが、青森県、宮城県の稚仔魚分布状況から隣県由来の漁獲加入は少ない可能性がある。海況条件が好適であったとしても漁獲が伸びない可能性がある。

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別表 平成29年コウナゴ仔稚魚調査結果、漁期中CPUEデータ

※分布密度は、稚魚ネット、水深15m、10分間水平曳きによる採集尾数から算出
※平成15年以降は、県南海域の調査定点を変更している

担当:漁業資源部