平成29年7月28日
予測期間:予測期間:平成29年9月~平成30年2月
予測海域:岩手県沿岸
秋サケ回帰予測尾数(範囲):367万尾(208~526万尾)
秋サケ回帰予測重量(範囲):10,934トン(5,764~16,760トン)
回帰時期:11月下旬~12月上旬中心
今年度の回帰数量は、震災前5ヶ年平均の半分以下と、依然として低い水準が予測されます。
昨年と同様に、採卵計画の達成が難しくなる可能性があることから、漁期前に種卵確保に向けた関係者の協力体制を確認して下さい。
1.平成29年度の予測結果
回帰数量・重量の推定
過去の幼稚魚調査の結果と昨年度の年齢別漁獲数量から、平成29年度の本県秋サケ回帰数量を推定したところ、367万尾、10,934トンとなり、平成28年度実績と比べて若干上回るものの、震災前の平均値(平成18~22年度の平均値。以下同じ)を大きく下回る見込みです(表1)。また、年齢別にみると、各年齢とも前年よりも増加しますが、震災前の平均値と比較して依然少ない見通しです(表2)。
表1 平成29年度予測値、平成28・27年度実績値及び震災前の平均値
平成29年度予測値 (95%予測範囲) |
平成28年度 実績値 |
平成27年度 実績値 |
震災前の 平均値 |
|
回帰尾数(万尾) | 367 (208~526) |
297 | 310 | 836 |
回帰重量(トン) | 10,934 (5,764~16,760) |
8,746 | 9,535 | 26,741 |
表2 3~5歳魚の平成29年度予測値、平成28・27年度実績値及び震災前の平均値
平成29年度 予測値 |
平成28年度 実績値 |
平成27年度 実績値 |
震災前の平均値 | |
3歳魚(千尾) | 389 | 222 | 355 | 588 |
4歳魚(千尾) | 2,102 | 1,666 | 2,090 | 4,456 |
5歳魚(千尾) | 1,096 | 1,059 | 493 | 3,097 |
回帰時期の推定
3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から、平成29年度の回帰時期は11月下旬から12月上旬が中心になると予測されます(図1)。平成28年度の回帰実績と比べると8月から10月下旬及び11月下旬から12月上旬、平成27年度と比べると8月から10月上旬及び12月中旬から1月上旬の回帰尾数が増加すると予測されます。
過去5年間の平均旬別河川そ上率から算出される平成29年度の旬別河川そ上尾数は、12月中旬をピークとする42万尾(予測下限値24万尾程度)と推定されます(図2)。
平成28、27年度と比較して、11月中旬から12月上旬のそ上尾数が減少すると予測されることから、10月中旬頃から海産親魚の確保など種卵確保対策が必要になると考えられます。
2.予測方法
秋サケ回帰予測尾数の予測では、2歳魚から6歳魚までの年齢別の回帰尾数を計算し、最後にすべての年齢の予測値を合計して予測尾数としています。
2歳魚と3歳魚の推定方法
2歳魚と3歳魚の回帰尾数の予測には、岩手県沿岸におけるサケ幼稚魚の分布密度調査の結果を用いています。分布密度調査は、平成15年以降、5月下旬から6月上旬頃にかけて、漁業指導調査船岩手丸により実施しています。平成19年(平成18年級)以降、分布密度は低下傾向にあります(図3)。
2歳魚と3歳魚の予測では、これまでの調査で得られた同一の年級の幼稚魚の分布密度と回帰尾数の関係式に、今年度回帰する平成26、27年級の幼稚魚の分布密度を代入して予測尾数を算出しています。
4歳魚~6歳魚の推定方法
4歳から6歳魚の予測では、年級(生まれた年)毎の年齢別回帰尾数のデータを用いています。このため、毎年、県内の各河川にそ上した親魚の鱗を用いて年齢査定を行い、回帰した親魚の年齢組成結果から、年級毎の年齢別回帰尾数をとりまとめています(図4)。
4~6歳魚の回帰尾数の予測については、同一年級のn-1歳魚とn歳魚(図5は、3歳魚と4歳魚の比較例)の1次回帰式を求め、昨年度n-1歳で回帰した尾数を代入して今年度n歳魚の予測尾数を算出しました。
回帰時期の推定方法
回帰時期の予測は、上述の方法で回帰尾数の総数を算出した後、3~5年間のふ化場毎の卵収容実績や旬別の河川回帰率などを勘案し、回帰尾数の総数を旬別に振り分けています。
重量の推定方法
これまでの調査結果より、片岸川、織笠川及び津軽石川における3歳魚の平均魚体重(雌雄込み)と翌年度の全年齢の平均魚体重の関係式を求めています。(図6)
秋サケ回帰予測尾数は、回帰予測尾数に、この平均魚体重を乗じて求めました。