平成29年11月21日
11月10日までの回帰尾数は、前年比110%の90万尾。
尾叉長・体重・肥満度は、前年度を上回る傾向が認められます。
調査河川によるそ上魚の年齢組成は、3歳魚の割合が前年よりやや高くなっています。
増殖事業用種卵の確保が困難な状況にありますので、より一層の種卵確保に努めてください。
1.回帰資源量
11月10日現在の本県回帰尾数は90.1万尾(2,600トン)で前年比110%(重量比117%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比106%(78.9万尾)、 河川漁獲は前年比159%(9.4万尾)。種卵確保対策による海産親魚は前年比135%(1.8万尾)。河川そ上率は10.4%と前年(7.2%)を上回りましたが、これは平成28年度の台風10号により被災した採捕施設の一部が復旧したことによります。また、当センターが発表した前期までの回帰予測尾数は150万尾であり、予測の60.1%となりました。
2.回帰親魚調査結果(前期:11月10日までの分)
10月4日~11月9日に片岸川、織笠川、津軽石川において回帰親魚調査(片岸川381尾、織笠川213尾、津軽石川222尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚11%、4歳魚69%、5歳魚19%(H28:3歳魚8%、4歳魚57%、5歳魚31%)、メスは3歳魚7%、4歳魚62%、5歳魚30%(H28:3歳魚4%、4歳魚61%、5歳魚31%)で、前年同期と比べるとオス、メスともに3歳魚の割合が高くなり、オスでは4歳魚の割合が高い一方で5歳魚の割合が低く、メスでは4、5齢の割合がほぼ前年並みとなりました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H29:3,608尾、H28:3,991尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の140%、一方、5歳魚は前年の70%の回帰となっています(図3)。
織笠川
オスは3歳魚42%、4歳魚44%、5歳魚13%(H27:3歳魚19%、4歳魚73%、5歳魚6%)、メスは3歳魚34%、4歳魚60%、5歳魚7%(H27:3歳魚11%、4歳魚73%、5歳魚14%)で、前年同期と比べると、3歳魚の割合が高く、4歳魚の割合が低い傾向にありました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H29:526尾、H28:1,567尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、すべての年齢で前年度を下回り、3歳魚が前年の83%、4歳魚が24%、5歳魚は前年の35%、全体では前年の34%の回帰となっています(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚7%、4歳魚69%、5歳魚23%(H28:3歳魚3%、4歳魚72%、5歳魚23%)、メスは3歳魚10%、4歳魚54%、5歳魚36%(H28:3歳魚9%、4歳魚77%、5歳魚12%)で、前年同期と比べると、オスの4、5歳魚は前年と同等、メスは4歳魚の割合が低く、5歳魚の割合が高くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H29:511尾 H28:2,968尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、すべての年齢で前年を下回り、3歳魚が前年の25%、4歳魚は前年の14%、5歳魚は前年の29%、全尾数で前年の17%の回帰となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は68.8cm、体重は3.4kg、肥満度は10.3、また、メスの平均尾叉長は67.3cm、体重は3.2kg、肥満度は10.4でした。前年同期と比較すると、オスの3歳魚・4歳魚・5歳魚で尾叉長、体重ともに大きく、オス、メスのすべての年齢で体重が重く肥満度が高い傾向が認められました。(表1)。
(オス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 61.2 | 60.1 | 2.4 | 2.0 | 10.3 | 9.1 |
4歳魚 | 69.2 | 66.1 | 3.5 | 2.7 | 10.4 | 9.2 |
5歳魚 | 71.7 | 70.6 | 3.8 | 3.3 | 10.2 | 9.2 |
全体平均 | 68.8 | 67.4 | 3.4 | 2.9 | 10.3 | 9.2 |
(メス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 62.2 | 60.2 | 2.5 | 2.0 | 10.2 | 9.1 |
4歳魚 | 66.8 | 65.1 | 3.1 | 2.8 | 10.5 | 9.9 |
5歳魚 | 69.4 | 69.7 | 3.5 | 3.4 | 10.3 | 10.0 |
全体平均 | 67.3 | 66.6 | 3.2 | 3.0 | 10.4 | 9.9 |
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
織笠川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は64.7cm、体重は2.8 kg、肥満度は9.9、また、メスの平均尾叉長は63.8cm、体重は2.7kg、肥満度は10.1でした。前年同期と比較すると、オス、メスともに尾叉長はやや小さいものの、体重及び肥満度は前年を上回る傾向が認められました。(表2)。
(オス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 60.6 | 62.2 | 2.2 | 2.4 | 9.6 | 9.6 |
4歳魚 | 66.4 | 67.2 | 3.1 | 2.8 | 10.2 | 9.1 |
5歳魚 | 70.9 | 65.4 | 3.7 | 2.4 | 10.1 | 8.4 |
全体平均 | 64.7 | 66.2 | 2.8 | 2.7 | 9.9 | 9.2 |
(メス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 60.1 | – | 2.1 | – | 9.8 | – |
4歳魚 | 65.6 | 63.6 | 2.9 | 2.5 | 10.2 | 9.5 |
5歳魚 | 66.2 | 66.8 | 3.1 | 2.8 | 10.6 | 9.4 |
全体平均 | 63.8 | 64.0 | 2.7 | 2.5 | 10.1 | 9.5 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は71.0cm、体重は3.7kg、肥満度は10.1、また、メスの平均尾叉長は68.3cm、体重は3.4kg、肥満度は10.3でした。前年同期と比較すると、4、5歳魚のオス、メスでは尾叉長、体重、肥満度のすべてで前年を上回り、メスの3歳魚で肥満度が高い傾向が認められました(表3)。
(オス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 62.1 | – | 2.4 | – | 9.9 | – |
4歳魚 | 70.9 | 69.1 | 3.6 | 3.1 | 10.1 | 9.1 |
5歳魚 | 74.3 | 73.3 | 4.3 | 3.7 | 10.5 | 9.3 |
全体平均 | 71.0 | 69.9 | 3.7 | 3.2 | 10.1 | 9.1 |
(メス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 60.6 | 64.0 | 2.4 | 2.5 | 10.5 | 9.4 |
4歳魚 | 67.0 | 66.0 | 3.1 | 2.8 | 10.1 | 9.7 |
5歳魚 | 72.6 | 67.5 | 4.1 | 3.0 | 10.5 | 9.8 |
全体平均 | 68.3 | 66.1 | 3.4 | 2.8 | 10.3 | 9.6 |
(3)孕卵数および卵重量
片岸川(11月6日測定時)
片岸川のメス1尾あたりの孕卵数は平均3,239粒、卵1粒あたりの重量は0.24g、生殖腺指数は22.2でした。
前年と比較して、孕卵数は3~5歳魚で増加し、特にも4歳魚では130%となりました。卵重量及び生殖腺指数ともに3~5歳魚で増加しました(表4)。
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
尾叉長(cm) | 63.6 | 60.7 | 67.3 | 66.4 | 70.5 | 70.5 | 68.1 | 68.0 |
体重(kg) | 2.70 | 2.17 | 3.40 | 3.05 | 3.80 | 3.69 | 3.47 | 3.30 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.63 | 0.42 | 0.79 | 0.61 | 0.77 | 0.72 | 0.77 | 0.65 |
孕卵数(粒/尾) | 2,880 | 2,210 | 3,363 | 2,651 | 3,152 | 3,134 | 3,239 | 2,849 |
卵重量(g/粒) | 0.22 | 0.19 | 0.24 | 0.23 | 0.25 | 0.23 | 0.24 | 0.23 |
生殖腺指数 | 23.5 | 19.3 | 23.2 | 20.2 | 20.4 | 19.5 | 22.2 | 19.8 |
3.その他
平成29年11月10日現在の秋サケ回帰状況を見ると、回帰尾数・回帰重量、河川捕獲数ともに前年を上回っております。調査河川合計の回帰親魚の年齢査定結果は、3歳魚13%、4歳魚64%、5歳魚22%(平成28年度結果:3歳魚8%、4歳魚67%、5歳魚22%)となり、3歳魚の割合がやや高い傾向にありました。
河川別の捕獲数は、河川により極端な状況となっているため、大部分のふ化場では増殖事業用種卵確保が困難な状況にあり、海産親魚から種卵確保する必要があります。
今後も回帰が低調に推移すれば、なお一層の種卵確保対策を講じる必要がありますので、増殖事業者においては、情報収集に努めるとともに、より一層の種卵確保に努めて下さい。