平成30年1月15日
12月31日までの回帰尾数は、前年比81%の235万尾。
魚体サイズ(尾叉長・体重・肥満度)は、平年並みとなっています。
1.回帰資源量
12月31日現在の本県回帰尾数は235万尾(7,091トン)で前年比81%(重量比84%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は202万尾(前年比77%)、河川漁獲は27万尾(前年比128%)。種卵確保対策による海産親魚は5.5万尾(前年比103%)、1尾あたりの平均体重は3.02kgと前年(2.92kg)をやや上回りました。また、平成28年の台風第10号の被害を受けたふ化場の一部で河川採捕を再開したこともあり、河川そ上率は11%と前年(7%)を上回りました。
なお、当センターが発表した12月末までの回帰予測尾数(全数)は359万尾であり、予測の65%となりました。
2.回帰親魚調査結果(後期:12月11日から12月31日までの分)
12月11日から12月27日にかけて、片岸、織笠、津軽石の各河川において回帰親魚調査(片岸川222尾、織笠川246尾、津軽石川396尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚33%、4歳魚49%、5歳魚14%(H28:3歳魚17%、4歳魚45%、5歳魚37%)、メスは3歳魚15%、4歳魚56%、5歳魚18%(H28:3歳魚7%、4歳魚42%、5歳魚47%)で、前年同期と比べるとオス・メスともに3歳魚及び4歳魚の割合が高く、5歳魚の割合が低下しています(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H29:865尾、H28:832尾、対前年比104%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、中期に引き続いて3歳魚及び4歳魚が昨年実績を上回り、3歳魚は前年の195%、4歳魚は127%、一方で5歳魚は前年の40%となりました(図3)。
織笠川
オスは3歳魚28%、4歳魚53%、5歳魚17%(H28:3歳魚7%、4歳魚74%、5歳魚19%)、メスは3歳魚20%、4歳魚53%、5歳魚26%(H28:3歳魚4%、4歳魚71%、5歳魚23%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに3歳魚の割合が上回る一方、4歳魚の割合が低下しました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H29:2,084尾、H28:2,812尾、対前年比74%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚が前年を大幅に上回り前年の324%、4歳魚及び5歳魚が前年を下回り、4歳魚は前年の54%、5歳魚は74%となりました。(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚2%、4歳魚44%、5歳魚45%(H28:3歳魚8%、4歳魚52%、5歳魚37%)、メスは3歳魚3%、4歳魚51%、5歳魚45%(H28:3歳魚6%、4歳魚70%、5歳魚23%)で、前年同期と比べると、5歳魚の割合が高くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(H29:18,660尾、H28:13,541尾、対前年比138%)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚がほぼ同数、5歳魚は前年を上回る207%となりました(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は64.0cm、体重は2.6kg、肥満度※は9.7、メスの尾叉長は67.1cm、体重は3.1kg、肥満度は10.0でした。
前年同期と比較すると、オスの3歳魚では体重及び肥満度は低かったものの、4歳魚及び5歳魚では体重及び肥満度が高くなりました。メスでは4歳魚の体重及び肥満度が高くなりましたが、それ以外では前年並みでした(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 58.2 | 59.2 | 1.8 | 2.8 | 9.1 | 13.2 |
4歳魚 | 66.0 | 64.7 | 2.9 | 2.5 | 10.0 | 9.2 |
5歳魚 | 69.2 | 68.8 | 3.4 | 3.0 | 10.0 | 9.1 |
全体平均 | 64.0 | 65.3 | 2.6 | 2.8 | 9.7 | 9.8 |
(メス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 59.7 | 58.1 | 2.1 | 1.9 | 9.7 | 9.7 |
4歳魚 | 66.9 | 65.7 | 3.1 | 2.7 | 10.2 | 9.5 |
5歳魚 | 69.8 | 70.3 | 3.5 | 3.6 | 10.1 | 10.2 |
全体平均 | 67.1 | 67.8 | 3.1 | 3.2 | 10.0 | 9.9 |
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
織笠川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は67.1cm、体重は3.0kg、肥満度は9.6、メスの尾叉長は67.8cm、体重は3.2kg、肥満度は10.0でした。
前年同期と比較すると、オスの各年齢では尾叉長、体重及び肥満度が高くなりましたが、メスでは3歳魚及び4歳魚の肥満度が高くなりました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 61.0 | 59.3 | 2.1 | 1.8 | 8.9 | 8.6 |
4歳魚 | 68.2 | 66.4 | 3.2 | 2.7 | 9.8 | 9.1 |
5歳魚 | 73.1 | 70.3 | 4.1 | 3.2 | 10.2 | 9.1 |
全体平均 | 67.1 | 66.6 | 3.0 | 2.8 | 9.6 | 9.0 |
(メス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 60.5 | 62.3 | 2.2 | 2.3 | 9.8 | 9.5 |
4歳魚 | 68.6 | 67.3 | 3.3 | 3.0 | 10.0 | 9.7 |
5歳魚 | 71.4 | 71.9 | 3.7 | 3.8 | 10.1 | 10.2 |
全体平均 | 67.8 | 68.2 | 3.2 | 3.2 | 10.0 | 9.8 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は76.1cm、体重は4.7kg、肥満度は10.4、メスの尾叉長は72.3cm、体重は4.1kg、肥満度は10.8でした。
前年同期と比較すると、オス・メスともに尾叉長、体重及び肥満度が高くなりました(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 62.8 | 62.1 | 2.4 | 2.2 | 9.4 | 9.1 |
4歳魚 | 72.6 | 71.5 | 4.0 | 3.7 | 10.2 | 9.8 |
5歳魚 | 79.2 | 77.5 | 5.4 | 4.8 | 10.6 | 10.0 |
全体平均 | 76.1 | 73.2 | 4.7 | 4.2 | 10.4 | 9.9 |
(メス)
尾叉長(cm) | 体 重(kg) | 肥満度 | ||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
3歳魚 | 62.4 | 60.3 | 2.4 | 2.1 | 9.8 | 9.6 |
4歳魚 | 69.8 | 68.0 | 3.7 | 3.2 | 10.7 | 10.0 |
5歳魚 | 75.3 | 73.1 | 4.7 | 4.3 | 10.9 | 10.7 |
全体平均 | 72.3 | 68.8 | 4.1 | 3.4 | 10.8 | 10.2 |
(3)孕卵数および卵重量
津軽石川(12月16日、12月27日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均3,554粒、卵1粒あたりの重量は0.25g、生殖腺指数は20.3でした。
4歳魚及び5歳魚の各測定値を前年と比較すると、5歳魚の生殖腺指数※以外の測定値で前年を上回りました(表4)。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 津軽石川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | H29 | H28 | |
尾叉長(cm) | 62.0 | 0.0 | 70.4 | 70.2 | 76.0 | 73.9 | 73.3 | 71.5 |
体重(kg) | 2.36 | 0.00 | 3.82 | 3.69 | 4.84 | 4.40 | 4.35 | 3.96 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.44 | 0.00 | 0.89 | 0.62 | 0.86 | 0.80 | 0.87 | 0.68 |
孕卵数(粒/尾) | 2,502 | 0 | 3,808 | 2,731 | 3,369 | 3,274 | 3,554 | 2,909 |
卵重量(g/粒) | 0.18 | 0.00 | 0.24 | 0.23 | 0.26 | 0.25 | 0.25 | 0.23 |
生殖腺指数 | 18.6 | 0.0 | 23.4 | 16.8 | 17.8 | 18.0 | 20.3 | 17.1 |
3.その他
(1)回帰の状況及び年齢組成について
平成29年12月31日時点での回帰尾数235万尾は、予測の65%となり、平成25年度の回帰尾数の44%、震災以降で最も漁獲が低調であった平成28年度の79%、過去最高を記録した平成8年度の2,450万尾の約10%となっています(図8)。
片岸川、織笠川、津軽石川のそ上魚の年齢組成をもとに、12月31日までの県全体の年齢別回帰尾数を求め、平成29年度の予測値の年齢組成と比較すると、回帰魚の年齢組成は4歳魚:5%低、5歳魚:4%高となりました。また、平成28年度との比較では、3歳魚が7%高く、5歳魚が6%低くなりました(図9)。
(2)その他
12月31日時点での県全体の計画卵数に対する採卵の進捗は89%となっています。採卵可能な河川も少なくなっていますが、種卵が不足している増殖事業者においては、可能な限り計画を達成できるよう、移出入などの種卵確保に努めてください。
また、確保した種卵は管理を徹底して、健康な稚魚の成長に努めてください。