2018年コウナゴ情報

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平成30年3月28日発行

平成30年2月に実施したコウナゴ稚仔魚分布調査の結果を取りまとめましたので、コウナゴ(イカナゴ当歳魚)漁況の見通しを次のとおりお知らせいたします。

期間:平成30年4月~6月

魚種:コウナゴ(イカナゴ当歳魚)

海域:岩手県沿岸

漁業:コウナゴ棒受網漁業(火光利用敷網漁業)

漁況予測:県北海域、県南海域ともに、好調であった前年を下回り、県北海域では平年並み、県南海域では平年を下回る

平成29年漁期の状況

平成29年漁期のコウナゴ棒受網漁法によるコウナゴ水揚量(久慈、宮古、山田、釜石、大船渡の5魚市場合計)は1,278トン(前年比15倍、過去5年平均比31倍)で、前年及び近年平均を大きく上回りました(図1)。
海域毎の水揚量は県北海域(久慈魚市場)が413トン(前年比8.2倍、過去5年比16倍)、県南海域(宮古、山田、釜石、大船渡の4魚市場計)が865トン(前年比23倍、過去5年比56倍)でした(図1)。また、1隻1日あたりの水揚量(以下、CPUEという)は、県北海域が604kg/隻/日(前年比2.9倍、過去5年比4.7倍)、県南海域が1,476kg/隻/日(前年比11倍、過去5年比19倍)となり、両海域ともに前年及び近年平均を大きく上回りました(図2)。

見通しの背景

1.平成30年コウナゴ稚仔魚調査結果


2月27~28日に漁業指導調査船「北上丸」で行った、コウナゴ稚仔魚調査(稚魚ネット:水深15m、10分間水平曳き)の結果(図3)、コウナゴ稚仔魚の分布密度(8定点平均)は、県北海域では10.9尾/100m3(前年7.4尾/100m3、過去5年平均6.2尾/100m3)、県南海域では12.1尾/100m3(前年8.4尾/100m3、過去5年平均43.5尾/100m3)でした。県北海域では前年及び近年平均を上回り、県南海域では前年を上回り近年平均を下回りました。
県北海域のコウナゴ稚仔魚分布密度とCPUEの変動には、近年同様の傾向が見られます(図4)
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2.平成30年度漁況予測

漁期中CPUEと水温との関係
県北海域ではコウナゴCPUEと「漁期中(4月)のトドヶ埼10海里10m深水温」、県南海域ではコウナゴCPUEと「漁期中(4月)の尾崎10海里10m深水温」と正の相関が認められ(図5)、いずれの海域においても漁期中4月の水温が高い年ほど、CPUEが高くなる傾向が認められました。
関係式に基づいて算出した平成30年の予測CPUEは、県北海域133.5kg/隻/日(前年比22%、 H24~28年平均並み) 、県南海域64.5kg/隻/日(前年比4.4%、H24~28年平均比83%)となり、両海域ともに前年を下回り、県北海域では近年平均並み、県南海域では平年を下回ると予測されます(図6)。
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※ 水温は、漁業指導調査船「岩手丸」による海洋観測結果によります。4月の水温は平成30年3月の観測に基づく水温予測値によります。
※ 平成29年は特異的にCPUEが高く、相関関係から大きく外れるため、予測の解析から除外しています。

3.他県の情報等

青森県: 平成30年2月22日と3月14日に行われたイカナゴ仔稚魚分布密度調査の結果、陸奥湾湾口周辺に
おけるイカナゴ仔稚魚の分布密度は低い水準であった。
(青森県産業技術センター水産総合研究所「ウオダス No.1981」)
宮城県: 平成30年3月7~13日に行われたコウナゴ漁期前調査の結果、仙台湾、男鹿半島周辺海域における
コウナゴの分布密度は過去10年平均を下回った。
(宮城県水産技術総合センター「平成30年春漁情報第8報」)

周辺海域の資源は、陸奥湾のイカナゴ仔稚魚の分布密度は極めて低い状況が継続しており、仙台湾、牡鹿半島周辺海域のコウナゴの分布密度は共に平均を下回る水準となっています。
現況では本県沿岸域の水温は、県北では平年並み、県南では平年より高めで推移しており、県北、県南ともにコウナゴ漁獲に不適な水温条件ではないと考えられますが、周辺海域由来のコウナゴ資源の漁獲加入が少ない可能性があることから、海況条件が好適であったとしても漁獲が伸び悩む可能性が考えられます。

4.まとめ

平成30年のコウナゴ稚仔魚の分布密度は、県北海域では前年及び平均を上回り、県南海域では前年を上回り、平均を下回りました。漁期中の水温との関係から、CPUEは、県北、県南海域ともに好調であった前年を下回り、県北では近年平均並み、県南では近年平均を下回ると予測されます。
現況の海況条件は、県北、県南ともにコウナゴ漁獲に不適ではないと考えられますが、青森県、宮城県の状況から周辺海域由来の漁獲加入は少ない可能性があるため、海況条件が好適となったとしても漁獲が伸びない可能性があります。

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別表 平成30年コウナゴ仔稚魚調査結果、漁期中CPUEデータ

※分布密度は、稚魚ネット、水深15m、10分間水平曳きによる採集尾数から算出
※平成15年以降は、県南海域の調査定点を変更している

担当:漁業資源部