岩手県水産技術センターWeb

平成30年7月26日

予測期間：予測期間：平成30年9月～平成31年2月
予測海域：岩手県沿岸

1.平成30年度の予測結果

回帰数量・重量の推定

過去の岩手県沿岸におけるサケ幼稚魚の分布密度調査の結果と平成29年度の年齢別漁獲数量から、平成30年度の岩手県秋サケ回帰数量を推定したところ、397万尾、12,266トンとなり、平成29年度実績を上回るものの、震災前の平均値(平成18～22年度の平均値。以下同じ)の47％と、大きく下回る見込みです(表1)。また、年齢別に平成29年度と比較すると、前年よりも3歳魚が減少し、4歳魚及び5歳魚が増加しますが、震災前の平均値と比較すると各年齢とも依然少ない見通しです(表2)。
表1 平成30年度予測値、平成29年度実績値及び震災前の平均値

	平成30年度予測値 (95％予測範囲)	平成29年度 実績値	震災前の 平均値
回帰尾数(万尾)	397 (208～526)	241	836
回帰重量(トン)	12266 (6,161～16,901)	7,289	26,741

表2 3～5歳魚の平成30年度予測値、平成29年度実績値及び震災前の平均値

	平成30年度 予測値	平成29年度 実績値	震災前の平均値
3歳魚(千尾)	277	349	588
4歳魚(千尾)	2,763	1,408	4,456
5歳魚(千尾)	879	580	3,097

回帰時期の推定

3～5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から、平成30年度の回帰時期は11月下旬が中心になると予測されます(図1)。

過去5年間の平均旬別河川そ上率から算出される平成30年度の旬別河川そ上尾数は、12月中旬をピークとする44万尾(予測下限値23万尾程度)と推定されます(図2)。
平成29年度と比較して、各旬の河川そ上尾数が増加すると予測されますが、10月下旬から11月中旬にかけての予測そ上尾数は4万尾以下であり、平成29年度と同様に種卵の確保が困難になると予想されます。そのため、種卵の確保には、10月中旬ころから海産親魚の確保をするなど種卵確保対策が必要になると考えられます。

2.予測方法

秋サケ回帰尾数の予測では、2歳魚から6歳魚までの年齢別の回帰尾数を計算し、最後にすべての年齢の予測値を合計して予測尾数としています。

2歳魚と3歳魚の推定方法

2歳魚と3歳魚の回帰尾数の予測には、岩手県沿岸におけるサケ幼稚魚の分布密度調査の結果を用いています。分布密度調査は、平成15年以降、5月下旬から6月上旬頃にかけて、漁業指導調査船岩手丸により実施しています。平成19年(平成18年級)以降、分布密度は低下傾向にあります(図3)。
2歳魚と3歳魚の回帰尾数の予測では、これまでの調査で得られた同一の年級の幼稚魚の分布密度と回帰尾数の関係式に、今年度回帰する平成27、28年級の幼稚魚の分布密度を代入して予測尾数を算出しています。

4歳魚～6歳魚の推定方法

4歳から6歳魚の回帰尾数の予測では、年級(生まれた年)毎の年齢別回帰尾数のデータを用いています。このため、毎年、県内の各河川にそ上した親魚の鱗を用いて年齢査定を行い、回帰した親魚の年齢組成結果から、年級毎の年齢別回帰尾数を取りまとめています(図4)。
4～6歳魚の回帰尾数の予測では、同一年級のn-1歳魚とn歳魚(図5は、3歳魚と4歳魚の比較例)の1次回帰式を求め、昨年度n-1歳で回帰した尾数を代入して今年度n歳魚の予測尾数を算出しています。

回帰時期の推定方法

回帰時期の予測は、上述の方法で回帰尾数の総数を算出した後、3～5年間のふ化場毎の卵収容実績や旬別の河川そ上率などを勘案し、回帰尾数の総数を旬別に振り分けています。

重量の推定方法

これまでの調査結果より、片岸川、織笠川及び津軽石川における3歳魚の平均魚体重(雌雄込み)と翌年度の全年齢の平均魚体重の関係式を求めています。(図6)
秋サケ回帰予測重量は、回帰予測尾数に、この平均魚体重を乗じて求めています。