平成31年4月12日発行
2019年におけるコウナゴ(イカナゴ当歳魚)漁況の見通しについてお知らせします。
期間:2019年4月~6月
魚種:コウナゴ(イカナゴ当歳魚)
海域:岩手県沿岸
漁業:コウナゴ棒受網漁業(火光利用敷網漁業)
漁況予測:県北海域は、前年及び2012~2016年平均を上回る。県南海域は、前年を上回るが、2012~2016年平均を下回る
1. 2018年漁期の結果
2018年漁期のコウナゴ棒受網漁法によるコウナゴ水揚量(久慈、宮古、山田、釜石、大船渡の5魚市場合計)は53トン(前年比4.2%、過去5年比1.3倍)で、前年を大きく下回りました(図1)。
海域毎の水揚量は県北海域(久慈魚市場)が50トン(前年比12.0%、過去5年比1.9倍)、県南海域(宮古、山田、釜石、大船渡の4魚市場計)が4トン(前年比0.4%、過去5年比23.1%)でした(図1)。
また、1隻1日あたりの水揚量(以下、CPUEという)は、県北海域が168kg/隻/日(前年比27.8%、過去5年比1.3倍)、県南海域が29kg/隻/日(前年の2.0%、過去5年比37.9%)でした。両海域ともに前年を大きく下回りました(図2)。
※ 過去5年比は、2012~2016年平均との比較です。
2. 2019年コウナゴ稚仔魚調査結果
2月25日及び3月6日に漁業指導調査船「北上丸」で行ったコウナゴ稚仔魚調査(稚魚ネット:水深15m、10分間水平曳き)の結果、コウナゴ稚仔魚の分布密度(8定点平均)は、県北海域では2.1尾/100m3(前年11.3尾/100m3、過去4年平均6.1尾/100m3)、県南海域では358.4尾/100m3(前年12.0尾/100m3、過去4年平均44.9尾/100m3)でした(図3)。
県北海域は前年及び近年平均を下回り、県南海域では、過去4年平均の約8倍と極めて高い分布密度でした。
※ 過去4年平均は、2014~2017年平均です。
3. 2019年漁況予測(漁期中CPUEと水温との関係)
県北海域ではCPUEと「漁期中(4月)のトドヶ埼10海里10m深水温」、県南海域ではCPUEと「漁期中(4月)の尾埼10海里10m深水温」と正の相関が認められています(図5)。 関係式に基づいて算出した2019年の予測CPUEは、県北海域182.0kg/隻/日(前年比108.6%、過去5年比141.9%) 、県南海域68.2kg/隻/日(前年比232.1%、過去5年比87.9% )となり、県南海域は前年を上回ると予測されます(図6)。
※ 過去5年比は2012~2016年平均との比較です。
※ 水温は、漁業指導調査船「岩手丸」による海洋観測結果を使用しています。
※ 2017年は特異的にCPUEが高く、相関関係から大きく外れるため、予測の解析から除外しています。
4. 他県の情報等
青森県: 2019年2月6日に実施されたイカナゴ仔稚魚分布密度調査の結果、陸奥湾湾口周辺海域におけるイカナゴ仔稚魚は全く採集されなかった。(青森県産業技術センター水産総合研究所「ウオダス 漁海況速報 No.2015」)
宮城県: 2019年1~3月に実施されたコウナゴ分布調査の結果、仙台湾及び牡鹿半島周辺の海域での平均採集数は過去最低であった。また、近年コウナゴ分布密度と漁獲量は共に減少傾向にあり、今年も漁獲の低調が続くと予想された。(宮城県水産技術総合センター「春漁情報第1及び4報 コウナゴ漁期前調査情報」)
2019年3月26日に行われたコウナゴ分布調査の結果、牡鹿半島以北において採集数は前年と比べて増加した。(宮城県水産技術総合センター「春漁情報第5報 コウナゴ漁期前調査結果」)
5. まとめ
CPUEと4月の水温との関係から、今漁期のCPUEは、1隻1日あたりの水揚量は、県北海域では前年及び2012~2016年平均を上回り、県南海域では前年を上回るが2012~2016年平均を下回ると予想されます。
県南海域では、3月上旬に過去4年平均の8倍と極めて高い密度でコウナゴが確認されたことから、漁獲が伸びる可能性があります。