令和元年7月29日
予測期間:令和元年9月~令和2年2月
予測海域:岩手県沿岸
秋サケ回帰予測尾数(範囲):312万尾(178~447万尾)
秋サケ回帰予測重量(範囲):9,447トン(5,155~14,141トン)
回帰時期:11月下旬中心
今年度の回帰数量は、震災前5ヶ年平均の約4割と、依然として低い水準が予測されます。
昨年と同様に、採卵計画の達成が難しくなる可能性があることから、漁期前に種卵確保に向けた関係者の協力体制を確認して下さい。
1.令和元年度の予測結果
回帰尾数・重量の推定
過去の岩手県沿岸におけるサケ幼稚魚の分布密度調査の結果と平成30年度の年齢別漁獲数量から、令和元年度の岩手県秋サケ回帰数量を推定したところ、312万尾、9,447トンとなり、平成30年度実績を1割程度下回り、震災前の平均値(平成18~22年度の平均値。以下同じ)の37%と大きく下回る見込みです(表1)。また、年齢別に平成30年度と比較すると、前年よりも4歳魚が減少し、3歳魚及び5歳魚が増加しますが、震災前の平均値と比較すると各年齢とも依然少ない見通しです(表2)。
表1 令和元年度予測値、平成30年度実績値及び震災前の平均値
令和元年度予測値 (95%予測範囲) |
平成30年度 実績値 |
震災前の 平均値 |
|
回帰尾数(万尾) | 312 (178~447) |
351 | 836 |
回帰重量(トン) | 9447 (5,155~14,141) |
10,269 | 26,741 |
表2 3~5歳魚の令和元年度予測値、平成30年度実績値及び震災前の平均値
令和元年度 予測値 |
平成30年度 実績値 |
震災前の平均値 | |
3歳魚(千尾) | 244 | 83 | 588 |
4歳魚(千尾) | 1,212 | 2,842 | 4,456 |
5歳魚(千尾) | 1,613 | 528 | 3,097 |
回帰時期の推定
3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から、令和元年度の回帰時期は11月下旬が中心になると予測されます(図1)。
各河川の年級(生まれ年)毎の年齢別回帰尾数、3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から算出される令和元年度の旬別河川そ上尾数は、12月上旬をピークとする35万尾(予測下限値17万尾程度)と推定されます(図2)。
令和元年度の河川そ上尾数は、平成30年度と比較して前期(11月上旬まで)に大きく下回ることから、昨年度と同様に種卵の確保が困難になると予想されます。そのため、早めに海産親魚の確保をするなど種卵確保対策が必要になると考えられます。
2.予測方法
秋サケの回帰尾数は、2歳魚から6歳魚まで年齢別に回帰尾数を計算し、最後にすべての年齢の予測値を合計して予測尾数としています。
2歳魚と3歳魚の推定方法
2歳魚と3歳魚の回帰尾数の予測には、岩手県沿岸におけるサケ幼稚魚の分布密度調査の結果を用いています。分布密度は、平成15年以降、5月下旬から6月上旬頃にかけて、漁業指導調査船岩手丸により調査しています。平成19年(平成18年級)以降、分布密度は低下傾向にあります(図3)。
2歳魚と3歳魚の回帰尾数の予測では、これまでの調査で得られた同一の年級の幼稚魚の分布密度と回帰尾数の関係式に、今年度回帰する平成28、29年級の幼稚魚の分布密度を代入して予測尾数を算出しています。
4歳魚~6歳魚の推定方法
4歳から6歳魚の回帰尾数の予測には、年級(生まれた年)毎の年齢別回帰尾数のデータを用いています。このため、毎年、県内の各河川にそ上した親魚の鱗を用いて年齢査定を行い、その年齢組成結果から、年級毎の年齢別回帰尾数を取りまとめています(図4)。
4~6歳魚の回帰尾数の予測では、同一年級のn-1歳魚とn歳魚(図5は、3歳魚と4歳魚の比較例)の1次回帰式を求め、昨年度n-1歳で回帰した尾数を代入して今年度n歳魚の予測尾数を算出しています。
なお、河川そ上予測においても河川毎に平成18年級以降の年級毎の年齢別回帰尾数をまとめ、同様の方法で4~6歳を算出しました(2、3歳魚は算術平均)。
回帰時期の推定方法
回帰時期の予測は、上述の方法で回帰尾数の総数を算出した後、3~5年間のふ化場毎の卵収容実績や河川毎の旬別回帰率、放流時の水温などを勘案し、回帰尾数の総数を旬別に振り分けています。
重量の推定方法
これまでの調査結果より、片岸川、織笠川及び津軽石川における3歳魚の平均魚体重(雌雄込み)と翌年度の全年齢の平均魚体重の関係式を求めています(図6)。
秋サケ回帰予測重量は、回帰予測尾数に、この平均魚体重を乗じて求めています。