令和2年3月30日発行
2020年におけるコウナゴ(イカナゴ当歳魚)漁況の見通しについてお知らせします。
期間:2020年4月~6月
魚種:コウナゴ(イカナゴ当歳魚)
海域:岩手県沿岸
漁業:コウナゴ棒受網漁業(火光利用敷網漁業)
漁況予測:県北海域は、前年及び過去5年平均を下回る。県南海域は、前年及び過去5年平均を上回る。
※ 過去5年:2017年を除く2014~2019年
1. 2019年漁期の結果
2019年漁期のコウナゴ棒受網漁法によるコウナゴ水揚量(久慈、宮古、山田、釜石、大船渡の5魚市場合計)は166トン(前年比3.1倍、過去5年比3.2倍)で、前年を上回りました(図1)。
海域毎の水揚量は、県北海域(久慈魚市場)が152トン(前年比3.1倍、過去5年比4.3倍)、県南海域 (宮古、山田、釜石、大船渡の4魚市場計)が14トン(前年比3.9倍、過去5年比88%)でした(図1)。
また、1隻1日あたりの水揚量(以下、CPUEという)は、県北海域が327kg/隻/日(前年比2.0倍、過 去5年比2.1倍)、県南海域が56kg/隻/日(前年の1.9倍、過去5年比71%)でした。両海域ともに前年 を上回りましたが、県南海域は過去5年平均を下回りました(図2)。
※ 過去5年比は、特異的な漁獲量であった2017年を除く2014~2019年の5年間の平均値との比較です。
2. 2020年コウナゴ稚仔魚調査結果
2月25日及び3月14日に漁業指導調査船「北上丸」で行ったコウナゴ稚仔魚調査(稚魚ネット:水深15m、10分間水平曳き)の結果、コウナゴ稚仔魚の分布密度(8定点平均)は、県北海域では0.2尾/100m3(前年2.1尾/100m3、過去5年平均※5.3尾/100m3)、県南海域では31.0尾/100m3(前年358.4尾/100m3、過去5年平均※107.6尾/100m3)でした(図3)。全長は北部海域で4~11mm、南部海域で3~12mmでした。
両海域とも前年及び過去5年平均を下回りました。
※過去5年平均:2015~2019年の平均値
3.2020年漁況予測(漁期中CPUEと水温との関係)
県北海域ではCPUEと「漁期中(4月)のトドヶ埼0海里10m深水温」、県南海域ではCPUEと「漁期中(4月)の尾埼0海里10m深水温」と正の相関が認められています(図5)。 関係式に基づいて算出した2020年の予測CPUEは、県北海域175kg/隻/日(前年比54%、過去5年平均比95%) 、県南海域75kg/隻/日(前年比1.3倍、過去5年平均比1.1倍 )となり、県北海域は前年及び過去5年平均比を下回り、県南海域は前年及び過去5年平均を上回ると予測されます(図5・6)。
※ 過去5年平均比は、2014~2016、2018、2019年平均との比較です。
※ ■は2020年CPUE予測値、●は2019年(前年)CPUEの実績値、□は前回の漁況予測における2019年CPUE予測値を示す。※ 4月の水温は漁業指導調査船「岩手丸」による海洋観測結果を使用しています。なお、2020年の予測については、3月の観測に基づく 水温予測値を使用しています。
※ 2017年は特異的にCPUEが高く、相関関係から大きく外れるため、予測の解析から除外しています。
4. 他県の情報等
青森県: 2020年2月10~11日及び3月3~4日に実施したイカナゴ仔稚分布調査の結果、陸奥湾湾口周辺海域におけるイカナゴの平均仔稚分布密度は昨年と同水準の低い値であった。
令和2年度の陸奥湾湾口周辺海域のイカナゴ漁は、操業自粛が決定済み。
(青森県産業技術センター水産総合研究所「ウオダス 漁海況速報 No.2053」)
宮城県: 近年コウナゴ分布密度と漁獲量は共に減少傾向にあり、今年の漁獲も低調が続くと予想されます。(宮城県水産技術総合センター「春漁情報第1報 コウナゴ漁期前調査情報」)
2020年3月12日に牡鹿半島以北海域5点で実施したコウナゴ分布調査の結果、採集数は去年と比べ大幅に減少し、大きさは漁獲サイズに達していなかった。(宮城県水産技術総合センター「春漁情報第4報 コウナゴ漁期前調査情報」)
2020年3月24日に仙台湾で実施したコウナゴ分布調査の結果、各調査点での採集数は10~1尾と極めて少なく、例年と比べ小型で、漁獲最適サイズには達していなかった。(宮城県水産技術総合センター「春漁情報第7報 コウナゴ漁期前調査結果」)
5. まとめ
CPUEと4月の水温との関係から、今漁期の1隻1日あたりの水揚量は、県北海域では前年値及び過去5年平均値を下回り、県南海域では前年値及び過去5年平均値を上回ると予想されます。
ただし、岩手県海域で、親潮第1分枝の張り出しが弱いなど、海水温が高い環境が続く場合は、漁獲が伸びる可能性があります。