令和2年11月24日
11月10日までの回帰尾数は、前年比55%の11万尾。
尾叉長・体重・肥満度は、前年度並となっています。
調査河川によるそ上魚の年齢組成は、前年と比較して4歳魚の割合が上昇、5歳魚の割合が極端に低くなっています。
1.回帰資源量
11月10日現在の本県回帰尾数は11.0万尾(310トン)で前年比55%(重量比54%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比45%(7.3万尾)、 河川漁獲は前年比89%(3.0万尾)。種卵確保対策による海産親魚は前年比176%(6千尾)。河川そ上率は27.6%と前年(17.0%)を大きく上回りました。また、当センターが発表した前期までの回帰予測尾数は55万尾であり、実績は予測の20%となりました。
2.回帰親魚調査結果(前期:11月10日までの分)
10月5日~11月9日に片岸川、織笠川、津軽石川において、各ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川190尾、織笠川267尾、津軽石川217尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚4%、4歳魚88%、5歳魚7%(R1:3歳魚58%、4歳魚15%、5歳魚26%)、メスは3歳魚2%、4歳魚88%、5歳魚9%(R1:3歳魚37%、4歳魚23%、5歳魚39%)で、前年同期と比べるとオス、メスともに3歳魚と5歳魚の割合が低くなり、4歳魚の割合が極端に高くなりました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R1:888尾、R1:633尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の9%、4歳魚は前年の672%、5歳魚は前年の36%の回帰となっています(図3)。
織笠川
オスは3歳魚19%、4歳魚67%、5歳魚11%(R1:3歳魚18%、4歳魚40%、5歳魚35%)、メスは3歳魚28%、4歳魚60%、5歳魚11%(R1:3歳魚12%、4歳魚39%、5歳魚49%)で、前年同期と比べると、3歳魚と4歳魚の割合が高く、5歳魚の割合が極端に低くなりました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R2:347尾、R1:452尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の116%、4歳魚は前年の124%、5歳魚は前年の20%となっています(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚12%、4歳魚71%、5歳魚6%(R1:3歳魚5%、4歳魚43%、5歳魚52%)、メスは3歳魚9%、4歳魚80%、5歳魚7%(R1:メスは3歳魚2%、4歳魚44%、5歳魚53%)で、前年同期と比べると、オス、メスともに3歳魚と4歳魚の割合が高く、5歳魚の割合が著しく低くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R2:251尾、R1:790尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の112%、4歳魚は前年の55%、5歳魚は前年の4%の回帰となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は69.7cm、体重は3.4kg、肥満度は9.9、また、メスの平均尾叉長は67.4cm、体重は3.1kg、肥満度は10.2でした。前年同期と比較すると、尾叉長と体重は、メスの4歳魚で大きい以外は同程度、肥満度はメスの5歳魚で低い以外は同程度でした(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R2 | R1 | R2 | R1 | R2 | R1 | |
3歳魚 | 62.3 | 62.2 | 2.4 | 2.4 | 9.9 | 9.9 |
4歳魚 | 69.7 | 69.8 | 3.4 | 3.4 | 9.9 | 9.9 |
5歳魚 | 72.1 | 71.9 | 3.8 | 3.8 | 10.1 | 10.1 |
全体平均 | 69.7 | 65.9 | 3.4 | 2.9 | 9.9 | 9.9 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R2 | R1 | R2 | R1 | R2 | R1 | |
3歳魚 | 60.0 | 61.1 | 2.2 | 2.4 | 10.1 | 10.2 |
4歳魚 | 67.3 | 65.9 | 3.2 | 2.9 | 10.2 | 10.2 |
5歳魚 | 69.4 | 70.1 | 3.1 | 3.6 | 9.2 | 10.5 |
全体平均 | 67.4 | 65.8 | 3.1 | 3.0 | 10.2 | 10.3 |
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
織笠川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は66.3cm、体重は2.8 kg、肥満度は9.4、また、メスの平均尾叉長は65.8cm、体重は2.8kg、肥満度は9.8でした。前年同期と比較すると、メスの肥満度がやや低い以外は、各年齢、オス、メスとともに尾叉長、体重、肥満度は同程度でした(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R2 | R1 | R2 | R1 | R2 | R1 | |
3歳魚 | 61.9 | 59.8 | 2.2 | 2.0 | 9.0 | 9.1 |
4歳魚 | 67.3 | 68.2 | 2.9 | 3.1 | 9.5 | 9.5 |
5歳魚 | 69.3 | 69.7 | 3.2 | 3.3 | 9.4 | 9.6 |
全体平均 | 66.3 | 66.1 | 2.8 | 2.8 | 9.4 | 9.4 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R2 | R1 | R2 | R1 | R2 | R1 | |
3歳魚 | 63.1 | 62.1 | 2.4 | 2.3 | 9.7 | 9.6 |
4歳魚 | 66.2 | 66.8 | 2.9 | 3.0 | 9.8 | 10.1 |
5歳魚 | 70.1 | 68.8 | 3.4 | 3.3 | 9.7 | 10.0 |
全体平均 | 65.8 | 67.2 | 2.8 | 3.1 | 9.8 | 10.0 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は66.5cm、体重は3.0kg、肥満度は9.7、また、メスの平均尾叉長は66.3cm、体重は3.0kg、肥満度は10.2でした。前年同期と比較すると、オスの3歳魚で尾叉長、体重、肥満度が大きい以外は、尾叉長、体重、肥満度とも同程度でした(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R2 | R1 | R2 | R1 | R2 | R1 | |
3歳魚 | 62.8 | 60.0 | 2.5 | 1.8 | 9.9 | 8.5 |
4歳魚 | 68.4 | 70.4 | 3.1 | 3.2 | 9.7 | 8.9 |
5歳魚 | 70.7 | 71.8 | 3.5 | 3.4 | 9.7 | 9.1 |
全体平均 | 66.5 | 70.7 | 3.0 | 3.2 | 9.7 | 9.0 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R2 | R1 | R2 | R1 | R2 | R1 | |
3歳魚 | 62.6 | 61.3 | 2.4 | 2.2 | 9.7 | 9.4 |
4歳魚 | 66.4 | 65.9 | 3.0 | 3.0 | 10.2 | 10.4 |
5歳魚 | 66.9 | 67.4 | 3.3 | 3.2 | 10.8 | 10.5 |
全体平均 | 66.3 | 66.7 | 3.0 | 3.1 | 10.2 | 10.4 |
3.その他
令和2年11月10日現在の秋サケ回帰状況は、4億尾放流体制となってから最低となった昨年度よりもさらに少ない状況にあります。どの河川においても、5歳魚(平成27年級)の回帰尾数が極めて少ないことが共通しており、全体の回帰尾数の減少の主な原因となっています。さらに、平成28年の台風第10号により被害を受けた、安家川、小本川、閉伊川では4歳魚の回帰不振もあると考えられます。
現在、県全体の種卵の確保状況は、計画の3割程度に留まっています。全体の回帰尾数が極端に少なく厳しい状況にありますが、将来的なサケ資源造成のため、引き続き関係者が一致協力して採卵用親魚と良質な卵の最大限の確保に努めるとともに、これまで以上に丁寧な管理が重要になると考えます。