2020年度秋サケ回帰情報(No3:後期分)

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令和3年1月20日
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1月10日までの回帰尾数は、前年比77%の58万尾。

年齢別の回帰尾数は、前年と比べて依然として5歳魚が著しく少ない。

4歳魚主体の回帰であり、全体の魚体サイズ(尾叉長・体重・肥満度)は、前年よりも小さい。

1.回帰資源量

1月10日現在の本県回帰尾数は58万尾(1,701トン)で前年比77%(重量比75%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は43万尾(前年比71%)、河川漁獲は10万尾(前年比91%)。種卵確保対策による海産親魚は5万尾(前年比127%)、1尾あたりの平均体重は2.93kgと前年(2.98kg)をやや下回りました。また、河川そ上率は17%と前年(14%)を上回りました。
なお、当センターが発表した1月上旬までの回帰予測尾数(全数)は192万尾であり、実績は予測の30%となりました。

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図1 本県回帰尾数の推移

2.回帰親魚調査結果(後期:12月11日から12月31日までの分)

12月11日から12月25日にかけて、片岸、織笠、津軽石の各河川において、各ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川39尾、織笠川421尾、津軽石川400尾)を行いました。

(1)年齢組成

片岸川
オスは3歳魚6%、4歳魚81%、5歳魚6%(R1:3歳魚25%、4歳魚13%、5歳魚60%)、メスは3歳魚5%、4歳魚82%、5歳魚14%(R1:3歳魚16%、4歳魚4%、5歳魚80%)で、前年同期と比べるとオス・メスともに4歳魚の割合が著しく高くなりました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R2:229尾、R1:834尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年の2.6倍と上回りましたが、3歳魚が前年の7%、5歳が前年の4%と大きく下回りました(図3)。

織笠川
オスは3歳魚24%、4歳魚74%、5歳魚2%(R1:3歳魚52%、4歳魚18%、5歳魚30%)、メスは3歳魚11%、4歳魚82%、5歳魚6%(R1:3歳魚26%、4歳魚18%、5歳魚55%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに4歳魚の割合が高く、3、5歳魚の割合が著しく低くなりました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R2:2,477尾、R1:1,723尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年6.3倍と大きく上回り、3歳魚が前年の59%、5歳魚は前年の15%と下回りました(図5)。

津軽石川
オスは3歳魚2%、4歳魚86%、5歳魚10%(R1:3歳魚5%、4歳魚20%、5歳魚73%)、メスは3歳魚5%、4歳魚80%、5歳魚11%(R1:3歳魚9%、4歳魚19%、5歳魚69%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに4歳魚の割合が著しく高く、3、5歳魚の割合が低くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R2:10,939尾、R1:7,905尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年の5.8倍と大きく上回り、3歳魚が前年の63%、5歳魚は前年の20%と少なくなりました(図7)。

(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度

片岸川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は68.5cm、体重は3.2kg、肥満度※は9.5、メスの尾叉長は64.5cm、体重は2.5kg、肥満度※は8.9でした。
前年同期と比較すると、オス・メスともに尾叉長、体重、肥満度は、3、4歳魚で大きく、5歳魚で小さい傾向にありました(表1)。
肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R2 R1 R2 R1 R2 R1
3歳魚 65.0 61.5 2.6 2.1 9.5 8.8
4歳魚 67.9 65.4 3.0 2.4 9.3 8.3
5歳魚 71.0 71.8 3.2 3.5 9.0 9.3
全体平均 68.5 68.4 3.2 3.0 9.5 9.0

(メス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R2 R1 R2 R1 R2 R1
3歳魚 63.0 62.2 2.3 2.1 9.2 8.8
4歳魚 64.3 63.0 2.4 2.0 8.8 8.1
5歳魚 66.0 71.9 2.9 3.7 9.5 9.6
全体平均 64.5 70.1 2.5 3.4 8.9 9.4

織笠川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は66.7cm、体重は2.9kg、肥満度は9.5、メスの尾叉長は67.6cm、体重は3.2kg、肥満度は10.1でした。
前年同期と比較すると、尾叉長はオスの5歳魚とメスの各年齢、体重はメスの4歳魚で小さいほか、前年並みから大きくなりました。また、肥満度はオス・メスとも、各年齢で大きくなりました(表2)。

(オス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R2 R1 R2 R1 R2 R1
3歳魚 62.8 62.1 2.4 2.2 9.5 9.0
4歳魚 67.8 66.9 3.0 2.7 9.6 8.9
5歳魚 70.3 72.1 3.7 3.7 9.8 9.6
全体平均 66.7 66.0 2.9 2.7 9.5 9.1

(メス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R2 R1 R2 R1 R2 R1
3歳魚 62.0 62.4 2.4 2.3 10.1 9.4
4歳魚 68.0 68.3 3.2 3.2 10.1 9.9
5歳魚 70.2 72.8 3.8 4.0 11.0 10.3
全体平均 67.6 69.3 3.2 3.5 10.1 10.0

津軽石川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は72.8cm、体重は4.0kg、肥満度は10.2、メスの尾叉長は70.1cm、体重は3.7kg、肥満度は10.4でした。
前年同期と比較すると、オスでは、3歳魚は尾叉長、体重、肥満度ともに大きく、4歳魚はいずれも小さく、5歳魚は尾叉長と体重は小さいものの肥満度が高くなりました。また、メスでは、3歳魚は尾叉長、体重は小さいものの肥満度は高く、4歳魚はいずれも小さく、5歳魚はいずれも大きくなりました(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R2 R1 R2 R1 R2 R1
3歳魚 67.3 64.4 3.1 2.5 10.1 9.0
4歳魚 72.0 75.2 3.8 4.6 10.0 10.4
5歳魚 78.1 79.5 5.3 5.4 11.1 10.6
全体平均 72.8 77.8 4.0 5.1 10.2 10.5

(メス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R2 R1 R2 R1 R2 R1
3歳魚 62.1 63.6 2.4 2.5 10.0 9.6
4歳魚 69.2 70.1 3.5 3.7 10.4 10.6
5歳魚 77.1 74.5 5.1 4.5 11.1 10.7
全体平均 70.1 72.6 3.7 4.2 10.4 10.5

(3)孕卵数および卵重量

津軽石川(12月14日、12月23日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,897粒、卵1粒あたりの重量は0.22g、生殖腺指数※は19.1でした。
年齢別に前年と比較すると、孕卵数は、3、4歳魚では少なく、5歳魚は前年並み、卵重量と生殖腺指数は3歳魚で大きいほか前年並みとなりました(表4)。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 津軽石川 年齢別繁殖形質

  3歳魚 4歳魚 5歳魚 全体
R2 R1 R2 R1 R2 R1 R2 R1
尾叉長(cm) 62.3 64.6 68.4 70.5 76.0 75.1 68.7 73.6
体重(kg) 2.44 2.64 3.29 3.79 4.85 4.68 3.37 4.39
生殖腺重量(kg/尾) 0.49 0.50 0.63 0.73 0.91 0.85 0.64 0.80
孕卵数(粒/尾) 2,651 2,869 2,865 3,162 3,331 3,333 2,897 3,274
卵重量(g/粒) 0.19 0.17 0.22 0.23 0.27 0.26 0.22 0.25
生殖腺指数 20.0 18.8 19.2 19.3 18.6 18.4 19.1 18.6

3.その他

(1)年齢別回帰尾数について
12月末までに明らかとなった片岸川、織笠川、津軽石川のそ上魚の年齢組成をもとに、12月31日までの県全体の年齢別回帰尾数を推定しました(図8)。
令和2年の予測値と実績値を比較すると、5歳魚を除いて、実績値はすべての年齢で下回り、特に主力となる4歳魚では予測の116万尾減となりました。
昨年不漁の原因となった平成27年級(今年5歳魚)が少ないのは予測どおりでしたが、平成28年級(今年4歳魚)と平成29年級(今年3歳魚)が、東日本大震災で被災した平成22年級の3歳魚(平成25年回帰)と4歳魚(平成26年回帰)よりも少ない回帰尾数となり、平成27~29年級の不振が、今年度のこれまでにない不漁の要因となっています。今後、この3年級の回帰率が急激に低下した原因究明と対応が必要となっています。

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図8 年齢別回帰尾数と令和2年度回帰予測値

(2)その他
1月10日時点での県全体の採卵数は2.1億粒、北海道や山形県、秋田県からの移入卵を含めると2.5億粒と、計画の57%に留まっています。2年連続で計画を大きく下回る状況にあり、今後、昨年以上に種卵、仔魚及び稚魚管理を徹底し、健康な稚魚の飼育、放流に努めることが重要です。