令和4年1月19日
1月10日までの回帰尾数は、前年比23.5%の13.7万尾。
年齢別の回帰尾数は、4歳魚が少ない。
繁殖形質の各項目は、前年を上回りました。
1.回帰資源量
1月10日現在の本県回帰尾数は13.7万尾(40トン)で前年比23.5%(重量比23.6%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は9万尾(前年比20.9%)、河川漁獲は3.9万尾(前年比38.6%)。種卵確保対策による海産親魚は8千尾(前年比15.3%)、1尾あたりの平均体重は2.95kgと前年(2.93kg)をやや上回りました。
なお、当センターが発表した1月上旬までの回帰予測尾数(全数)は60万尾であり、実績は予測の22.5%となりました。
2.回帰親魚調査結果(後期:12月11日から12月31日までの分)
12月13日から12月23日にかけて、片岸、織笠、津軽石の各河川において、各ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川1尾、織笠川370尾、津軽石川290尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
R3年後期はオス1尾(4歳魚)のみの調査となった。参考としてR2年のオスは3歳魚6%、4歳魚81%、5歳魚6%、メスは3歳魚5%、4歳魚82%、5歳魚14%で、4歳魚の割合が著しく高くなっていました(図2)。
織笠川
オスは3歳魚24%、4歳魚44%、5歳魚30%(R2:3歳魚24%、4歳魚74%、5歳魚2%)、メスは3歳魚9%、4歳魚50%、5歳魚40%(R2:3歳魚11%、4歳魚82%、5歳魚6%)で、前年同期と比べると、オスは3歳魚、5歳魚の割合が高く、4歳魚の割合が低くなりました。メスは5歳魚の割合が高く、4歳魚の割合が低くなりました(図3)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R3:566尾、R2:2,477尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、5歳魚が前年1.4倍と上回りましたが、3歳魚が前年の24%、4歳魚は前年の14%と大きく下回りました(図4)。
津軽石川
オスは3歳魚3%、4歳魚24%、5歳魚72%(R2:3歳魚2%、4歳魚86%、5歳魚10%)、メスは3歳魚3%、4歳魚31%、5歳魚65%(R2:3歳魚5%、4歳魚80%、5歳魚11%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに4歳魚の割合が著しく低く、5歳魚の割合が高くなりました(図5)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R3:4,342尾、R2:10,939尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、5歳魚が前年の2.5倍と上回り、3歳魚が前年の64%、4歳魚は前年の14%と著しく少なくなりました(図6)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オス(N=1)の尾叉長は67.0cm、体重は2.9kg、肥満度※は9.5でした。参考として、前年同期のオスの尾叉長は68.5cm、体重は3.2kg、肥満度は9.5、メスの尾叉長は66.6cm、体重は3.0kg、肥満度は10.1でした(表1)。
※ 肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
3歳魚 | – | 65.0 | – | 2.6 | – | 9.5 |
4歳魚 | 67.0 | 67.9 | 2.9 | 3.0 | 9.5 | 9.3 |
5歳魚 | – | 71.0 | – | 3.2 | – | 9.0 |
全体平均 | – | 68.5 | – | 3.2 | – | 9.5 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
3歳魚 | – | 60.9 | – | 2.3 | – | 10.1 |
4歳魚 | – | 66.6 | – | 3.0 | – | 10.2 |
5歳魚 | – | 69.0 | – | 3.2 | – | 9.4 |
全体平均 | – | 66.6 | – | 3.0 | – | 10.1 |
織笠川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は67.8cm、体重は3.1kg、肥満度は9.4、メスの尾叉長は69.4cm、体重は3.5kg、肥満度は10.0でした。
前年同期と比較すると、オス、メスともに4歳魚、5歳魚の尾叉長と体重は前年を上回りました。一方、3歳魚の尾叉長と体重は前年を下回りました。肥満度はオスの3歳魚、4歳魚で前年を下回ったほかは、各年齢で前年並みとなりました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
3歳魚 | 60.9 | 62.8 | 2.1 | 2.4 | 8.9 | 9.4 |
4歳魚 | 68.3 | 67.6 | 3.0 | 3.0 | 9.3 | 9.7 |
5歳魚 | 73.5 | 71.4 | 4.0 | 3.7 | 9.9 | 9.7 |
全体平均 | 67.8 | 66.7 | 3.1 | 2.9 | 9.4 | 9.5 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
3歳魚 | 61.7 | 62.7 | 2.3 | 2.4 | 9.6 | 9.7 |
4歳魚 | 68.1 | 67.5 | 3.2 | 3.1 | 10.0 | 9.8 |
5歳魚 | 72.6 | 70.9 | 3.9 | 3.7 | 10.2 | 10.2 |
全体平均 | 69.4 | 67.0 | 3.5 | 3.0 | 10.0 | 9.8 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は75.7cm、体重は4.7kg、肥満度は10.5、メスの尾叉長は73.2cm、体重は4.4kg、肥満度は11.0でした。
前年同期と比較すると、オスでは、3歳魚と5歳魚は尾叉長、体重、肥満度ともに低下し、4歳魚は前年を上回りました。全体平均は、5歳魚の回帰割合が多かったことから前年を上回りました。また、メスでは、3歳魚、4歳魚、5歳魚のいずれも前年を上回りました。(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
3歳魚 | 62.5 | 65.3 | 2.3 | 2.8 | 9.4 | 9.9 |
4歳魚 | 72.8 | 72.2 | 4.1 | 3.9 | 10.2 | 10.1 |
5歳魚 | 77.3 | 78.5 | 5.0 | 5.3 | 10.7 | 10.8 |
全体平均 | 75.7 | 73.6 | 4.7 | 4.2 | 10.5 | 10.3 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
3歳魚 | 63.3 | 63.0 | 2.6 | 2.5 | 10.2 | 10.0 |
4歳魚 | 70.8 | 69.1 | 3.7 | 3.5 | 10.4 | 10.5 |
5歳魚 | 74.7 | 74.7 | 4.8 | 4.7 | 11.3 | 11.0 |
全体平均 | 73.2 | 69.6 | 4.4 | 3.6 | 11.0 | 10.6 |
(3)孕卵数および卵重量
織笠川(12月2日、12月16日)
織笠川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,738粒、卵1粒あたりの重量は0.23g、生殖腺指数※は19.0でした。
年齢別に比較すると、前年と比較すると、孕卵数は、各年齢で大きくなりました。また、体重あたりに占める生殖腺重量が増加し、生殖腺指数が前年より上昇しました(表4)。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 織笠川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
尾叉長(cm) | 61.1 | 62.8 | 69.6 | 68.1 | 68.9 | 71.8 | 67.9 | 67.5 |
体重(kg) | 2.29 | 2.45 | 3.49 | 3.11 | 3.47 | 3.69 | 3.26 | 3.05 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.46 | 0.44 | 0.66 | 0.51 | 0.61 | 0.55 | 0.61 | 0.50 |
孕卵数(粒/尾) | 2,363 | 2,208 | 2,927 | 2,278 | 2,565 | 2,301 | 2,738 | 2,268 |
卵重量(g/粒) | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.23 | 0.25 | 0.25 | 0.23 | 0.22 |
生殖腺指数 | 20.2 | 17.6 | 19.1 | 16.1 | 17.9 | 14.8 | 19.0 | 16.3 |
津軽石川(12月23日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均3,822粒、卵1粒あたりの重量は0.26g、生殖腺指数※は22.8でした。
前年と比較すると、5歳魚の体重と卵重量を除き各項目で前年を上回りました。(表5)。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表5 津軽石川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | R3 | R2 | |
尾叉長(cm) | 71.0 | 62.3 | 72.8 | 68.4 | 76.6 | 76.0 | 74.2 | 68.7 |
体重(kg) | 3.73 | 2.44 | 4.11 | 3.29 | 4.80 | 4.85 | 4.37 | 3.37 |
生殖腺重量(kg/尾) | 1.03 | 0.49 | 0.97 | 0.63 | 1.00 | 0.91 | 0.98 | 0.64 |
孕卵数(粒/尾) | 3,777 | 2,651 | 3,846 | 2,865 | 3,873 | 3,331 | 3,822 | 2,897 |
卵重量(g/粒) | 0.27 | 0.19 | 0.26 | 0.22 | 0.26 | 0.27 | 0.26 | 0.22 |
生殖腺指数 | 27.5 | 20.0 | 24.0 | 19.2 | 21.0 | 18.6 | 22.8 | 19.1 |
3.その他
(1)年齢別回帰尾数について
12月末までに明らかとなった片岸川、織笠川、津軽石川のそ上魚の年齢組成をもとに、12月31日までの県全体の年齢別回帰尾数を推定しました(図7)。
令和3年の予測値と実績値を比較すると、実績値はすべての年齢で下回りました。
今年は、4歳魚(平成29年級)と5歳魚(平成28年級)の不振がこれまでにない不漁の要因となっています。今後、近年の不漁要因の究明とその対策が求められています。
(2)その他
1月10日時点での県全体の採卵数は5千6百万粒と計画の13%に留まっています。3年連続で計画を大きく下回る状況にあり、今後、関係者が協力して種卵、仔魚及び稚魚管理を徹底し、健康な稚魚の飼育、放流に努めることが重要です。