令和4年7月26日
予測期間:令和4年9月~令和5年2月
予測海域:岩手県沿岸
秋サケ回帰予測尾数(範囲): 11万尾(3~47万尾)
秋サケ回帰予測重量(範囲):354トン(104~1,502トン)
回 帰 時 期 :12月上旬中心
今年度の回帰数量は、昨年度の最低水準が継続すると予測されます。
資源回復に向けて、少しでも多くの種卵が確保されるよう、関係機関の協力体制の確認が重要です。
1.令和4年度の予測結果
回帰尾数・重量の推定
令和3年度の年齢別漁獲数量から、令和4年度の岩手県秋サケ回帰数量を推定したところ、11万尾、354トンとなり、震災前の平均値(平成18~22年度の平均値。以下同じ)の1%、昨年度並みの最低水準が持続する見込みです(表1)。また、年齢別に令和3年度と比較すると、前年よりも3歳魚が増加しますが、4、5歳魚が減少し、震災前の平均値と比較すると各年齢とも依然として極めて少ない見通しです(表2)。
表1 令和4年度予測値、令和3年度実績値及び震災前の平均値
令和4年度予測値 (95%予測範囲) |
令和3年度 実績値 |
震災前の 平均値 |
|
回帰尾数(万尾) | 11 (3~47) |
14 | 836 |
回帰重量(トン) | 354 (104~1,502) |
413 | 26,741 |
表2 3~5歳魚の令和4年度予測値、令和3年度実績値及び震災前の平均値
令和4年度 予測値 |
令和3年度 実績値 |
震災前の平均値 | |
3歳魚(千尾) | 54 | 27 | 588 |
4歳魚(千尾) | 41 | 74 | 4,456 |
5歳魚(千尾) | 11 | 37 | 3,097 |
回帰時期の推定
3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から、令和4年度の回帰時期は12月上旬が中心になると予測されます(図1)。
各河川の年級(生まれ年)毎の年齢別回帰尾数、3~5年前の卵収容実績と過去の旬別河川回帰率から算出される令和3年度の旬別河川そ上尾数は、12月上旬から12月中旬ピークとする6万尾(予測下限値2万尾)と推定されます(図2)。
令和4年度の河川そ上尾数は、令和3年度と比較して11月中旬から12月下旬まで上回る見込みですが、依然として種卵確保が困難な状況と考えられます。
2.予測方法
秋サケの回帰尾数は、2歳魚から6歳魚まで年齢別に回帰尾数を計算し、最後にすべての年齢の予測値を合計して予測尾数としています。このため、毎年、県内の各河川にそ上した親魚の鱗を用いて年齢査定を行い、その年齢組成結果から、年級(生まれ年)毎の年齢別回帰尾数を取りまとめることが必要です。各年級の回帰尾数は大きく変動しており、震災後、平成23年級以降、低い水準で推移しています(図3上段)。
今年度の予測では、過大評価をさけるため平成23年級以降のデータを使用しました。また、近年は、10分の1以下まで回帰尾数が減少する(桁数が変わる)年級が見られることから、回帰尾数を対数変換して予測を行いました(図3下段)。さらに、河川捕獲の割合が上昇していることから、海面と河川を分けて予測しました。
2歳魚の推定方法
平成23年級から令和元年級までの9年間の対数変換した回帰尾数について、算術平均を求め、e^(平均値)により尾数に変換しました。
3歳魚~6歳魚の推定方法
3~6歳魚の回帰尾数の予測では、同一年級のn-1歳魚とn歳魚(図4は、海面の3歳魚と4歳魚の比較例)の1次回帰式を求め、昨年度n-1歳で回帰したLn(回帰尾数)を代入して今年度n歳魚のLn(予測尾数)を算出しています。また、得られた数値について、2歳魚と同様に尾数に変換しました。
なお、河川そ上予測においても河川毎に平成23年級以降の年級毎の年齢別回帰尾数をまとめ、同様の方法で4~6歳を算出しました(2、3歳魚は算術平均)。
回帰時期の推定方法
回帰時期の予測は、上述の方法で回帰尾数の総数を算出した後、3~5年間のふ化場毎の卵収容実績や河川毎の旬別回帰率、放流時の水温などを勘案し、回帰尾数の総数を旬別に振り分けています。
重量の推定方法
これまでの調査結果より、片岸川、織笠川及び津軽石川における3歳魚の平均魚体重(雌雄込み)と翌年度の全年齢の平均魚体重の関係式を求めています(図5)。
秋サケ回帰予測重量は、回帰予測尾数に、この平均魚体重を乗じて求めています。
【参考】
昨年まで2歳魚と3歳魚の予測に使用していた、放流時の幼稚魚分布密度調査結果を図6に示しました。今年度の回帰の中心となる平成29年級から令和元年級の分布密度は低水準にあります。分布密度と4歳魚の回帰尾数には正の相関関係があり、しばらくの間低水準の回帰状況が予測されます。