令和5年1月26日
1月10日までの回帰尾数は、前年比122%の16.7万尾。
年齢別の回帰尾数は、4歳魚が多い。
繁殖形質の各項目は、前年を下回りました。
1.回帰資源量
1月10日現在の本県回帰尾数は16.7万尾(440トン)で前年比122%(重量比109%)(図1)。内訳をみると、沿岸漁獲は11.3万尾(前年比125%)、河川漁獲は4.8万尾(前年比124%)。種卵確保対策による海産親魚は6千尾(前年比80%)、1尾あたりの平均体重は2.63kgと前年(2.95kg)をやや下回りました。
なお、当センターが発表した1月上旬までの回帰予測尾数(全数)は11.3万尾であり、実績は予測の148%となりました。
2.回帰親魚調査結果(後期:12月11日から1月10日までの分)
12月13日から1月6日にかけて、片岸、織笠、津軽石の各河川において、各ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川15尾、織笠川294尾、津軽石川538尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
R4年度後期はオス12尾、メス3尾の調査となり、オスは3歳魚17%、4歳魚83%、メスは4歳魚100%となりました。なお、R3年度後期は1尾(オス4歳魚)のみの調査でした。参考としてR2年度のオスは16尾の調査で3歳魚6%、4歳魚81%、5歳魚6%、メスは22尾の調査で3歳魚5%、4歳魚82%、5歳魚14%で、4歳魚の割合が高くなっていました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R4:51尾、R3:24尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚で前年同期の4.5倍となりました(図3)。なお、R3年度の片岸川は、前述のとおり1尾(オス4歳魚)のみの調査となったため、4歳魚のみとなっています。
織笠川
オスは3歳魚22%、4歳魚73%、5歳魚3%(R3:3歳魚24%、4歳魚44%、5歳魚30%)、メスは3歳魚20%、4歳魚73%、5歳魚5%(R3:3歳魚9%、4歳魚50%、5歳魚40%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに4歳魚の割合が高く、5歳魚の割合が低くなりました。また、3歳魚の割合はオスで前年並み、メスで高くなりました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R4:306尾、R3:566尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚が前年同期の80%、4歳魚が同82%となった他、5歳魚が同6%と前年を大きく下回りました(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚3%、4歳魚87%、5歳魚8%(R3:3歳魚3%、4歳魚24%、5歳魚72%)、メスは3歳魚1%、4歳魚87%、5歳魚10%(R3:3歳魚3%、4歳魚31%、5歳魚65%)で、前年同期と比べると、オス・メスともに4歳魚の割合が高く、3歳魚及び5歳魚の割合が低くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R4:4,596尾、R3:4,493尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、4歳魚が前年同期の3.2倍と上回り、3歳魚が同60%、5歳魚が同13%と少なくなりました(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は65.8cm、体重は2.5kg、肥満度※は8.6、メスの尾叉長は64.3cm、体重は2.1kg、肥満度は7.9でした(表1)。なお、メスはR3年度同期の調査が10尾であったことから、参考にR2年度調査の結果を示しました(表1)。
前年同期のオスの尾叉長・体重・肥満度は4歳魚で前年を下回りました。また、参考としてR2年度とR4年度のメスの4歳魚を比べると尾叉長は同程度でしたが、体重及び肥満度が下回りました。
※ 肥満度=体重/(体長/10)3×1,000
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
3歳魚 | 62.0 | – | 2.1 | – | 8.8 | – |
4歳魚 | 66.5 | 67.0 | 2.5 | 2.9 | 8.6 | 9.5 |
5歳魚 | – | – | – | – | – | – |
全体平均 | 65.8 | 67.0 | 2.5 | 2.9 | 8.6 | 9.5 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R4 | R2 | R4 | R2 | R4 | R2 | |
3歳魚 | – | 63.0 | – | 2.3 | – | 9.2 |
4歳魚 | 64.3 | 64.3 | 2.1 | 2.4 | 7.9 | 8.8 |
5歳魚 | – | 66.0 | – | 2.9 | – | 9.5 |
全体平均 | 64.3 | 64.5 | 2.1 | 2.5 | 7.9 | 8.9 |
織笠川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は64.3cm、体重は2.6kg、肥満度は9.2、メスの尾叉長は65.1cm、体重は2.7kg、肥満度は9.5でした(表2)。
前年同期と比較すると、オス、メスともに3歳魚、4歳魚、5歳魚の尾叉長と体重は前年を下回りました。肥満度はオスの3歳魚、4歳魚で前年と同程度であったほかは、各年齢で前年を下回りました。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
3歳魚 | 60.4 | 60.9 | 2.0 | 2.1 | 9.0 | 8.9 |
4歳魚 | 65.1 | 68.3 | 2.6 | 3.0 | 9.3 | 9.3 |
5歳魚 | 70.3 | 73.5 | 3.5 | 4.0 | 9.6 | 9.9 |
全体平均 | 64.3 | 67.8 | 2.6 | 3.1 | 9.2 | 9.4 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
3歳魚 | 60.6 | 61.7 | 2.1 | 2.3 | 9.2 | 9.6 |
4歳魚 | 65.8 | 68.1 | 2.8 | 3.2 | 9.6 | 10.0 |
5歳魚 | 68.4 | 72.6 | 3.1 | 3.9 | 9.4 | 10.2 |
全体平均 | 65.1 | 69.4 | 2.7 | 3.5 | 9.5 | 10.0 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの尾叉長は73.0cm、体重は4.1kg、肥満度は10.2、メスの尾叉長は69.4cm、体重は3.5kg、肥満度は10.2でした(表3)。
前年同期と比較すると、オスの尾叉長及び体重は4歳魚で前年を下回った以外は、前年を上回りました。また、オスの肥満度は各年齢で前年並みとなりました。メスでは3歳魚で尾叉長が前年を上回り、体重は前年並みとなりましたが、肥満度は前年を下回りました。また、4歳魚及び5歳魚の尾叉長・体重・肥満度は前年を下回りました。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
3歳魚 | 66.6 | 62.5 | 2.9 | 2.3 | 9.4 | 9.4 |
4歳魚 | 72.3 | 72.8 | 3.9 | 4.1 | 10.1 | 10.2 |
5歳魚 | 79.3 | 77.3 | 5.4 | 5.0 | 10.6 | 10.7 |
全体平均 | 73.0 | 75.7 | 4.1 | 4.7 | 10.2 | 10.5 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
3歳魚 | 65.0 | 63.3 | 2.6 | 2.6 | 9.4 | 10.2 |
4歳魚 | 68.9 | 70.8 | 3.4 | 3.7 | 10.2 | 10.4 |
5歳魚 | 72.9 | 74.7 | 4.1 | 4.8 | 10.5 | 11.3 |
全体平均 | 69.4 | 73.2 | 3.5 | 4.4 | 10.2 | 11.0 |
(3)孕卵数および卵重量
片岸川(11月10日、11月21日)
片岸川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,464粒、卵1粒あたりの重量は平均0.20g、生殖腺指数※は平均18.0でした(表4)。
R3年度は調査を実施できなかったため、参考にR2年度の調査結果を表4に記載しました。R2年度と比較すると、R4年度は各年齢各項目でR2年度を下回りました(表4)。5歳魚では捕獲前に放産した個体が多かったため、生殖腺重量及び孕卵数が著しく低くなり、生殖腺指数も低下しました。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 片岸川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R4 | R2 | R4 | R2 | R4 | R2 | R4 | R2 | |
尾叉長(cm) | 58.9 | 60.8 | 65.1 | 66.6 | 63.0 | 66.2 | 63.7 | 66.3 |
体重(kg) | 2.09 | 2.33 | 2.83 | 3.10 | 2.07 | 2.88 | 2.64 | 3.07 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.38 | 0.55 | 0.53 | 0.66 | 0.18 | 0.59 | 0.49 | 0.65 |
孕卵数(粒/尾) | 2,171 | 2,824 | 2,614 | 2,949 | 926 | 2,797 | 2,464 | 2,950 |
卵重量(g/粒) | 0.18 | 0.19 | 0.20 | 0.25 | 0.20 | 0.21 | 0.20 | 0.24 |
生殖腺指数 | 18.2 | 23.7 | 18.4 | 21.1 | 8.9 | 20.4 | 18.0 | 21.2 |
織笠川(12月1日、12月7日)
織笠川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,339粒、卵1粒あたりの重量は平均0.21g、生殖腺指数は平均17.6でした。なお、調査対象魚に5歳魚はいませんでした。
年齢別に前年と比較すると、3歳魚の尾叉長を除いて各年齢の各項目は前年を下回りました(表5)。
表5 織笠川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
尾叉長(cm) | 61.6 | 61.1 | 66.4 | 69.6 | – | 68.9 | 65.5 | 67.9 |
体重(kg) | 2.25 | 2.29 | 2.89 | 3.49 | – | 3.47 | 2.78 | 3.26 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.42 | 0.46 | 0.50 | 0.66 | – | 0.61 | 0.48 | 0.61 |
孕卵数(粒/尾) | 2,245 | 2,363 | 2,359 | 2,927 | – | 2,565 | 2,339 | 2,738 |
卵重量(g/粒) | 0.19 | 0.20 | 0.21 | 0.23 | – | 0.25 | 0.21 | 0.23 |
生殖腺指数 | 18.6 | 20.2 | 17.4 | 19.1 | – | 17.9 | 17.6 | 19.0 |
津軽石川(12月15日、12月23日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均3,190粒、卵1粒あたりの重量は平均0.23g、生殖腺指数は平均18.4でした。なお、調査対象魚に3歳魚はいませんでした。
前年と比較すると、各年齢の各項目は前年を下回りました。(表6)。
表6 津軽石川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | R4 | R3 | |
尾叉長(cm) | – | 71.0 | 71.8 | 72.8 | 74.4 | 76.6 | 72.3 | 74.2 |
体重(kg) | – | 3.73 | 3.94 | 4.11 | 4.39 | 4.80 | 4.04 | 4.37 |
生殖腺重量(kg/尾) | – | 1.03 | 0.72 | 0.97 | 0.81 | 1.00 | 0.74 | 0.98 |
孕卵数(粒/尾) | – | 3,777 | 3,128 | 3,846 | 3,443 | 3,873 | 3,190 | 3,822 |
卵重量(g/粒) | – | 0.27 | 0.23 | 0.26 | 0.24 | 0.26 | 0.23 | 0.26 |
生殖腺指数 | – | 27.5 | 18.4 | 24.0 | 18.8 | 21.0 | 18.4 | 22.8 |
3.その他
(1)年齢別回帰尾数について
1月10日までに明らかとなった片岸川、織笠川、津軽石川のそ上魚の年齢組成をもとに、1月10日までの県全体の年齢別回帰尾数を推定しました(図8)。
R4年度の予測値と実績値を比較すると、実績値は4歳魚で予測値を上回りました。
なお、R4年度は、5歳魚(平成29年級)の不振が不漁の要因となっています。
(2)その他
1月10日時点での県全体の採卵数は5千6百万粒と計画の91.6%となっています。今後、関係者が協力して仔魚及び稚魚管理を徹底し、健康な稚魚の飼育、放流に努めることが重要です。