2023年度秋サケ回帰情報(No1:前期分)

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令和5年11月22日
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11月10日までの回帰尾数※は、前年比18.8%の1.5万尾。

調査河川にそ上魚した4歳魚は、前年と比較して著しく少なく、魚体は前年並みからやや大型。
※速報値(県庁水産振興課 秋さけ漁獲速報より)

1.回帰資源量

 11月10日現在の回帰尾数は1.5万尾(39トン)で前年比18.8%(重量比19.7%)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比17.1%(9千尾)、 河川漁獲は前年比26.4%(5千尾)。種卵確保対策による海産親魚は229尾となっています。河川そ上率は36.0%と前年(25.7%)を上回りました。また、当センターが発表した11月10日までの回帰予測尾数は3.3万尾であり、実績は予測の44.8となっています(図1)。

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図1 岩手県の回帰尾数の旬別推移

2.回帰親魚調査結果(前期:11月10日までの分)

 片岸川、織笠川および津軽石川において、ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川56尾、織笠川15尾(雄のみ)、津軽石川149尾)を行いました。

(1)年齢組成

片岸川
 オスは3歳魚52%、4歳魚30%、5歳魚17%(R4:3歳魚19%、4歳魚80%、5歳魚10%)、メスは3歳魚24%、4歳魚18%、5歳魚58%(R4:3歳魚17%、4歳魚80%、5歳魚2%)で、前年同期と比べるとオスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図2)。
 年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:61尾、R4:416尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の29%、4歳魚は前年の4%、5歳魚は前年の12.5倍の回帰となっています(図3)。

織笠川
 オスは3歳魚53%、4歳魚27%、5歳魚7%(R4:3歳魚6%、4歳魚93%、5歳魚1%)、メスは親魚を移出したため測定できなかった(R4:3歳魚3%、4歳魚93%、5歳魚3%)。オスについて前年同期と比べると、4歳魚の割合が著しく低くなり、2歳魚及び3歳魚の割合が高くなりました(図4)。
 年齢査定の結果に河川回帰尾数(R4:18尾、R4:184尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の1.1倍、4歳魚は前年の3%、5歳魚は前年の25%となっています(図5)。

津軽石川
 オスは3歳魚33%、4歳魚44%、5歳魚18%(R4:3歳魚17%、4歳魚83%、5歳魚10%)、メスは3歳魚25%、4歳魚49%、5歳魚25%(R4:3歳魚13%、4歳魚85%、5歳魚2%)で、前年同期と比べるとオスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図6)。
 年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:206尾、R4:616尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の67%、4歳魚は前年の19%、5歳魚は前年の8.8倍の回帰となっています(図7)。

(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度

片岸川
 魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は65.1cm、体重は2.7kg、肥満度は9.5、また、メスは66.2cm、2.9kg、10.0でした。前年同期と比較すると、オスの4歳魚の尾叉長、体重はやや大きく、肥満度は前年よりも低く、3歳魚は同等でした。また、メスの4歳魚及び5歳魚の尾叉長、体重、肥満度は前年を上回り、3歳魚では前年よりも若干肥満度が低くなりました。(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R5 R4 R5 R4 R5 R4
3歳魚 61.6 61.7 2.2 2.2 9.4 9.3
4歳魚 69.1 66.9 3.1 2.9 9.1 9.7
5歳魚 68.5 3.6 10.4
全体平均 65.1 65.7 2.7 2.8 9.5 9.6

(メス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R5 R4 R5 R4 R5 R4
3歳魚 61.3 61.1 2.2 2.3 9.5 10.0
4歳魚 66.0 64.6 3.1 2.6 10.6 9.7
5歳魚 68.3 67.5 3.2 3.2 10.0 10.5
全体平均 66.2 64.0 2.9 2.6 10.0 9.7

織笠川
 魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は60.9cm、体重は2.3 kg、肥満度は9.7でした。測定できたオスについて前年同期と比較すると、4歳魚と5歳魚の尾叉長、体重は、前年を上回りましたが、3歳魚は前年を下回りました。また、肥満度は4歳魚で前年を上回りましたが、3歳魚と5歳魚で下回りました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R5 R4 R5 R4 R5 R4
3歳魚 59.3 64.4 2.0 2.5 9.5 9.3
4歳魚 68.0 66.0 3.3 2.7 10.6 9.3
5歳魚 68.0 74.0 3.2 4.4 10.0 10.8
全体平均 60.9 66.0 2.3 2.7 9.7 9.3

(メス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R5 R4 R5 R4 R5 R4
3歳魚 59.5 1.8 8.4
4歳魚 64.4 2.6 9.7
5歳魚 66.5 2.9 9.6
全体平均 64.2 2.6 9.7

津軽石川
 魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は64.2cm、体重は2.6kg、肥満度は9.4、また、メスは63.9cm、2.8kg、10.4でした。前年同期と比較すると、メスの5歳魚の尾叉長、体重、肥満度が高い他、3歳魚と4歳魚はオス、メスともに同等でした。(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R5 R4 R5 R4 R5 R4
3歳魚 61.3 61.2 2.1 2.2 9.3 9.3
4歳魚 65.1 67.1 2.7 3.0 9.5 9.7
5歳魚 70.8 3.5 9.7
全体平均 64.2 66.1 2.6 2.8 9.4 9.7

(メス)

  尾叉長
(cm)
体 重
(kg)
肥満度
R5 R4 R5 R4 R5 R4
3歳魚 59.2 60.1 2.2 2.1 10.3 9.7
4歳魚 64.4 64.2 2.8 2.7 10.3 10.1
5歳魚 67.8 65.1 3.3 2.6 10.6 9.4
全体平均 63.9 63.7 2.8 2.6 10.4 10.1

3.その他

 令和5年11月10日現在の秋サケ回帰状況は、低調だった昨年や一昨年をはるかに下回っています。調査河川において、4歳魚(令和元年級)の回帰尾数が著しく少ないことが共通しており、全体の回帰尾数の減少の原因となっています。これは、令和元年級の稚魚を放流した令和2年の水温、餌、海流など海洋環境が稚魚にとって悪かったことに加え、令和元年10月下旬の大雨により多くの捕獲場が破損して前期の種卵確保が困難だったことも要因の一つになっていると考えられます。