令和5年12月22日
12月10日までの回帰尾数※は、前年比22.8%の3.1万尾。
4歳魚の割合が前期よりも上昇したものの、依然として著しく少なく、魚体は前年よりも大型傾向。
※速報値(県庁水産振興課 秋さけ漁獲速報より)
1.回帰資源量
12月10日現在の回帰尾数は3.1万尾(90トン)で前年比22.8%(重量比25.4%)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比20.6%(19千尾)、 河川漁獲は前年比29.6%(11千尾)。種卵確保対策による海産親魚は889尾となっています。河川そ上率は36.2%と前年(27.7%)を上回りました。また、当センターが発表した12月10日までの回帰予測尾数は7.1万尾であり、実績は予測の43.9%となっています(図1)。
2.回帰親魚調査結果(前期:12月10日までの分)
片岸川、織笠川および津軽石川において、ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川76尾、織笠川267尾、津軽石川171尾を行いました。。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚36%、4歳魚27%、5歳魚33%(R4:3歳魚20%、4歳魚74%、5歳魚2%)、メスは3歳魚26%、4歳魚40%、5歳魚33%(R4:3歳魚16%、4歳魚74%、5歳魚10%)で、前年同期と比べるとオスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:138尾、R4:503尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の46%、4歳魚は前年の12%、5歳魚は前年の2.0倍の回帰となっています(図3)。
織笠川
オスは3歳魚47%、4歳魚41%、5歳魚12%(R4:3歳魚29%、4歳魚66%、5歳魚1%)、メスは3歳魚24%、4歳魚50%、5歳魚25%(R4:3歳魚18%、4歳魚80%、5歳魚2%)で、前年同期と比べると、オスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:318尾、R4:677尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の73%、4歳魚は前年の29%、5歳魚は前年の4.9倍となっています(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚14%、4歳魚54%、5歳魚31%(R4:3歳魚11%、4歳魚82%、5歳魚6%)、メスは3歳魚11%、4歳魚59%、5歳魚30%(R4:3歳魚6%、4歳魚88%、5歳魚6%)で、前年同期と比べるとオスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:631尾、R4:1,418尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の66%、4歳魚は前年の30%、5歳魚は前年の2.4倍の回帰となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は65.6cm、体重は3.0kg、肥満度は10.1、また、メスは67.0cm、3.1kg、10.0でした。前年同期と比較すると、オスの3歳魚の尾叉長、体重が前年並み、5歳魚の尾叉長、体重が小さいほかは、雌雄、各年齢とも尾叉長、体重、肥満度が大きくなりました(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 60.6 | 61.0 | 2.1 | 2.1 | 9.3 | 9.2 |
4歳魚 | 68.0 | 65.7 | 3.2 | 2.6 | 10.2 | 9.0 |
5歳魚 | 71.2 | 83.0 | 3.9 | 6.1 | 10.9 | 10.7 |
全体平均 | 65.6 | 64.7 | 3.0 | 2.5 | 10.1 | 9.1 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 60.8 | 59.8 | 2.3 | 2.0 | 10.0 | 9.1 |
4歳魚 | 68.6 | 64.6 | 3.3 | 2.5 | 10.0 | 9.2 |
5歳魚 | 70.6 | 68.7 | 3.6 | 2.9 | 10.2 | 8.7 |
全体平均 | 67.0 | 64.2 | 3.1 | 2.4 | 10.0 | 9.1 |
織笠川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は66.4cm、体重は2.9 kg、肥満度は9.7、また、メスは67.6cm、3.2kg、10.1でした。前年同期と比較すると、雌雄、各年齢とも尾叉長、体重、肥満度が大きくなりました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 62.1 | 61.7 | 2.3 | 2.2 | 9.5 | 9.3 |
4歳魚 | 69.5 | 65.4 | 3.4 | 2.7 | 9.9 | 9.4 |
5歳魚 | 72.4 | 70.0 | 3.9 | 3.3 | 10.1 | 9.7 |
全体平均 | 66.4 | 63.8 | 2.9 | 2.5 | 9.7 | 9.3 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 62.6 | 60.8 | 2.4 | 2.2 | 9.7 | 9.6 |
4歳魚 | 69.3 | 65.6 | 3.4 | 2.8 | 10.3 | 9.8 |
5歳魚 | 69.3 | 69.0 | 3.5 | 3.2 | 10.3 | 9.8 |
全体平均 | 67.6 | 64.8 | 3.2 | 2.7 | 10.1 | 9.8 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は72.3cm、体重は3.9 kg、肥満度は10.1、また、メスは70.4cm、3.8kg、10.6でした。前年同期と比較すると、雌雄、各年齢とも尾叉長、体重、肥満度が大きくなりました(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 65.0 | 63.2 | 2.7 | 2.4 | 9.7 | 9.6 |
4歳魚 | 72.7 | 69.9 | 4.0 | 3.5 | 10.1 | 9.9 |
5歳魚 | 76.1 | 73.8 | 4.6 | 4.2 | 10.3 | 10.2 |
全体平均 | 72.3 | 69.3 | 3.9 | 3.4 | 10.1 | 9.9 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 64.4 | 62.9 | 2.8 | 2.4 | 10.4 | 9.6 |
4歳魚 | 69.7 | 67.7 | 3.6 | 3.1 | 10.5 | 10.0 |
5歳魚 | 73.8 | 72.1 | 4.4 | 3.8 | 10.9 | 9.9 |
全体平均 | 70.4 | 67.7 | 3.8 | 3.1 | 10.6 | 9.9 |
(3)孕卵数及び卵重量
織笠川(12月4日)
織笠川のメス1尾あたりの孕卵数は平均2,388粒、卵1粒あたりの重量は平均0.22g、生殖腺指数※は平均16.6でした(表4)。なお、令和4年度は、5歳魚は出現しませんでした。
年齢別に前年と比較すると、3歳魚及び4歳魚の生殖腺指数※が前年を若干下回りましたが、その他の各項目は前年を上回りました(表4)。5歳魚では捕獲前に放産した個体が多かったため、生殖腺重量及び孕卵数が著しく低くなり、生殖腺指数も低下しました。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 織笠川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
尾叉長(cm) | 64.7 | 61.6 | 69.2 | 66.4 | 70.8 | – | 68.0 | 65.5 |
体重(kg) | 2.73 | 2.25 | 3.32 | 2.89 | 3.59 | – | 3.16 | 2.78 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.49 | 0.42 | 0.55 | 0.50 | 0.51 | – | 0.52 | 0.48 |
孕卵数(粒/尾) | 2,393 | 2,245 | 2,495 | 2,359 | 2,304 | – | 2,388 | 2,339 |
卵重量(g/粒) | 0.20 | 0.19 | 0.22 | 0.21 | 0.23 | – | 0.22 | 0.21 |
生殖腺指数 | 18.3 | 18.6 | 16.6 | 17.4 | 14.3 | – | 16.6 | 17.6 |
3.その他
令和5年12月10日現在の秋サケ回帰状況は、低調だった昨年や一昨年をはるかに下回っています。調査河川において、前期よりも4歳魚(令和元年級)の割合がやや上昇したものの、依然として著しく少ないことが共通しており、全体の回帰尾数の減少の原因となっています。これは、令和元年級の稚魚を放流した令和2年の水温、餌、海流などの海洋環境が、稚魚にとって悪かったことが大きな要因になっていると考えられます。