令和6年1月22日
1月10日までの回帰尾数※は、前年比26%の4.4万尾。
前期、中期につづき、4歳魚が依然として著しく少なく、魚体は前年よりも大型傾向。
※速報値(県庁水産振興課 秋さけ漁獲速報より)
1.回帰資源量
1月10日現在の回帰尾数は4.4万尾(130トン)で前年比26%(重量比30%)。内訳をみると、沿岸漁獲は前年比24.8%(28千尾)、 河川漁獲は前年比29.9%(14千尾)。種卵確保対策による海産親魚は1,094尾となっています。河川そ上率は33.1%と前年(28.8%)を上回りました。また、当センターが発表した1月10日までの回帰予測尾数は9.7万尾であり、実績は予測の44.9%となっています(図1)。
2.回帰親魚調査結果(後期分:12月11日以降の分)
片岸川、織笠川および津軽石川において、ふ化場の協力を得て回帰親魚調査(片岸川19尾、織笠川248尾、津軽石川295尾)を行いました。
(1)年齢組成
片岸川
オスは3歳魚20%、4歳魚30%、5歳魚50%(R4:3歳魚17%、4歳魚83%、5歳魚10%)、メスは3歳魚10%、4歳魚33%、5歳魚67%(R4:3歳魚10%、4歳魚100%、5歳魚10%)で、前年同期と比べるとオスメスともに4歳魚の割合が低くなり、5歳魚の割合が高くなりました(図2)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:39尾、R4:50尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の67%、4歳魚は前年の29%、5歳魚は前年より22尾増の回帰となっています(図3)。
織笠川
オスは3歳魚51%、4歳魚38%、5歳魚10%(R4:3歳魚22%、4歳魚73%、5歳魚3%)、メスは3歳魚37%、4歳魚47%、5歳魚16%(R4:3歳魚20%、4歳魚73%、5歳魚5%)で、前年同期と比べると、オスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図4)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:327尾、R4:306尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の2.3倍、4歳魚は前年の62%、5歳魚は前年の3.5倍となっています(図5)。
津軽石川
オスは3歳魚7%、4歳魚32%、5歳魚59%(R4:3歳魚2%、4歳魚79%、5歳魚11%)、メスは3歳魚10%、4歳魚20%、5歳魚71%(R4:3歳魚1%、4歳魚81%、5歳魚11%)で、前年同期と比べるとオスメスともに4歳魚の割合が低くなり、3歳魚及び5歳魚の割合が高くなりました(図6)。
年齢査定の結果に河川回帰尾数(R5:1,182尾、R4:4,795尾)を乗じて算出した年齢別回帰尾数を見ると、3歳魚は前年の1.5倍、4歳魚は前年の8%、5歳魚は前年の1.5倍の回帰となっています(図7)。
(2)年齢別尾叉長、体重、肥満度
片岸川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は67.3cm、体重は3.0kg、肥満度は9.5、また、メスは68.1cm、2.9kg、8.9でした。前年同期と比較すると、オスの3歳魚の尾叉長、体重が前年より小さいほかは、雌雄、各年齢とも尾叉長、体重、肥満度が前年並みから大きくなりました(表1)。
表1 片岸川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 58.5 | 62.0 | 1.8 | 2.1 | 8.9 | 8.8 |
4歳魚 | 66.7 | 66.5 | 2.8 | 2.5 | 9.3 | 8.6 |
5歳魚 | 71.2 | - | 3.6 | - | 9.8 | |
全体平均 | 67.3 | 65.8 | 3.0 | 2.5 | 9.5 | 8.6 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | - | - | - | - | ||
4歳魚 | 66.3 | 64.3 | 2.6 | 2.1 | 8.9 | 7.9 |
5歳魚 | 69.0 | - | 3.0 | - | 8.9 | |
全体平均 | 68.1 | 64.3 | 2.9 | 2.1 | 8.9 | 7.9 |
織笠川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は64.5cm、体重は2.7 kg、肥満度は9.5、また、メスは66.7cm、3.1kg、10.1でした。前年同期と比較すると、雌の3歳で尾叉長が小さいほかは、雌雄、各年齢とも尾叉長、体重、肥満度が前年並から大きくなりました(表2)。
表2 織笠川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 59.8 | 60.4 | 2.0 | 2.0 | 9.3 | 9.0 |
4歳魚 | 69.5 | 65.1 | 3.3 | 2.6 | 9.7 | 9.3 |
5歳魚 | 72.4 | 70.3 | 3.9 | 3.5 | 10.0 | 9.6 |
全体平均 | 64.5 | 64.3 | 2.7 | 2.6 | 9.5 | 9.2 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 61.3 | 60.6 | 2.2 | 2.1 | 9.6 | 9.2 |
4歳魚 | 69.0 | 65.8 | 3.4 | 2.8 | 10.3 | 9.6 |
5歳魚 | 72.0 | 68.4 | 4.0 | 3.1 | 10.7 | 9.4 |
全体平均 | 66.7 | 65.1 | 3.1 | 2.7 | 10.1 | 9.5 |
津軽石川
魚体測定の結果、オスの平均尾叉長は76.0cm、体重は5.0 kg、肥満度は10.9、また、メスは74.4cm、4.7kg、11.0でした。前年同期と比較すると、雌の3歳で尾叉長と体重が小さいほかは、雌雄、各年齢とも尾叉長、体重、肥満度が前年並から大きくなりました(表3)。
表3 津軽石川年齢別尾叉長・体重・肥満度
(オス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 61.2 | 66.6 | 2.2 | 2.9 | 9.5 | 9.4 |
4歳魚 | 73.0 | 72.3 | 4.2 | 3.9 | 10.5 | 10.2 |
5歳魚 | 79.0 | 78.1 | 5.7 | 5.3 | 11.2 | 10.8 |
全体平均 | 76.0 | 73.4 | 5.0 | 4.2 | 10.9 | 10.3 |
(メス)
尾叉長 (cm) |
体 重 (kg) |
肥満度 | ||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
3歳魚 | 62.6 | 65.0 | 2.6 | 2.7 | 10.6 | 9.7 |
4歳魚 | 70.4 | 68.9 | 3.8 | 3.4 | 10.8 | 10.3 |
5歳魚 | 76.8 | 73.1 | 5.1 | 4.4 | 11.1 | 11.1 |
全体平均 | 74.4 | 70.0 | 4.7 | 3.7 | 11.0 | 10.4 |
(3)孕卵数及び卵重量
津軽川(12月18日)
津軽石川のメス1尾あたりの孕卵数は平均3,134粒、卵1粒あたりの重量は平均0.27g、生殖腺指数※は平均17.6でした(表4)。なお、令和4年度は、3歳魚は出現しませんでした。年齢別に前年と比較すると、孕卵数は前年並み、卵重量は前年よりもやや大きく、生殖腺指数※は前年を下回りました(表4)。
※ 生殖腺指数=生殖腺重量/体重×100
表4 津軽石川 年齢別繁殖形質
3歳魚 | 4歳魚 | 5歳魚 | 全体 | |||||
R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | R5 | R4 | |
尾叉長(cm) | 63.5 | - | 71.1 | 71.8 | 77.1 | 74.4 | 74.9 | 72.3 |
体重(kg) | 2.56 | - | 3.88 | 3.94 | 5.40 | 4.39 | 4.88 | 4.04 |
生殖腺重量(kg/尾) | 0.34 | - | 0.74 | 0.72 | 0.93 | 0.81 | 0.86 | 0.74 |
孕卵数(粒/尾) | 1,675 | - | 2,855 | 3,128 | 3,327 | 3,443 | 3,134 | 3,190 |
卵重量(g/粒) | 0.21 | - | 0.27 | 0.23 | 0.27 | 0.24 | 0.27 | 0.23 |
生殖腺指数 | 13.4 | - | 19.0 | 18.4 | 17.4 | 18.8 | 17.6 | 18.4 |
3.その他
令和6年1月10日現在の秋サケ回帰状況は、低調だった昨年や一昨年をはるかに下回り、予測の下限値をやや上回る水準でした。調査河川の結果から累計すると、3歳魚(令和2年級)と4歳魚(令和元年級)の回帰尾数が、予測を大きく下回っており、これが全体の回帰尾数の減少の原因となりました。これら2ヶ年級の稚魚を放流した令和2、3年春の水温、餌、海流などの海洋環境が、稚魚にとって悪かったことに加え、2ヶ年級とも放流数が2億尾前後であり、それまでの4億尾の半分程度と少なかったことが、予測を下回る原因と考えられます。
令和3年級は、5千万尾前後まで放流数が少なくなりますが、放流稚魚の平均サイズは2.6gと大型でした。その動向を注視しつつ、資源回復のために、放流時期や放流サイズの検討をさらに続けていく必要があると考えます。